女性必見!江戸時代の化粧道具ご紹介VOL,1『容顔美艶考』解読⑬
今回は今までとは少し趣旨が異なり、化粧道具の使い方をご紹介する回となります。まずは、おしろいと眉墨から。
1.おしろいの使い方
おしろいをお使いになるときに、
どなたも大抵はアク出しの際
最初からかき混ぜてアクを出すと思いますが
これはとてもよくありません。
アク出しをするなら、まずおしろいを皿に入れ、
そのまま水を入れます。
そのとき、決してかき回してはいけません。
その状態で一夜おいてから、
翌朝上水をよく垂らして捨て、
かき混ぜてまたしばらく沈ませます。
その水を再び垂らして捨てて、三度目の水を
入れ替えてから、お使いになるとよいでしょう。
この通りにしてお使いになれば、
お顔がおしろいで荒れることはありません。
また、おしろいなまず※なども
できることはありません。
※おしろいなまず=白斑の異名:
しろなまずをもじったもの
もっとも、おしろいも紅も、雪水か寒水を
用意して、これで作ることが大切です。
もしこの二つがなければ、
川の水を使いましょう。
赤褐色の水や塩気のある水は、おしろいの色が
黒くなりますので、よくありません。
また、おしろいの中に、上質のはらや※を少しと
上質の葛をその半分混ぜ合わせて
お使いになると落ち着きがよく、
お顔にツヤが出て美しくなります。
※はらや=水銀にみょうばんを加えて製した
もの。伊勢おしろい。
さらに、おしろいを洗い落とすには、
初めからお湯を使うのはよくありません。
まず、濡れ手ぬぐいでよく拭きとり、
サッとお顔と首筋を濡らして、そのまま
糠袋で洗ったあとにお湯を使いましょう。
このようにしますと、お顔に潤いが出て
たいへんよいのです。
いつもの洗い方では
お顔に染み込んだおしろいが浮き出て
粉が吹いたようになり、
見苦しくてよくありません。
2.眉墨の使い方
眉は遠山※・柳眉※・薄眉墨がよいです。
※遠山=遠山のようにほんのりと青い眉
※柳眉=柳の葉のように細い眉
根笹のように濃く作って眉墨が真っ黒になるのは
目元が鋭く見えてよろしくありません。
墨は上質な物ですとむしろよくありませんし、
品質の悪いものもよくありません。
中くらいのものを使いましょう。
さて、墨はたっぷりとすって硯の海に溜め、
二日ほどおいて使います。
すりたての墨は光っているので
使うにはよくありません。
筆はだいぶ古い筆の毛が
自然に丸く切れているのでおすすめです。
もし古い筆がない場合は、日記用の筆の先を
切って使うとよいでしょう。
墨の中に真菰※を少し入れるのもよいです。
汗が出ても墨がよく落ち着いて、
浮いてくることがないからです。
※真菰=イネ科マコモ属の多年草
また、若い方でしたら眉はかなり薄く
引くとよいでしょう。
濃くすると黒尖りしているようで醜いです。
もっとも、初めから真っ黒に引くと、
それも薄汚れたように見えてよくありません。
眉墨の引き方は、初めはかすれたようにし、
眉尻ほど濃く引き、眉先は少しだけ濃くして、
自然に眉尻が濃くなるようにすると
よいでしょう。
眉先が濃くて眉尻が薄いのは、
たいへん見苦しいものです。
また、墨に紅を少しすり混ぜて
引くのもよいでしょう。
【たまむしのあとがき】
おしろいにしても眉墨にしても、すべて自分で作らなくてはいけなかったようです。
ファンデーションや眉ペンのように、買ってすぐに使えるような商品は、まだなかったのですね。
化粧品を作るのに一苦労し、化粧をするのにも一苦労。
シンプルなメイクだったにせよ、ひとつひとつが手間ひまかかって大変。
化粧ひとつも大仕事だったようです。
そして、この『容顔美艶考』も残りあと一回となりました。
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