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「家族」とは何かが知りたかった

土曜日にアラームをかけたのはいつ振りだっただろう。

母に誘われて9:15から新宿ピカデリーにて朝映画。
『鈴木家の嘘』を観に行ってきました。

朝映画、良いですね。それだけで自分の一日の使い方がすごく上手くいっているような気持ちになってしまう。
序盤と終盤、お腹の鳴る音があちこちから聞こえてくるのもまたご愛嬌。



あまりにも突然に訪れた長男・浩一の死。ショックのあまり記憶を失った母のため、遺された父と長女は一世一代の嘘をつく。 ひきこもりだった浩一は、扉を開けて家を離れ、世界に飛び出したのだと―。母の笑顔を守るべく奮闘する父と娘の姿をユーモラスに描きつつ、悲しみと悔しみを抱えながら再生しようともがく家族の姿を丁寧に紡ぐ感動作。
( Filmarks


野尻克己監督、この映画で長編映画監督デビューなんだそう。しかも脚本まで。
というのも、この映画、監督の実話から着想を得ているそうで。

だからこんなにもリアルで痛々しいんだね。
だけど、そこにはちゃんと家族への愛があった。

「家族」とは何か、知りたくてこの脚本を書いた。
「家族」とは何か、あまり考えたことがなかった。
公式サイト


引きこもりの長男・浩一(加瀬亮)が部屋で自殺するところからこの物語は始まる。
加瀬亮の出演シーンなんて恐らく10分程度なんじゃないかな。それくらい短い。出演シーンは短いけど、浩一はずっと物語の中に存在している。それが出来るのが加瀬亮さすがだなあ、と思わされる。

浩一の自殺を見てしまった母・悠子(原日出子)はショックで倒れ、目を覚まさない。

浩一の四十九日。
自死した者を本家の墓に一緒に納骨するのは出来ない、という話が刺さった。浩一の妹・富美(木竜麻生)も「キリスト教でも仏教でも自殺した人は天国に行けないんでしょう」と言っていたっけ。これ、本当にとても悲しくなってしまった。人によって命を自ら断つ理由はそれぞれなんだろうけど。最後くらいさあ、とついつい思ってしまう。「一緒に入れたら先祖まで汚れてしまう」かあ。

悠子が病院で目覚めたとき、題名の通り『鈴木家の嘘』が始まる。

ちょっとネタバレになってしまうけど、
悠子が目覚めて「わたし、1ヶ月くらい寝たきりだったんでしょう?」と言った後、悠子の弟・博(大森南朋)がすかさず言い放った「そうだよ!正確には49日!(……はっ!!)」っていうのが面白かった。

そうなんです。この映画、内容は重たいけれど所々にこういう笑えるシーンが盛り込まれているのがとっても良かった。その配分が絶妙。これが監督デビュー作だなんて信じられないなあ。

結局、富美が「お兄ちゃん今アルゼンチンにいるの!引きこもりやめて、おじさん(博)の仕事手伝ってる!」と嘘をつき、周りもその嘘に乗っかり、母の笑顔を保つために浩一の死を隠し通していく、というお話。


みんなが一丸となって嘘をついていく様は面白くて可笑しくて愛を感じるんだけど(浩一からアルゼンチンのお土産だって!と必死で古着屋でチェ・ゲバラのTシャツを色違いで買ったりとか)隠し通している事実があまりにも悲しいから、「本当にこれで良いんだろうか」という思いを抱きながら観てしまう。

その中でひとりひとりの浩一に対する言えなかったこと、思っていた気持ち、家族に話せないこと、誰にも言えなかった思い、そういったものがぽろぽろと溢れてくる。
溢れる気持ちをスクリーン越しに見ながら一緒に笑ったり、一緒に泣いたり。これ映画館だったから必死で堪えたけど家で観ていたらわたし、多分声に出して泣いていたんじゃないかなと思います。

泣いてしまうシーンの演技で凄い!と思ったのが木竜麻生さんなんですよ。わたし、失礼ながら今まで知らなかった女優さんなんですけど、いやぁ、すごい。心の叫びがキリキリと伝わってくる。引き込まれる。ついつい富美と同じ気持ちになってしまう。
これから注目していきたい女優さんになりました。『菊とギロチン』で主演やられている方なんですね。


目で見て分かる感情だけがその人の感情では無いし
言葉にしている想い以外にも感じていることはあるし
「家族」でも言えないことや
「家族」だからこそ伝えられないことっていっぱいある

そんな当たり前のことにハッとして隣で観ている母のことを、いつまで一緒に居られるのかなあ、なんて考えてしまったらもう、悲しくて仕方ありませんでした。よく言われているけれど、大事にしなくちゃね。

家族の在り方の答えなんて分からないけれど「家族だから」とかそういう理由じゃなくてただ単純に好きだから、とか大切だから、とかそういう想いをわたしは大事にしていきたいな、って思いました。
他の人の心の中まではわからないけれど、自分の中のプラスの感情は出来るだけ周りにも伝えていきたい。noteってそのために使えるものなのかもしれないなあ。


舞台挨拶、後ろから撮ったのでボケボケだけど、それでも伝わる。
監督含む出演者陣が劇中に出てくるチェ・ゲバラのTシャツを着ている中、ただひとり自分のバンドTシャツを着てくる大森南朋よ。そういうところ、大好きです。。
(南アフリカ?帰りの設定だったからパーマ当てたんですよ〜って笑ってた南朋さん最高に格好良かった)

あと岸部一徳さん、こんなに身長高いんですね?!

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