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仏小説「青いパステル画の男」著・アントワーヌ・ローラン 読書感想文

パリの弁護士ショーモンは古美術コレクター。オークション会場でもお馴染みの顔だ。その散財を妻であるシャルロットに咎められているが、古美術愛は止まらない。
ある日、ショーモンは自分にそっくりな男が描かれている青いパステル画と出合う。どうしても手に入れたいショーモンはオークションにて高額で競り落とす。
青いパステル画の中の男が自分にそっくりであるというのに、周りの人間は誰一人気づかない。腑に落ちないショーモンは、愛車ジャガーに乗り出かけたところ、ふいに車体が浮かび上がるような感覚に見舞われる。車が到着したところは郊外の静かな町。何気なく立ち寄った飲食店でショーモンは情感たっぷりに歓待を受ける。「伯爵さま!」と呼ばれて。

私が今一番好きな作家アントワーヌ・ローランのデビュー作。アントワーヌ・ローランならではのトンチキな展開と繊細な感情表現がたまりません。
基本的に真面目な人間がどうしても抗えない欲に手を伸ばし、明らかに間違っていることに身を委ねてしまうどうしようもなさ。これはフランスではこの作品の後に発表され、何故か日本では先に売られている「赤いモレスキンの女」、「ミッテランの帽子」でさらに昇華されているアントワーヌ・ローランの得意技。ええ、私が癖になっている展開といっても過言ではないでしょう。

仏小説「赤いモレスキンの女」アントワーヌ・ローラン著 読書感想文|こみこみこ #note #読書感想文 https://note.com/komiko2018/n/n6746fd4951f6

ミッテランの帽子 作・アントワーヌ・ローラン 読書感想文|こみこみこ #note #読書感想文 https://note.com/komiko2018/n/n06c50cc449a5


ただ、ラストはちょっと性急で予想外。処女作ならではの次作へ続く伸びしろであると思えば納得出来るかもしれません。
あー、日本で売られているアントワーヌ・ローランの本を全部読んでしもたー。新作はよ。


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