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田舎の公立小中学校からケンブリッジに行った話 - その4

今回は留学のメリットについて、個人的な体験をもとに書きたいと思います。

留学のメリット

人生でこれほど成長できた時期はない、というぐらいの成長を得られました。英語でコミュニケーションが取れるようになった、というのはもちろんありますが、大学で学んだ専門的な知識は今の仕事にも直接役立っていますし、その時に得た人とのつながりのおかげで貴重な体験を得ることができました。

もう一度大学に行けるとしたら、迷わず留学を選びます。日本の大学も2年半通ったので比較した上で言えますが、仮に日本の大学の学費が無料だったとしても、海外留学を選びます。知人から相談を受けたら、海外の大学しかお勧めしません。

主観的にはなりますが、個人的な経験から得たイギリス留学のメリットを紹介します。

メリット1:授業のレベル・質が高い

よく言われるように、日本の大学は入るのは難しくて卒業は簡単、海外の大学(主にアメリカ・イギリスを指すと思います)は入るのは簡単で卒業は難しいです。

イギリスの大学での話ですが、授業の構成はだいたいこんな感じです。イギリスの大学は3年制(厳密にはスコットランド除く)なので、各年次での授業です。

1年:必須科目が多め。授業は講義があって、その後チュートリアルという小クラスでの演習がある。講義で宿題が配られて、チュートリアルまでに問題を解いて提出。チュートリアルでは先週分の宿題の解答と、講義でわからなかった点をチュートリアルの講師(博士課程の大学院生)に質問する。

2年:選択科目が増える。授業は講義+チュートリアル。宿題は講義で毎回出る。1年次に比べてチュートリアルでのサポートは少なめになり、チュートリアルがない講義も出てくる。

3年:ほぼ選択科目になる。授業は講義中心で、チュートリアルの機会は減る。独立して勉強することが求められてくる。

人文系、社会学系の学部では、授業はかなり少なく、週に3日ぐらいしか授業がありません。その代わり毎回作文を書く課題が大量に出るので、暇がないです。

ただ、授業にきちんと出て課題をこなして予習復習を怠らずにやれば、どんどん実力がついてくる、という実感がありました。授業の質も高く、学生が理解できやすいように工夫されていたり、何より課題があるのでそこで理解がまた深まるという仕組みがありました。

日本の大学で1つ困ったのは、講義を担当した先生が執筆者になっている参考書を授業に使うことでした。その参考書がよく書けていれば良いのですが、そんなことは滅多になくて、世界的に有名な教授が書いた世界中の大学で使われている教科書と比較したら、申し訳ないのですが日本語の説明が分かりづらい教科書が多かったです。試験範囲もそこからなので、あまり役にも立たない知識を必死こいて勉強するという不毛な作業に感じました。イギリスの大学ではそんなことはなくて(大学によるのかもしれません)、例えば経済学なら世界的に有名な先生が書いている、わかりやすいという評判の教科書があったりして、そう言った標準的な教科書や参考書が使われました。
と言っても何かの教科書をそのまま使うということはほぼなかったです。先生が授業に合わせて講義ノートを作成していることが多かったです。
そう言った講義ノートや、参考書に指定されていて良いと思ったものは今も手元に残っていますが、日本の大学で買った(買わされた)参考書は全部捨てました。何買ったかも覚えてないぐらいです。

ちなみにケンブリッジとオックスフォードに学部から入ると、講義よりもチュートリアルが中心、重要になっています。これは各カレッジに所属する大学の先生がチューターとなって、講義の後に開かれる個人講義のようなものです。詳しくはコリン・ジョイスの「なぜオックスフォードが世界一の大学なのか」という本がおすすめです。カレッジというのは説明が難しいですが、寮+学校みたいなイメージです。これについてはいずれ書こうと思いますが、この本の中でも詳しく書いてあります。

メリット2:先生のサポートが仕組みとしてある

日本の大学になかった制度ですが、学生一人一人に学部の先生がチューターとして割り当てられます。チューターというのは、授業で困ったことなどなんでも相談できる人です。授業でわからない点は講義を担当している先生か、チュートリアルの講師に質問しますが、チューターはもう少し役割が違って、進路の相談や、単に生活上の悩みなどを聞いてくれるような存在です。

