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女性必見!江戸時代の女中の化粧法。『容顔美艶考』解読⑥

世代別・立場別化粧シリーズ。今回は下働きの女性にスポットを当てた指南となります。

腰元衆の化粧

 ※腰元=身分の高い人のそばに仕えて
     雑用をする侍女

奥様がどこかへお出かけになるとき、
腰元たちは自身の身支度を
かなり手早くされることが、
常にもっとも重要なことになります。

まず、いつものおしろいは中くらいの薄さに
して、鼻と口元だけ少し厚くしましょう。

首筋は薄めにすると、
おとなしく見えて奥ゆかしいです。

さて、手早くしましょうと申しましたが、
奥様の身支度が済んでいるのに
腰元たちがぐずぐずしていますと、
奥様が大いに気の毒ですし
機嫌をそこねるでしょう。
また、久三きゅうざ※や丁稚※殿もボヤきます。

 ※久三=下男奉公をする者の通称
 ※丁稚=職人・商家などに年季奉公をする少年

とかく手っ取り早くキリキリシャンと着物も
着替え、惣囊そうぶくろを持って待っている
くらいになさるには、前もって常に身支度を
早くするお化粧を心がけることです。

下女方の化粧

 ※下女=雑用に使われる召使の女

下働きの女中方は水仕事が多く、
力仕事なども多いので、
自然と手足が荒れて指も太く、
どこもかしこも太くなります。

ですから、いつでも水を使ったあとは
ぬるま湯で手をしばらくつけてから
よく拭くとよいでしょう。

夏冬とも熱い湯はよくありません。
ぬるま湯を使いましょう。

お化粧をなさるならば、
おしろいを手で溶き濃い白水※ほどにして
まんべんなく塗ります。

 ※白水=米のとぎ汁

眉は手ぬぐいでたっぷりと拭いて脂だけ引き、
墨は引かないほうがよいでしょう。

また、まかない様※やむしろ敷※というような
御方は、おしろいは浮き粉※を化粧水に混ぜて
白水ほどにし、湯上りや熱い湯を使ったあとで
お使いになるとよいでしょう。

 ※まかない様=食事の支度や給仕をする人
 ※むしろ敷=身辺の世話をする奉公女
 ※浮き粉=米を粉状にしたもの

紅は手ぬぐいで唇へ薄くつけますと、
小じわも見えずハッキリとよく見えます。


【たまむしのあとがき】

どうやら腰元は下女よりも身分が上のようです。

イメージ的には、腰元は秘書のようなもので、下女は平社員といった感じでしょうか。

この『容顔美艶考』に書かれているのは、かなり裕福な武家や大きな商家に関係している女性たちのようです。

美を追求するのにも、まずそれを手掛ける財力など余裕のある人からはじまり、次にそうした環境に触れる機会の多い人へと波及したのですね。


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