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江戸時代版:高野豆腐の作り方など。古文書『豆腐百珍』解読②

天明2年(1782)の古文書『豆腐百珍』本編解読第2回目です。

あまり現代では馴染みのないものが続きますが、これらは尋常品に分類されるもので、いわば日常で食べられていた料理です。

もしすぐにでも作れそうなものがありましたら嬉しいですね。

番号は前回からの続き(原文通り)になります。

8.草のケンチン

「77 真のケンチン」のところで取り上げます。

9.あられ豆腐

よく水を絞り出し、
小さく賽の目に切ります。
そしてザルにあげて角を取り、
油でサッと揚げます。
味つけはお好みで。
少し大きいものを松露しょうろ豆腐といいます。

10.雷豆腐

ゴマ油を熱して豆腐を掴み崩して入れ、
素早く醬油を加えて味つけします。
さらに白ネギをざく切りにして入れ、
大根おろしとワサビを加えます。
もしくは、すり山椒でもよいでしょう。
南京豆腐ともいいます。

水気をよく切って上記のようにするのを
黄檗おうばく豆腐ともケンポロ豆腐ともいいます。
「40」にある黄檗豆腐とは作り方が少し違い、
一説には隠元いんげん豆腐ともいいます。

▲豆腐の水を絞ってよく掴み崩し、
青菜をみじん切りにして豆腐と同量にします。
そして油を熱し、まず豆腐を入れてから
よくかきまわします。次に青菜を入れて
再びよくかきまわし、醤油で味つけします。
十丁に対し油二合(360ml)ほどの分量です。
これを砕き豆腐といいます。

11.再炙ふたたび田楽

「79 阿漕あこぎ田楽」のところで取り上げます。

12.こごり豆腐

一丁を8等分に切り、ザルに並べます。
沸かした湯をかけて屋外に出し、
極寒天に一夜さらします。

翌日また湯にかけて煮てやわらかくし、
浮き上がってきたら取り上げて
少し押さえつけてザルに並べます。
そして何日も日に当てます。

沸かした湯に山梔子(サンシシ・くちなし)
を割って入れるとよいでしょう。
あとで虫が湧くのを防ぐためです。

夜更け以降にさらしておきましょう。
宵はよくありません。
これを高野豆腐ともいいます。

▲上記のようにして寒天に一夜さらすだけで
翌日すぐに使うのを速成凍はやこごりといいます。

山梔子(サンシシ・くちなし)

13.速成凍はやこごり豆腐

上記を参照

14.すり流し豆腐

よくすって葛粉を混ぜ、さらによくすり、
味噌汁にすり流します。

15.おし豆腐

布に包み板を斜めにして並べて載せます。
つぶれない程度の重石をかけてよく水気を切り、
生醤油・酒・塩を同量入れて煮ます。
そして小口切りにします。


【たまむしのあとがき】

高野豆腐は「12.こごり豆腐」のことでした。

なるほど、作り方勉強になりましたねー。

極寒天にさらすということは、おそらく夏は作れないということなのでしょう。

ところで、この『豆腐百珍』はレシピ本なので、当然調味料が出てきますが、なぜかいまのところ「塩」がこの漢字で書かれていません。

現代の言葉に置き換えると「しほ」ですが、ひらがなで読ませる元の漢字をこの古文書では「志本」が使われています。これを変体仮名へんたいがなといいます。

ですので、古文書では「醤油酒志本」と書いてあり、「醤油酒しほ」と読んでください、ということになります。

なぜ「塩」じゃないのかは、まったくもって意図不明です。

ただ、なんとなく「醤油酒しほ」という言葉の並びが、人の名前みたいで面白いなと思うのでした。

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