日本の大学に入って戸惑ったのは、いきなりポーンと一人でやれ、というような感じになって、全然サポートする人がいなかったことです。同じ大学、学部に知り合いなどがいれば良いですが、どんな授業を受ければ良いのかも全然わからないし、とても困ったことを覚えています。しかも単位取得の仕組みがとても複雑で、必須科目からは何単位、〇〇科目からは何単位、合計何単位を取得しないといけない、ただし〇〇は何かの単位には加算されない、みたいな複雑怪奇な条件が揃っていました。
英語でしたが科目の選択はイギリスの大学の方が楽でした。分からないところがあれば、チューターに相談すると、もし将来的にこういう勉強がしたいなら、この科目とこの科目を今のうちにやっておいた方がいいだろうね、これはやってもやらなくてもどっちでもいいね、というようなアドバイスが受けられたからです。

メリット3:フェアに評価される

イギリスの大学では毎年6月あたりに厳しい試験があります。大変な一方、どの科目も講義期間中に出された宿題、小テストの結果と、6月の最終試験の結果で成績が評価されます。
「フェア」というとでは日本の大学では公平な評価がされないのか、ということになりますが、個人的にはそう感じました。

例えば、私が通っていた大学では過去問へのアクセスが、個人のネットワークの強さで異なっていました。知り合いがたくさんいたり、先輩のつてがある人ほど、授業の過去問がたくさん手に入りやすい、ということがありました。
イギリスの大学では大学内の生協みたいなところで過去5年分ぐらい誰でも購入可能でした。今ではホームページ上でもダウンロードできるようです。(こことかこことか

また、授業によって出席するだけで単位がもらえるとか、なんでもいいからレポートを出せば単位がもらえるとか、先生や科目によって授業の難易度が異なり、同じ卒業でもとても同じ評価とは思えませんでした。ひどいのは授業は出なくてもいい、最終のレポートのお題はこれで、これだけで授業の評価をする、というようなやつです。学生には大人気なのですが、そんな科目の単位を取って卒業した人と、きちんとした授業を取って真面目に勉強をして単位をとり卒業した人が、全く同じ評価なのには納得がいきませんでした。単位取得を簡単にしている先生も、自信が大学の卒業証書の価値を下げているという意識も教育者としての責任もないようで、腹立たしさしかありませんでした。

とはいえこれは大学生を受け入れる企業側も大学卒業時の成績を全く考慮しないなど、大学教育自体に何の期待もしていない、というような問題もあったのかもしれません。

イギリスでは6月の試験期間が始まる前1ヶ月ぐらいから、皆図書館に篭りがちになったり、寮や自宅で毎日ものすごい勉強をします。試験が始まると1日に2科目の試験を受けたり、2、3週間ぐらい試験が続くので、体力的にも精神的にもかなり辛い時期になります。

メリット4:全て英語でできるようになる

当たり前ですが、授業は英語で受けて、チュートリアルで議論をするのも英語、宿題も英語で書いて、英語でフィードバックを受ける。もちろん日常生活も英語で行う。特に授業や課題では自分の考えを英語にまとめて、文書にして提出したり、その場で発表したりするので、大変ですが全て英語でできるようになります。
就職してから英語を使わないといけないような場面でも、大学で苦労をしているのでできるようになっています。大学にそのまま残って研究者としてやって行くにしても、英語での発表や論文執筆ができるようになっています。

メリット5:成長のスピードが速い

講義のレベル・質が高いというのに似ているのですが、講義→宿題→チュートリアル→復習→予習というサイクルを毎週回していかないと授業に追いつかないので、授業について行くだけでぐんぐんと成長していきます。
しかもイギリスの大学では必須科目で1つでも落第点を取ると、進級できない=退学ですし、3年目の最終試験で良い点を収められないと、成績がFAIL(不合格)となって、3年の努力は無駄になり、卒業できません。そのため必死になって勉強をします。

