韓国小説「アーモンド」著ソン・ウォンピョン 読書感想文

久しぶりに青春小説の秀作に出合えた。
読み始めてまもなく私は確信した。

少年ユンジェは母と祖母の3人暮らし。産まれながらにして扁桃体が小さいため、人の気持ちを推し量る事が難しい。
母は扁桃体の形に似たアーモンドをユンジェによく与えたが効果はもちろん何もない。
家族で出掛けたある日、母と祖母が暴漢に襲われる。祖母は亡くなり、母は意識不明のまま入院生活を余儀なくされる。
一人になったユンジェの前に今までにない人間関係の変化が訪れる。

ユンジェの考え方、話す内容は非常にシンプル。彼が一人称で語るのもあって文章自体がとても読みやすくなっている。
キャラクターを際立たせる人物描写も面白く、特に祖母のあからさまな発言には思わず笑ってしまった。
また、後半のドラという少女の登場は村下孝蔵の「初恋」のような清潔さと寂寥感があり、青春小説としてのレベルの高さを感じた。
社会や大人の写し鏡のような少年ゴニが、ユンジェを変えようとして逆に変えられてしまうところも魅力的だった。

母が営む古本屋であらゆる書物に囲まれながら過ごすユンジェを通して、時折本の存在や読書の意味について改めて認識させられた。
意識下に忍ばせているその想いを目にした時、本という親友との再会に手のひらが温かくなるのだった。

※今週末の韓国文学トークイベントまでに無事読み終えました〜✨。作者さん、訳者さんに会えるのが楽しみです!






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