粋な芸人ととことん逆張

　問題、何故こんなに気持ちが悪い、というのは胃がムカムカし、食道の辺りにいつでも逆流しそうなものを感じ、眠気を伴い、腹が張っている状態に私はあるのでしょうか。
と誰も興味がないクイズを己自身に出題しているのは、いよいよこの街を一ヶ月後に出る事になりその前に行っておきたい店が何店かあってその内の一つの肉そば屋というのにバイト終わりに行ったからである。
と己クイズに続いて己の事情ゴリゴリで私はとんだアイドル気取りだなと思いながら、その実、肉そばというのは、難波の芸人さん御用達ちとせの饂飩抜きの肉吸いを連想される方もいるかも知れないがむしろ逆というのはおかしいが、それでも花紀京さんか誰かが二日酔いで饂飩抜いてくれと言ったのに対して、肉そばとは昨今でわかりやすくいうといわゆる二郎系的なやつであった、店構えから半分以上は分かっていた筈なのに私はバイト終わりの解放感から持参したおにぎりと昼に買って食べなんだロールパン2個半をムシャムシャ食った上で暖簾をくぐってしまった。

こういった店へ行き慣れていない私は例えば初めてスターバックスへ行き、何をどう注文して良いか分からずホットアメリカンコーヒーが飲みたいにも関わらずとりあえずトゥゴーでベンティーサイズフォースエスプレッソ、エクストラホイップマッキャート、アイスでと言ってしまった過去の過ちを二度と犯さぬように、何を言われても普通、並の一点張りマシマシの魔法は言わぬようにとアワアワしながら一番スタンダードはと、壊れた食券機に肉そば780円とある。ウン、それだ。食券機は壊れているので直接カウンターでと書いてある。

落ち着きを装い座り、ちょっと良い声で「肉そば、一つ下さい。」と言う。
丁度その時、カウンターの客側からだけ見える所に“野菜、背脂、ニンニク、の量は出来上がり前にお伝え下さい。”と書いてあるのが見えて、よしよし、落ち着いて後で聞かれたら言えばいいのだと、店主と先ずお金のやり取りをして、店主が早速手際よく作り出す。

よしよし、と心の中で再度呟き、ワクワクしながらも、やはり思った通り二郎方式のスタイルの店だった為、
先程のおにぎりまではいいにしても、ロールパンは余計だったかなと思いながら、
LINEの返信を返し終え、ボーと考え事しながら手際よく動く店主を見つめて、
店主が湯切りに入った。
よしよし、そろそろ来るぞと思い私の中でこの後配達に小銭稼ぎに行くつもりなので、ニンニク少なめ、後は並でというぞ言うぞ言う、

「ご注文は、」
「はい、並でニンニクだけ少なめで、」
「ニンニク少なめですか。」
「はい、ちょっと少なめで。」
と少しヒヨってしまったものの、よしよし、と「お待ちどうさま。」

もやしが積まれた肉そばが出てきた。
これこれ懐かしいと、もやしの山を進めながら、ハタと目に止まったのはカウンター客側からだけ見えるラミネートされた紙に“麺少なめ、固め、背脂少なめの際は注文時に先に伝えて下さい。”の文字。

そうか麺少なめという概念があったのか、という事はこれ並でも麺は結構ボリュームあるな、という事がよぎった。

そうしてここへ来て散々よしよし、と自分にいい聞かして来たけれど、考えてみればこの店に来るならば、ロールパンだけでなくやはりおにぎりなんてここに来る前に食った事を後悔した。

この勝負最初から私の負けだった。

案の定、モヤシの山崩し終える頃にもう腹が膨れている。
これ、麺少なめで注文出来てたとしてもギリアウトだ。
10年前ラーメン食べ歩いていた頃の胃袋の感覚でいた。
歳を重ねて、不況に陥り、まともな食事を取れてないのも乗っかってか、既にこたえている。更にコシのある食べ応えの太麺がひと啜りごとズシン、ズシン。
また元来早食いである私噛んで食べねばと意識して噛んでみる。ただでさえファストフードばかり噛まずに生きている私には顎が疲れる程、その分また腹にズシンと来る。

　そして次のお客が来て店主のシャッシャッと動いている隙を見て8分の１位食べ切れない麺をもう無理腹が千切れると必死で隠して、何度も何度も心ですみませんでしたすみませんでしたと言いながら。
「ご馳走さまでした。」
と伝え逃げるように店を後にして、腹十二部に詰まって胃痙攣起こしてんちゃうかとチクチクする腹今抱えてこれ打つ。

外は、風が冷たい。

贅沢した分また働かねば。

ちょっとだけ休憩と図書館へ寄り1席空けて隣の席の女性が私の着席してから間もなく鼻を摘み遠くに移動した。
マスクして、ニンニクも少なめにしたはずなのに。

フルコース　デューン

『フルコースのレディオ』というラジオ番組をYouTubeで配信しております。

基本的に毎週木曜日0時配信です。

懲りずに8回目何とか配信漕ぎつけた。1週間を公民館の新聞と振り返る。

そんな内容です。誰が聴くねんそれが今一番の問題です。

ご慈悲とお力添えを承りたい所存です。どうぞよろしく。