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保育園、「園長先生の仕事」とは

「園長先生」とは?

堅苦しい用語を持ち出すと、法的には「保育所」という名称で定義されているので、「保育所長」が正解です。「園長先生」ではなく、「所長」です。

なんだかイメージが変わりますね。

「認定こども園」は、そのまま正式名称なので、こちらは園長先生ですね。

合わせて、「施設長」という名称が使われたりもします。

「園長先生の仕事」とは

言うまでもなく、保育園(保育施設等)の最高責任者として、施設を統括し、施設を運営することです。

また、保育園は、児童福祉施設、広くは社会福祉事業を行う施設であり、国や地方公共団体からの補助金(税金)や、寄付金を元に運営されます。
もし適切に運営されず、施設が破産、倒産してしまったら、利用者は大迷惑です。

そのようなことにならないよう、資金支出の透明性や財産基盤の強化が求められています。施設運営は、社会福祉法人、株式会社、NPO法人等、さまざまな法人格がありますが、どこの運営主体であっても同じことです。

そのために、保育園は行政からの指導監査が行われています。

行政による指導監査は、言わば「法令等に定められた最低限の基準」です。
全て順守されていることが大前提です。
行政監査を、「面倒だ」「細かいことまで煩いなぁ」と言われる園長先生もいらっしゃるかもしれませんが、それは本末転倒であり、最低限の基準を順守し、正しく施設を運営する事こそ、「園長先生の仕事」です。

その仕事は、現場の保育士には出来ないのです。

指導監査の内容

では、指導監査では、どのような項目を確認されるのか。
私たち、名古屋市の保育園に係る指導監査事前調書のURLをお知らせします。あくまでも一例です。

「保育所・幼保連携型認定こども園」の区分では3種類の調書が用意されています。

事前提出資料様式

例えば、幼保連携型認定こども園を取り上げると、その質問項目は500項目ほどにも及びます。その他に、別紙等も多数、提出を求められます。

その質問項目を大雑把に分類すると、こんな感じです。
・保育に関する項目・・・6割
・書類整備に関する項目・・・4割

書類整備とは、社会保険関係、労働基準法関係、経理業務、防災対策、公益通報等の各種法令対応などです。

保育に関する事項は全体の6割程度なのですが、その中も、重要事項説明書、利用契約書、健康診断、給食衛生環境管理等の書類整備関係が7割ほどを占めます。

保育現場がいくら頑張っていても・・・

繰り返しますが、行政による指導監査は、「法令等に定められた最低限の基準」です。守られていない、ということは、法令等の違反です。

保育現場でいくら質の高い保育を行っていたとしても、法令違反を行っている施設は、社会から批判されます。
一般企業でも同様であることは、粉飾決算、不当な方法による情報収集等、の例を挙げるまでもないところです。

これら、施設運営の統括業務を現場保育士に任せることはできないのです。
これらの書類を正しく準備し、正しく運営するだけでも、相当に大きな負担です。園長先生の責務は非常に大きいのです。

ある意味、現場を見ている暇がないほどの重責です。

昔と現在の違い

上記の点以外に、時代の変化が加わります。

以前の園長先生は、保育を見ていることができたのです。
書類の種類・量が少ないだけでなく、努力して書類を処理することが経営努力に繋がりませんでした。
つまり、独自の努力をしても補助金が増えることはありませんでした。

今は異なります。

書類の種類・量は、膨大になりました。業務効率化は必須です。
加えて、努力した園、様々な情報にアンテナを高くし、新たな補助金等の申請に書類を揃えた園は、その分、補助金を多く得ることができる仕組みになりました。

努力すると報われる。努力しなければ、補助金が入らない。
保護者の選択、入園児数確保による保育園の勝ち組・負け組だけでなく、施設努力による、収入面での勝ち組・負け組が分けられてしまう仕組みに変わりました。

その補助金は、年間で1万円程度のものもあれば百万円単位、数千万円におよぶもの、さらに私の見た公募では、億単位の補助金もありました。

収入が増えると、保育士の研修体制も充実化できます。
保育士の給与を上げることもできます。
保育士の人数を増やすこともできます。

2025問題、2040問題を考えると、新たな保育士の入職にも費用および採用技術向上、コンプライアンス向上が求められます。
達成できない園に、新規の保育士が入職しなくなります。

保育現場に出て、保育現場の気持ちに寄り添い、一緒に保育を行う園長先生。
保育現場を主任等に任せ、要点を管理しながらも、書類整備、コンプライアンスをしっかりと整備し、施設の収入増加に力を入れる園長先生。

今後の少子化、保育施設の生存競争激化の中で、どちらの園長先生が勝ち残り、質の高い保育を提供し続けられるでしょうか。

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現場との関係について、トップダウンか、ボトムアップか。
そういった視点も非常に重要です。

ただ、保育園園長が現場保育士の延長線上で業務を考えていてよいでしょうか、という点も考慮の必要があるのかもしれません。

書類に没頭している園長先生は保護者や保育士からの人気が下がるかもしれません。
書類を処理する、法令等の順守から目をそらして、園児、保護者、保育士の気持ちに寄り添う園長先生は、人気、人望を集めることはできるかもしれません。

「他の人から嫌われるかもしれない」これは一種、恐怖です。
「皆から好かれる方が心地よい」当然のことです。

自分の心地よさ、恐怖からの逃避のために、自らの責務を放棄することは正しいのか。これからの園長先生の覚悟は、ものすごく大変です。

園運営は、保護者の方だけでなく、現場保育士にもなかなか見えにくいところですが、一つの視点としてお伝えしました。

一度、施設監査の項目に目を通してみてください。
園長先生が本来やらねばならない業務の一端を体感していただければ、幸いです。

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