記憶の話。

死にたい。でもそれは、生きるのが辛いからとか嫌なことから逃げたいからってわけじゃない。

この記憶が消えていくのが怖い。もう二度と手に入らないもの、空間、時間の記憶。とても幸せに満ちている記憶。もう更新することはできない。忘れていくだけの記憶。忘れたくない。ずっと覚えていたい。本当に大切な記憶。幸せだった頃の、世界が輝いて見えた頃の。全てが美しく、世界が愛おしく思えていた、あの頃の記憶。

時間が経てば経つほどに忘れてしまう。もう1年半以上も前のことになって、既に忘れてしまったものもあるだろう。それがとても残念で悲しくて悔しくて。今が一番忘れないでいられる時だから。この先の人生は失うことしかできないから。

だから、これ以上忘れてしまう前に、この人生を終わらせたい。「懐かしい」記憶になる前に。今ある全ての記憶が鮮明なままのうちに。

この世界にさよならを告げて、記憶の風化はここで打ち止め。もう完全なものじゃなくなってしまったけど、これが今もっている最高の記憶。


ありがとう。愛してた。愛してる。さよなら。

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