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2つのMy day
今日はどんな1日だったろうか。仕事を終えて開放感を感じている?それとも、何か緊張することや乗り気じゃないことがあって、ブルーだったりしている?
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夕方過ぎまで私は暗澹たる気持ちだった。待ち合わせがあったのに、電車に遅れて結局間に合わなかった。準備にもたもたしていた自分が悪いのだけれど、駅のホームに向かうエレベーターに駆け込んできた人がいなければ、ちゃんと予定の電車に乗れたかもしれなかった。目的の駅に着いてからも待ち合わせ場所へ必死で走ったけれど、私の時計では間に合っていたのに、残酷にも待ち合わせ場所の時計は3分くらい進んでいて、遅刻扱いになった。
ツイてない。
不機嫌さと落ち込みをしばらく抱えたまま、私は心の中で呟いた。
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順調に進む日もあれば、なかなか思い通りにいかない日もある。そんな1日のことを英語ではこう言うらしい。
It’s not my day.
直訳すると、「私の日じゃない」。意訳すると、「ツイてない」。でもなんだか「私の日じゃない」の方がポジティブにあきらめがつくような気もする。それでもブルーな気持ちは晴れなかったけれど。
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夕方。数年来お世話になっている美容院へ。ウェルカムドリンクを飲みながら、いつもの美容師さん−ここでは仮に、サワさんと呼ぼう−が来るのを待つ。希望のカラーとカットを伝えたあと、タブレットでいろんな雑誌を眺めつつ、時々サワさんとおしゃべりしながら時間を過ごす。
そうこうするうち、「ツイてない」という不機嫌も落ち込みもだんだんと薄まってきた。全幅の信頼を寄せているサワさんの手によって、私のイメージ通りのヘアスタイルができていく。
いつものことなのだけれど、サワさんは要所要所で出来上がりを確認してくれる。「このくらいの長さで大丈夫です?」、「色味はどうですか?」などなど。私がこだわりがある−もとい、注文が多い…?−のをよく知っているからかな、と思っていたけれど、今日は意外な事実が判明した。
「いや〜、こういう複雑なカットとかカラーリング、正直楽しいんですよ」
サワさん曰く、ただ一色に染めるだけや短くするだけは、楽だが、おもしろみはあまりないのだという。達成感を感じるのはグラデーションなどがうまくいったときとのこと。腕があって向上心のある人ならではの言葉だなあと感じつつ、そういうサワさんの思いを知れたことをうれしく思った。
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カットもカラーリングも終わり、私の髪に丁寧にドライヤーを当てながら、サワさんはヘアスタイル維持のための乾かし方も教えてくれる。そしてスタイリングをしながら、そのコツも一つ一つ伝授してくれる。「できましたよ〜」というサワさんの言葉で鏡の中をのぞきこむと、そこには私のイメージ以上にいい感じの自分がいた。いつもながらサワさんの手は魔法の手だ。
ご機嫌になりながらサワさんに見送られて店を出るとき、私の頭の中をあるフレーズが横切った。
You made my day.
「おかげで、いい日になったわ」。岡田光世さんの『ニューヨークのとけない魔法』という本で紹介されていたフレーズだ。サワさんのいる美容院を出るとき、私はいつも笑顔になる。
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今日は「It's not my day」な一日でもあったけど、サワさんのおかげで、「It's my day」な一日になった。「You made my day」、サワさん。ありがとう。おやすみなさい。
ありがとうございます。いつかの帰り道に花束かポストカードでも買って帰りたいと思います。