性的同意アプリ「キロク」について、なんか引っかかってる私
性的同意アプリ「キロク」の公式X(ことTwitter)アカウントから、リリース時期が延期になるかもという告知が出ていました。
さよかー。という感想しかないです。
このアプリの存在を知ったのは、8月17日のライブドアニュース(記事提供元:まいどなニュース)で取り上げられるや怒涛の勢いでX(ことTwitter)で、RTだけでなくとんでもない数の引用RTで拡散されたのを、その翌日に見かけた時でした。
昭和生まれの私が知っている「強姦罪」「強制性交等罪」という犯罪は、今年7月から「不同意性交等罪」って名前でくくられることになったそうです。わかりにくッ!
「等」って入るとなんか罪状がフワッと明確じゃなくなるのが気持ち悪い気がする。むしろひっくるめて「強姦罪」でよかったのでは? ざっくりしすぎか。それにもう決まった法律に文句を言っても仕方ないね。ないけど、みんな納得できてます?
とりあえず、その新しい名前の罪状は、ウィキペディアによると「暴行又は脅迫を用いて13歳以上の人に性交、肛門性交又は口腔性交(性交等)をし、または、13歳未満の人間に性交等をする犯罪」とのことです。対象年齢が13歳以上って定義されることの意味がわからないけど(【追記】前半後半で定義が違ってましたね。13歳を肉体的な大人と子供の境界として区別してるんですね。この区別、必要あるのかな?)、この罪名を引き合いに出してアプリ紹介を始めるということは、ざっくり中学生以上の性犯罪に関連するトラブルについてそのアプリでカバーしたいという捉え方でいいのでしょうか。
公共交通機関で大人料金対象となる中学生であっても、ご家庭によってはスマホを持たせてもらってない子もいるだろうし、双方の同意を取るうえでアプリ活用というのなら、スマホを持っていない子たちは切り捨てられてしまうのでしょうか? それでは犯罪のブラックボックス化が進みやしませんか?
もともとこのアプリが、成人同士のカップルに起こりうる性交渉トラブルにしか注目していなかったとするのなら、企画自体が片手オチだった……ということ?
記事中で「カップルの健全な関係を育む」と謳われてはいますが、その組み合わせは成人同士、未成年同士だけでなく、成人と未成年という組み合わせだって考えられるわけですし。
そこまで考えて一瞬よぎった恐ろしい想像は、毎年のように報道されている「教師と教え子が肉体関係になっていた」といった事件が明るみ出た時、悪意をもって「双方の合意があった」というアリバイ作りに使われてしまったらどうするんだろう、というものでした。
当時の私の感想は以下のツイートです。
X(ことTwitter)上でのフォロワーさんとのやり取りでも語っているのですが、私が当時「性交渉の同意を得る」交渉相手として想定したのは「夫または妻」「恋人関係にある相手、または恋人にしたい相手」以外に思いつけなかったわけです。恋人や夫婦は、基本的に「この先も継続的に情交の相手をお互いに限定する」関係であると私は考えているので、性行為だけに限らずよく話し合って自分たちのベストな関係を作り上げたらいいのではないかと思っています。
いくらこの世が自由恋愛社会だからといっても、それなりの貞操観念と相手への思いやりさえ持ち合わせていれば、こんなアプリのお世話になる必要ないのでは?……と思ったのでした。
同衾した片割れだけが猛烈に「今どうしてもセックスしたい!」欲求をもった場合、乗り気ではない自分はどこまでなら譲歩して付き合えるのか? したい方が自分だった場合、欲求に任せて相手を従わせることで一方的に快楽を得て良しとなるのか?
「一方的に性欲を満たす行為」があったとして、後出しで「あれはレイプだった」とか言うのは、まるで美人局のやり方にも思えてしまいます。暴力や金銭を用いたり不安を煽ったりして相手を従わせておきながら開き直って「最終的に受け入れたんだから合意したも同然」というのもどうなんだろう?
