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女性必見!江戸時代の女性のおでかけ用メイクとは?~行楽編~『容顔美艶考』解読②

前回は季節ごとの化粧方法でしたが、今回はおでかけ用で、特に行楽を中心とした雅な催しものに参加する際のメイク方法を取り上げます。訳し方は少しまろやかにしてみたいと思います。

花見遊山の化粧法

花見遊山におでかけされるときのお化粧は
太陽の下で見られますので、
厚化粧は粉が吹いたようになって
ツヤがなく、愛嬌がなく、下品に見えます。

逆に薄化粧だと、太陽の映り方や花の下では
お顔の色が赤黒く見えますから、
中くらいのお化粧にされるのがよいでしょう。

首筋や耳の前とうしろは、
たっぷりとおしろいを伸ばし、
お顔にはまず化粧水を塗ってから
おしろいを厚く塗ります。

眉刷毛を水に浸して、一度刷いてみましょう。
そのあとに濡れ手ぬぐいでしっとりと
押さえると中くらいのお化粧になりますので、
そのままよく冷まします。

最後に鼻と口元のあたりにもう一度おしろいを
つけて、乾いた眉刷毛で伸ばしましょう。

人込みの中に行くときは、いつも化粧水を
下地の前に塗るのがおすすめです。

船遊山の化粧法

船遊山は男女が混じり、顔を突き合わせて
座りますので、特にお化粧は難しくなります。

濃いお化粧は髪の生え際とおしろいの境目に
生地が見えて見苦しいですから、
薄めのおしろいがよいでしょう。

ですが、内輪での船遊山でしたら、
行先の場所にもよりますので、
厚いお化粧もその時々に合わせるのが
よいでしょう。

灯火に向かう化粧法

灯火に向かうときのお化粧は、
かなり厚めのおしろいにして
しばらくいても大丈夫です。

濡れた眉刷毛でサッとなでて、
おしろいと紅を少し入れ、
てのひらで溶き合わせて塗りましょう。

能芝居見物の化粧法

勘進能かんじんのうや芝居見物などの際、桟敷のような
高いところでは、大勢の人に下から
見上げられることになりますので、
そのことを忘れないようにするのが大切です。

総じて、人のお顔は上から見下ろすのと
下から見上げるのとは、顔立ちがかなり
違って見えるものです。

なぜかと言いますと、
下から見上げられるときは鼻の穴が見える
ため、ぶさいくに見えるのです。

ですから、あまり高いところには
行かないほうがよいかもしれません。

さて、お化粧は濃いおしろいがよいでしょう。
鬢付けをしっかり練って、鼻の際・鼻筋・
あごまでよく摺り込み、お化粧を厚くします。

そのあと、粉おしろいを眉刷毛で
鼻からのどまで粉が吹くようにサッと刷き、
首筋はふつうくらいにするのがよいでしょう。

いつも通りのおしろいでは、人の気に押され
赤黒く見えたり、役者の厚いおしろいに負けて、
ご本人の顔色がひときわ黒く見えるのです。

また、額のおしろいを濃くしますと、
鼻が低く額が出たように見えますので、
これもよく覚えておくとよいでしょう。


【たまむしのあとがき】

この古文書の面白いところは、化粧方法以外のちょっとした一言にあると思います。

例えば、船遊山では「男女が顔を合わせるからお化粧は難しい」とか、能芝居では「下から見上げられると鼻の穴が見えるからブサイク」とか。

ここまで言っていただくと気持ちがいいですね。しかも勉強になります。

こういった作者の主観ともとれる部分が、個人的にすごく好きなのですよ。

ところで、花見のところに出てくる原文の「花の露」というのを、言葉通りに受け止めていたのですが、一度投稿したあとで別の古文書にも出てきて、よくよく調べると、実は「化粧水」のことだと判明したのです。

いやぁ~~~、驚きました。


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