メリット6:海外のいろんな国に友達ができる

留学するとわかるのですが、留学生同士というのは仲良くなる可能性が高いです。同じように言葉に苦労していたり、慣れない土地で苦労しているので、仲間意識が強くなります。なのでイギリスだけでなく、世界中から来た留学生と知り合いになれます。
これは日本にいるとなかなかできない財産で、特に田舎暮らしで海外との接点が1つもなかった自分にとっては、本当に一生の財産となっています。

もっとも海外に知り合いがいて何か具体的なメリットがあるのかと言われると、そんなにないかもしれません。個人的に一番良かったな、と思ったのは日本に居ただけではできない体験が海外の知人のおかげでできたことです。

留学中に友達と家を借りてシェアしていたのですが(これはイギリスでは普通のことです)、その中に中国人がいました。卒業後10年近く経った頃に、そいつが結婚するというので、中国でやる結婚式に呼ばれました。この結婚式がなかなか面白くて、中国では一般的らしいのですが、一生できないだろうな、というような体験でした。男性チームと女性チームに分かれ、男性チームは婿側で、女性チームは嫁側の家族と一緒になって、男性チームに無理難題をふっかけてきて、男性チームが協力し合い、その課題を解き、お嫁さんをもらえるように家族を説得する、というものでした。

こんな体験金払ってもできないな、と結婚式に参加しながら思いました。

留学のデメリット

一方で留学にもデメリットがあるのではないか、という疑問もあるかと思います。これは主にイギリス留学と、個人的な知り合いでアメリカに留学した知人からの見聞をもとに紹介します。

と言っても、デメリットというよりは、敢えて挙げるなら、強いて言うなら、というレベルです。私が日本の大学に通っていて感じたデメリットに比較したら、瑣末な問題でしかありません。

デメリット1:授業について行くのが大変

英語で授業が行われるのでそれだけで大変ですが、少し紹介した通り講義だけでなく宿題、チュートリアル、小テストなどやることはたくさんあります。
しかも必須科目は1つでも落とせば退学なので、かなりの緊張感を持って授業に臨まないといけません。
日本の大学って楽だったなー、あんなことに何か意味があったのかなー、というぐらい差が激しかったです。

ただこれはデメリットと言えるのか、よくわかりません。大学時代に遊んでいて何も身に付かず、就職前に焦る日本の大学の学生を見て、そっちのが大変なのではないか、と個人的には思いました。

デメリット2:就職するタイミングがずれる(帰国する場合)

卒業後そのままイギリスの労働ビザをとって就職する場合は別ですが、日本に帰国を考えている場合、一般的な就職活動には参加できません。また、授業が10月から翌年6月までなので、普通の日本企業の4月入社とはタイミングがずれてしまいます。
就職についてはまた別の機会に詳しく書こうと思いますが、留学生を別枠で採用している企業に申し込めばイギリスの大学を卒業したタイミングで就職できたりもします。

といってもすでに書いたように海外にそのまま残ってしまえば何の影響もないですし、日本でも外資系企業はいわゆる就職協定(企業が採用活動を始めて良いのは大学3年生の何月以降とする、という自主的なルール)を無視して優秀な留学生を別枠採用していたりするので、そういうところを目指せば何の影響もないです。

私の場合は海外留学生のための就職フェア(ボストンキャリアフォーラム、というのが有名です)に参加して、留学生を別枠で採用している外資系企業に就職しました。ただ入社したのが9月で、新卒の同期入社というのはなく、転職して入ってきた数人と一緒に入社説明を受けて、2日後から研修も何もなく普通に仕事を始める、という状態でした。なのでいわゆる同期のつながりというのがないです。

デメリット3:地元の友達とのつながりが疎遠になる(かもしれない)

海外に長く住むことになるので、夏休みなどに帰国すれば地元にいた友達と遊ぶこともできますが、やはり地元にいる時間が少ないので、友達付き合いが疎遠になるかもしれません。
これは日本の大学でも地方から、別の地域の大学に一人暮らしをして通う場合は同じなので、留学独自のデメリットではないかもしれません。加えて、やはり地元に帰って連絡をすれば昔のように遊ぶことはできるので、そんなに疎遠にはならないかも、という気はします。

まとめ

というわけで今回は個人的な経験から感じたイギリス留学のメリットについて紹介しました。次回はイギリス留学の費用について紹介しようと思います。


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