ペンギン_ハイウェイ

アオヤマ君のノートと、わたしのnote

小学校4年生のアオヤマ君は多忙な毎日を過ごしている。

学校に行き、歯医者に通い、自分の研究をたくさん持ち、研究内容をノートに書き留め、おっぱいケーキを食べて脳のエネルギーを補充し、「海辺のカフェ」でチェスをする。
そして9時には歯磨きをすることすら忘れて眠ってしまう。

アオヤマくんの研究内容は多種多様だ。

「プロジェクト・アマゾン」は水路がどこから流れてくるのか水源を突き止める調査。これはウチダくんとの共同研究。
クラスでいちばん声が大きくて力が強いスズキ君に配下の男子たちは絶対服従。実に興味深いこの仕組みも研究対象のひとつ。研究名は「スズキ君帝国観察記録」。

ある日、アオヤマくんは大研究を2つ抱えることになる。

それが、「ペンギン・ハイウェイ」と「お姉さん」。

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最初に投稿した26歳の目標を書いたnoteにも引用するくらい、わたしはこの小説が好きらしい。久しぶりに読み返したら、本がヘナヘナになっていて驚いた。そんなにも繰り返し読み込んでいたとは。

というのも、最初に読んだときはここまでハマらなかったのだ。
舞台は艶やかで和やかで妖しげな京都。最初は読みにくくても、段々とテンポよくなっていくあの文章。そして何よりも、ひねくれている愛おしい阿呆な者共はいづこへ?と、他の森見作品を読んだ人たちならきっと思うでしょう。わたしも最初は驚いたものだ。これ本当に森見登美彦?って。

この舞台は京都ではない。クセのある文章でもない。
だけど、魅力的なキャラクターたちは変わらず存在している。




アオヤマくんと”誰か”の会話がとても好きだ。

一緒に共同研究をするウチダくんは、アオヤマくんのことを頭が良いけどちょっと変だと思っている。ウチダくんはおっとりしているが、周りへの観察眼は鋭い。アオヤマくんは到底及ばない。

ハマモトさんはアオヤマくんにとって良きライバルになり得る女の子。教室でいつもチェスをしている。相対性理論について話をすることができるという点でアオヤマくんはハマモトさんに一目置いている。

スズキ君帝国の皇帝・スズキ君はジャイアンのような男の子。普通の小学生らしい小学生だと思う。だからこそ、アオヤマくんの理論に言い返せなくなるスズキ君を見ていると、少し切なくなる。今はそれでいいよ、スズキくん。だけど、暴力はダメよ。

歯科医院のお姉さんは非常に魅力的な存在だ。アオヤマくんはお姉さんの研究をするが、これがなかなか捗らない。お姉さんには謎がいっぱいなのだ。そしてアオヤマくんはついついおっぱいに見とれてしまう。

「海辺のカフェ」でチェスをするアオヤマくんを迎えにきてくれるお父さん。実はこの物語の裏ボスなのではないかと思うくらいに台詞がどれもこれも良いので注目していただきたい。アオヤマくんにノートの書き方を教えたのもお父さんだ。

「どんなところがおもしろかった?」
父に新しい本を買ってもらうとき、ぼくは父の試験に合格しなくてはならない。前に買ってもらった本について、どんなところがおもしろかったかということについて、父に説明しなくてはいけない。その試験に合格できなければ、本を買ってもらうことはできない「おきて」だ。でも、ぼくが試験に合格できなかったことはない。

▷ 森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』角川文庫 p223

アオヤマくんとお父さんの関係性が1番この本の中で好きな部分かもしれない。子供を子供扱いしない大人が出てくる物語がいつだって好きだ。
西加奈子さんの『きいろいゾウ』もそう。映画でいうと濱田龍臣くんと宮崎あおいちゃんの関係性が温かくて可愛らしくて大好きだった。
どんどん話が脱線してしまうけれど、同じ理由から少年少女文学が好きだし、その中でもエーリヒ・ケストナーの文章は子供の頃も大人になった今もどの時代に読んでも感動してしまう。よかったら読んでみてくださいね。『エーミールと探偵たち』『飛ぶ教室』『ふたりのロッテ』が有名です。


だいぶ話が逸れてしまいました。

実を言うと、わたしはアオヤマ君の手書きのノートのような使い方を、ここのデジタルのnoteで表現したいと思って、このnoteを始めたのです。

「ぼくだけノートを持ってないね」とウチダ君が言った。「学校で使うノートならあるんだけど」
「自分のノートがあると楽しいよ。発見したことをぜんぶ記録するのだ」
(中略)
「ウチダ君が新しく知ったことや、思いついたことなら、なんでもいいんだ」
ハマモトさんが自分のノートを宝物みたいに掲げて、「おもしろいと思うことを書けばいいと思うよ」と言った。

▷ 森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』角川文庫 p135-136

ほら、ね、素敵でしょう?
肩肘を張らずに、綺麗な文章、読みやすい文章を意識せずに、自分の好きなものについてや、忘れてしまいそうなどこにでもある日常を、そっと残しておきたいなと思って始めたのがこのnoteでした。
とはいえ、人前に公開するものなのである程度時間をかけて書いてしまっているんですけどね。ついつい見栄を張ってしまうよね。

だけど、根本的な部分はしっかり覚えておこうと思うのです。なぜ、noteを始めたのか。楽な気持ちで書いていいんだよ、ということ。


わたしは26歳になったけれど、小学4年生のアオヤマ君に憧れを抱いている。
子供の頃よりも新たな出会いの数は減っていると思うけれど、大人には大人の楽しみ方もあるんだよ!ということで、明日からも自分の好きなようにnoteを書いていこうと思うのでした。ありがとね、少年。


あ、そうそう。
ちょうど来週から映画が公開されるんですよ。

アオヤマ君を勝手にのび太くんのような男の子でイメージをしていました。。研究熱心=おかっぱ眼鏡、ってわたしの頭の中の固定概念固すぎませんかね。とほほ。

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