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包丁の生臭さを消す方法など。江戸時代の古文書『廣益秘事大全』解読④

引き続き、嘉永四年(1851)の古文書『廣益秘事大全』から、奇巧妙術類(生活の豆知識編)の4回目です。

今回は、いろんな油汚れを落とす方法が中心となります。

江戸時代は、今のように古くなったら捨て、壊れたら捨て、という使い捨て時代ではありませんでしたので、徹底的に使う、末代まで使う、という精神でした。

そんな時代を象徴とした一片を、日常生活から見てみましょう。

1.雨障子を繕うのに糊を使わない方法

雨障子などには、古くなったら糊のつかない
ものがある。そのときは、糊の中に生姜の
絞り汁を加えると、糊がよくつき離れない。

2.革の汚れを洗う方法

革などについた垢を洗うには、糯糠もちぬか
揉み洗いする。その際、糠を洗い落とさずに
干して揉むこと。柔らかくなって垢が落ちる。

また、水に浸かって琥珀色になった場合は、
酒を革に湿りわたるほど吹きかけ、
畳の下に敷いて乾いたときに取り出し
よく揉むと柔らかくなる。

3.包丁の生臭さを消す方法

包丁の生臭さは生姜の葉でよくこすると
生臭さはすぐに消える。

4.糊で貼った物をネズミに食われないようにする方法

糊の中にこんにゃく玉を少し加えて貼れば
ネズミに食われない。
また、竈の灰を混ぜるのもよい。

5.衣服の脂や垢を落とす方法

衣服の脂や垢は、ごはんを包んで水で揉み、
それをつけて洗う。その後きれいな水で洗い
流せば、奇妙なことによく落ちる。

6.旅中などで寒気を防ぐ布団のこしらえ方

藁のはかま※をよく柔らかくして布団の中に
入れておけば、一枚でも寒気を防ぐことが
できる。また、白鳥の腹毛も入れるとさらに
柔らかくなり、寒を防ぐことができる。
衣服・脚絆きゃはんなどに入れてもよい。

 ※藁のはかま=藁の葉の部分

7.タイマイ(ウミガメ)などの油を抜く方法

タイマイなどの櫛やこうがいを洗うのに
熱い湯を使ってはいけない。
石鹸を使って冷水で揉み洗いすること。
そして次に水だけで洗い、さらに水に塩を
入れて再度洗う。このようにすれば、
色が出てツヤを落とさずきれいになる。

8.焼き物に穴を開ける方法

焼き物に穴を開けるには、金剛砂こんごうしゃ※を
ひとつまみその場所に置いて、
杉の木の切りはしで揉む。
直に揉めば穴が開く。

 ※金剛砂=柘榴石の小結晶の集まったもの

9.箪笥たんす挟箱はさみばこなどからヤニが出るのを止める方法

 ※挟箱=江戸時代の携行用の担い箱

ひのきで作った道具類は、新しいうちは
ヤニが出るので、使っていないときは藁を
入れておき、その藁にヤニがついたら
取り去ってそのあとに物を入れる。

春慶塗しゅんけいぬり※などにも出ることがあるので、
綿に油をつけて火で炙って拭く。
ほかのものでは落ちないので注意。

 ※春慶塗=堺の漆職人「春慶」が始めた
      漆塗りの一方法


【たまむしのあとがき】

今では包丁の生臭さを消すことなんてないと思いますが、こういった場面でも生姜は活躍するんですね。

当初、生姜の「葉」のくずし字が、くさかんむりのないあまり見かけないものだったので、「紫」がかった生姜の部分、と訳していました。

生姜の紫・・・

よくよく調べてみると、おもしろいことを発見しました。

生姜の切り口が紫色になることがあり、その原因がポリフェノールだとあったんです。

つまり、このポリフェノールの抗酸化作用に生臭さを消す役割があるということのようなんですね。

面白いことに、人間の加齢臭を消すにもこのポリフェノールは有効らしいのです。

ということで、「生姜の葉」を「生姜の紫」と間違えたことから知り得た情報でした。

怪我の功名というやつです。


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