見える化の時代に見える化されると困ること
今やビジネスの世界において、見える化というキーワードは、当たり前の概念やビジネスのやり方になりつつある。
見える化が流行るということは、見えないことが沢山あるということであり、かつそのための弊害というのがある訳である。
まず、深刻な話しから始めると、企業経営においては、脱税や粉飾決算などが、時々新聞などのメディアを賑わす。時として、犯罪の領域に入ることもあるが、この問題にしても根本は見える化だ。
まだ記憶に新しいが賞味期限のごまかしや産地偽装もこの日本で大騒ぎになって、まだ、10年と経っていない。
いまでも時々、産地偽装の問題はメディアの格好のネタになる。具体的に言えば、外国から輸入した貝類を日本産と称して販売していたニュースはごく最近のことだ。
こういったコンプラ違反に匹敵するようなことが、最近は、それでも見えるようになりつつある。
私は建築出身なので、約17年前に業界を揺るがした姉歯事件は、忘れることはない。今でも業界の人と、この話になる。
しかしながら、今話題にすることは、怪我の功名と言う話であり、鉄筋のごまかしに限らず、コンクリートや他の建築資材のごまかしは、この事件を契機に一気に変わった。どう変わったかと言うと、単純には、隠していたことが見える時代であるということで、関係者の意識が変わった。
特に建築の場合は、専門家以外でも想像できると思うが、壁や柱の中がどうなっているか知る術もない。素人考えであれば、破壊検査しか浮かばない。当然現実的ではない。
もちろん、非破壊検査と言う技術はあるが、それでの検査も限界である。結局、今は工事過程での検査がとてもシビアになったということだ。これがいわゆる、見える化だ。
グローバルビジネスに目を転じると、別の問題が見えてくる。
少なくとも数年前までは、日本人の大半の人が、自分たちが食したり消費したりしている商品や製品の原材料がどこでどうやって、誰の手で作られているか、あるいは採掘されているかを知る術はほとんどなかった。
知っていたとしたら、先ほどの姉歯の事件と同じで、現場の人だろう。今、SDGSが当たり前になった今、健全なサプライチェーンであるかどうかが問われている。
搾取や不正はもちろんのこと、材料の安全性なども開示しないといけなくなってきた。生活者の方もエシカル消費の考え方が浸透しつつある。
この行く先は、サプライチェーンが顧客や生活者にもっとクリアーに見えるようになることである。
挙げ出したらたらきりがないが、見える化というのは、やはり、科学技術の進化とITのしくみが世の中に浸透してきたことによるものが大きい。
企業内の見える化に再び話を戻すと、今までは、一部の当事者しか事実を知らなかったし、そういう悪いことを正すために情報を公開することすらタブー視されていた。
根本は、三現主義に行きつくが、やはり、現場、現物、現実で見える化をすると一気に解決できることは沢山ある。
経済メカニズム全体で言えば、まだ、90%以上が今まで通りの見える化がされていない状態である。
これが1日1日、変わっていくことが可能な時代なっているのは疑う余地はない。
見える化が進んで困る人がいるとしたら、それは、見えないようにすることで利得を得てきた人たちである。
健全なIT活用の行く先に、真のDXによる改革が実現すると私は考えている。
以上