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#哲学

マゾヒズム論の歴史についての簡単な覚書

マゾヒズム論の歴史についての簡単な覚書

 マゾヒズムという語は、精神科医のクラフト=エビングが1886年に刊行した著書『性的精神病理』の中で初めて現れる。語の定義と共に、数々の症例が提示され、考察が加えられている。クラフト=エビングのこの本は大きな影響力を持ち、後にフロイトが『性の理論に関する三つのエッセイ』(1905年)、『子供が打たれる』(1919年)においてマゾヒズムに言及し、フロイトのマゾヒズム論は『マゾヒズムの経済論的問題』(

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マゾヒズムとは何か?のための補稿1

マゾヒズムとは何か?のための補稿1

 マゾヒズムは苦痛の中に快楽を見出すとされている。この前提があってこそ、他者に苦痛を与えることを快とするサディズムと、苦痛を与えられることを快とするマゾヒズムは相補的な関係、互いに変転可能なものであるとみなされている。しかし、本当にそうだろうか。マゾヒスティックな嗜好を持つ人間が、ありとあらゆる苦痛に対して、無条件に快楽を引き出すことが可能であるなどと考えることは妥当であるか。

 生活実感と照ら

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