「82年生まれ、キム・ジヨン」 チョ・ナムジュ著 読書感想文

1960年映画「下女」、1970年半ば〜1990年ノンフィクション「スカートの風」と来たら、もう去年から話題である1982年から2016年の韓国女性を描いた小説「82年生まれ、キム・ジヨン」を読むしかないでしょうが!と思い、電子書籍で購入した。

主人公はソウル在住の専業主婦キム・ジヨン。
夫と幼い娘の3人で暮らしている。
ジヨンという名前は82年に韓国で生まれた女の子に多いらしい。
ある日、ジヨンはほかの親族や知人がのりうつったかのように喋りだす。
夫は最初あまり深刻に考えていなかった。
しかし、ジヨンは秋夕に夫の実家で忙しく家事をしている途中、実母がのりうつったかのように喋りだし、止まらなくなってしまう。
ジヨンは夫に付き添われ、病院で治療を始めていく。

そこからジヨンが生まれて発病するまでの人生が記されていくのであるが、同時に彼女の母親が歩んできた道も語られていく。

ジヨンは姉、弟と父、母、父方の祖母の6人家族でソウルにて育った。
母は地方出身者で学業優秀であったのに中学を出ると働き、その収入は他の男兄弟の進学のために使われた。
男兄弟が進学を終えたのち、母はやっと高校に入り卒業する。
そんな経緯もあり、子どもたちに教育をきちんと受けさせる気概があった。
しかし、つい娘たちを雑に扱い弟を贔屓してしまう。
娘たちに家事をさせるが、弟にはさせない。
食べ物の差別すらある。
自分が男兄弟のために我慢を強いられたのに、長女の進学に関して同じことをする。

私には男兄弟はいないし、地元にいるいとこは全て女性であるので、この差別には胸が悪くなった。
ただ、ジヨンの母が受けた差別ほどひどくはないが、彼女と同世代と思われる私の母は学業優秀だったにも関わらず、両親が弟を大学へ行かせたいからという理由でやむなく看護学校へ進学した事実がある(しかも、この弟が大学を中退する!)。
また、姉の同級生の中には「弟にお金をかけたいから国立大へ行け」と言われたり、進学校へ通わせながら「女が大学へ行ったら嫁にいけなくなる」と両親に言われ就職した人もいる(30過ぎて再会したら彼女はまだ未婚だったらしい)。

家庭内での差別は、家族で話し合えば解決する内容もある。
問題は社会だ。
思春期に入ったジヨンの周りでは、学校の先生や同級生によるとんでもないセクハラと差別が横行する。
特にひどいのは、露出狂を捕まえ警察につき出した女の子たちが学校で先生から何故か罰を受けるところだ。
男が悪くても女が歯向かうことは許さない、またはそうなるのは女のせい、という韓国社会に嫌悪感が増した。
よく、韓国女性は気性が激しい、気が強いと言われる。
ここまでの歴史を振り返る限り、彼女たちは日本で生きる女性よりも2段階くらい下に置かれて差別されているように思える。
大きな声で主張しないと社会に届かないのだ。


この本は日本女性にもかなり共感を得ているらしい。
ただ、私は半分くらいしか共感しなかった。
先に少し触れたが、環境により家庭内で男女差別をされたことがないのもある。
たまにある親戚の葬式で正座が出来ないだけで「正座もできんのか!嫁にいけんわ!」と偉そうにいう面識のないオッサンにはすぐに呪いをかけていた。

小学校や高校には女の子の生徒会長がいたし、私の地元徳島は女子の大学・専門学校進学率は日本一であり、女性社長の割合も高い。
小学校のうちは男の子と喧嘩して何度か泣かせたこともある。

また、県外や社会に出て明らかに女性を理由に不当な扱いを受けたら、「女やから思ってなめているんでしょう!」などその場で思っていることを伝えてきた。「お前」なんて呼ばれた日にゃその方の存在を無視した。
最近の日本社会は性差別をした途端、世の中から撤収せざるをえないので、こちらもそんなにファイティングポーズをとる必要もなくなったが。

性別がどうこうというより、どのような「人間」でありたいかと考え、自分を大切にして生きることが重要と私は思っているため、半分しか共感しなかったのかもしれない。
ただ、性差別に苦しむ同性がいることをちゃんと知り、理解する人間でありたいとは思う。

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