「獣のように情欲の本能に従った」と書くことで、文学的には取り繕えるのかもしれない。己が欲望の追及にかまけて相手に苦しみを押し付けた時の、怖気が走るような暗い快感がたまらない向きもあるかもしれないけれど、それは相手のキャパシティによって支えられているわけで。そのキャパシティは、相手から自分への信頼感や愛情で支えられていて。
その「大丈夫か、大丈夫じゃないか」の加減を、双方で調整していくのがコミュニケーションってものなんじゃないでしょうか。
お互いが納得いくまで、双方言葉を尽くしボディランゲージを総動員してから、行為に及ぶか及ばないかを決めるまでの手練手管も含めての時間の過ごし方のすべてが「性交渉」だと私は思うのですが、アプリという第三者が作った人格も有さない(法人格はあるの? ちなみに前段リンク記事中に開発会社や運営会社の情報はなかった)モノを通じて「同意」を取っただけで「合法的な性同意」というお墨付きを求めてでも快楽についてくる責任を負いたくないのが、現代社会のみなさんなんでしょうか? それ、ひとりの大人としてどうなんだろう?
「ツー」と言えば「カー」と通じて、お手軽にいいな~と思ったお相手とヤリたい時に即セックスしたいとか、何を甘えたことを抜かしてんだろうなと、私などは思うわけです。
性欲が満たされないのならプロのもとに行けばいいのでは? プロに頼る行動力もないのなら、自慰で欲求を発散させておけばいいのでは? なぜその手段ではダメなんでしょうか? 他人に甘えて迷惑かける前に自分でなんとかできることの筆頭ですよ、自慰。
大抵のことがお金を払えば「やってもらえる」サービス産業が充実した現代社会において、自分の心と体に起こることですら「自分で何とかする」という発想が失われてしまい、自分の外に働きかけて自身は責任を取らずにいようという人が増えてしまったことが、「キロク」というアプリが「人の役に立つサービス」の顔をして誕生した理由なんでしょうか?
性事情の記録など、個人の内心の自由の最たるものです。弁護士に監修してもらうまでもなく、自己管理可能な事項だと私は思うのです。
ツールが必要であれば、カレンダーや手帳やメモ(デジタルでもアナログでも)への記録で事足りるし、少し調べたところ「月経記録(管理)アプリ」にデータを追記して活用している人もいるようです。
自分の想像力の乏しさが呪わしいコトこの上ないですが、気分や状況によって変わる不特定多数の相手と「性交渉の同意を得る」必要があるシーンを私なりに考えてみたのですが、性風俗サービス業界でお仕事前のクライアントとの意思確認手続きくらいしか思いつけませんでした。
あとは「乱交パーティ会場」でのマッチング時? よくわかんないけど。こういうイベントで、双方正体や連絡先が把握できるアプリを使う意義ってあるのかしら……とか、私は本当に余計なことを考えてしまいがち。
最初の段のリンクで到達するライブドアニュースのページにも、記事提供元のまいどなニュースの記事ページですらも、「アプリの名前」や「大まかな概要」や「リリース前キャンペーン」実施予定などが紹介されているものの、肝心の開発元や運営会社の名前は載っておらず、検索して初めて行き当たれた「PR TIMES」に投稿されたプレスリリースの末尾に掲載された、公式X(ことTwitter)アカウントへのリンクで、初めて公式による情報発信に触れられるようになった次第です。
この文章の最初に埋め込んだ、キロク公式アカウントのタイムラインやそこに寄せられたX(ことTwitter)ユーザーの皆さんの意見を眺めていくことで、この件について考えるきっかけが生まれてくるのかもしれません。
最後に、X(ことTwitter)のフォロワーさんが端的にこのアプリについて「デジタル版YES/NOまくら?」と言い表していたことが、とても印象深かったです。
私と違って、心根の優しい人はこんな風に受け取っているのか、と自身の性格の悪さを思い知らされた気分でおります。
クリエイターだなんておこがましいですが、サポートは常にありがたく頂戴いたします。