田舎の公立小中学校からケンブリッジに行った話 - その8

今回は大学院への進学について書きます。日本の大学院への進学と少し制度が異なります。

イギリスの大学院入試制度

個人的には理にかなっていると思ったのですが、イギリスの大学院は入試というものがないです。日本の大学院修士課程へ進学しようとすると、大学ごとに個別の試験が開催されて、それに合格して入学が認められる、という仕組みになっています。イギリスの場合は書類選考だけです。

試験がないから簡単なのか、というとそんなことはなくて、イギリスの大学での試験で良い成績を取る必要があります。大学院の書類審査は、大学の成績表、推薦文、あとは志望動機みたいな作文が定番です。大学によって少し異なるところもあるかもしれませんが、成績表と推薦文はどこも必須です。

イギリスの大学の試験はどの大学でもかなり厳密に実施されるので、大学での試験結果をもとに評価されるというのは、あらためて試験を受けなくても良いし個人的には楽でした。大学での3年間の通算成績と、大学院受験時の一発試験の結果で、どちらが信頼性が高いかといえば大学の成績の方だと思います。

これはいくつか理由があると思います。1つは各大学が試験をやるのが大変だから、ということがあると思います。もう1つは日本のように入学時を厳しくするのではなくて、卒業時を難しくすれば、あまり入学時点で面倒な関門を設けなくても卒業生の質を担保できるから、というのがあると思います。

大学院入試の対策

大学の成績がもとになるので、あまり対策も何もなくて、大学時から真面目に勉強しましょう、ということにつきます。中には良い点が取れるように、なるべく簡単な科目を取りまくる、という猛者もいました。

想像でしかないのですが、もし最終的にイギリスの大学院を目指しているのであれば、イギリスの大学に留学していた方が、行きやすいのではないかと思います。まず、イギリスの大学の成績表がもらえるので、大体合否を予想しやすいです。

イギリスの大学は卒業時に成績が5段階ぐらいで決まり、上から順に、

First
Upper Second
Lower Second
Pass
Fail

となっています。Failは、3年間お疲れ様、でも全然試験結果振るわなかったし、卒業は認めないよ、ということで成績というか退学なんですが、Firstが取れればだいたいどの大学の大学院でも入れるのではないかと思います。

イギリスの大学に行っていた方が大学院進学がしやすい、もう1つの理由は、推薦文です。大学の先生二人から推薦文を書いてもらうのですが、大学時代に書いてもらえそうな先生を3年かけて見つけることができます。日本の大学でも推薦文をもらえなくはないですが、良い先生でも英語がいまいちだったり、イギリスの大学では知られていない(英語の論文が少ない)など、推薦文を書いてくれそうな先生を探すのが難しいこともあります。

合格通知について

大学卒業前に合格通知が来るので、通常Conditional Offer (条件付き合否通知)というのがきます。これは大学の成績が上で書いたUpper Second以上とか、First取れば合格ですよ、という内容の通知です。

私がケンブリッジの合格通知をもらった時は、Conditional Offerで、条件はFirstを取ることでした。Firstは正確なところはわからないのですが、だいたい成績上位10%ぐらいではないかと思います。

博士課程について

イギリスでは修士課程が1年あって、その後3年か4年ぐらいかけて博士課程(Ph.D.)に進学する人もいます。博士課程は結局進学しなかったのですが、ケンブリッジの中で博士課程に進むには、試験の成績の平均点が75点以上ないと行けない、と言われていました。
ですがこの辺りは実はかなり適当というか曖昧です。博士課程の場合指導教員を選んでいくのですが、指導教員がいいよ、と言えば試験結果はあまり関係なかった事例もありました。その場合修士課程在籍中に、指導教員の人と良い関係が築けていて、指導教員がこの学生なら無事研究活動を終えられる、と判断できていればよかったみたいです。

まとめ

今回は大学院への進学について書きました。大学への入学も、大学院への進学も共通していると思うのですが、イギリスの場合は試験は「卒業できるかどうか」を判断するという目的が明確だなと感じました。博士課程の場合は、自ら研究をしてPh.D.を取得できるかどうか、と少し見る点が変わります。そのために最低限必要な学力は見るし、退学する人が多くならないように気をつけるけれども、入学のハードルはそこまで上げない、という考え方が根底にあるように感じました。

次回は卒業後の進路、特に就職について書く予定です。

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