見出し画像

田舎の公立小中学校からケンブリッジに行った話 - その9

今回はイギリス留学後就職する人について、どのような進路があるのか書きたいと思います。イギリスに留学してそのまま博士課程に進み、研究職につく、という道もありますが、大学卒業後に民間企業に就職する、というパターンについて説明します。

留学生の就職活動について

どのような留学パターンかによっても少し変わります。まず交換留学や夏休みなどの短期留学をした場合について説明します。

交換留学・短期留学の就職活動

交換留学、短期留学の場合は日本で入学した大学を卒業する、というのが条件になるので、日本の大学に通う人たちが行う就職活動と同じになります。

私はやったことがないので詳しくないのですが、リクルートなどのキャリアサイトに登録して、就職活動解禁とともに会社説明会に参加し、エントリーシートなるものを入力して、面接に進み、内定を取るという仕組みです。多くの情報が存在するので、詳細は省きます。特に短期留学の場合は何も変わりません。履歴書などに短期留学したことをアピールするぐらいです。

交換留学の場合は少し事情が異なります。大学によっては少し制度が変わるところがあるかもしれませんが、イギリスに交換留学する場合留学終了時期が少しずれます。イギリスの大学は10月に学期が始まり、翌年6月に終わります。早い人は2年の途中から留学し、3年の夏休みに帰国します。3年の途中から留学し、4年の夏休みに帰国する人もいます。3年の夏休みに帰国した場合は、今だと解禁日が4年生の4月からのようなので特に問題はないです。(人事ZINEの情報による)。ただしこれは今後の就職活動の制度の変更によっては変わるかもしれないです。また、就職活動解禁日というのは経団連に入っている企業の紳士協定みたいなものらしいので、外資系企業はそんなのを無視して3年の途中から就職活動が始まっていることもあります。すると就職活動の流れに完全に乗り遅れてしまいます。

大変なのは4年生の夏休みに帰ってきた場合です。知人で何人かこのパターンの人がいました。一通り内定が出終わっているので、まだ採用活動を行なっている会社に応募することになります。人気企業はもう入れない可能性がありますし、他の学生に比べて数ヶ月の遅れがあるので、遅れを取り戻すだけでもかなり大変です。知人はかなり苦労していました。

中にはわざと留年して卒業時期をずらし、翌年から就職活動を始める、という人もいました。

イギリスの大学学士課程、修士課程留学

この場合2つの方法があります。まずは帰国して日本で働く場合、もう1つはイギリスにそのまま残り就職する場合です。さらにアメリカなど別の国で働く、というパターンもあると思いますが、これについて私は詳しくないので割愛します。

帰国して日本で働く場合

帰国する場合、イギリスにいながら日本企業とコンタクトを取り、日本企業と面接を行って卒業後の9月、10月から働く、ということになります。

まず大前提として、募集をかけている企業が留学生の採用枠を設けている必要があります。これはあまり多くありません。最近は増えているのかもしれませんが、私が就職活動をした2000年前後は商社、マスコミなどの業種ではどこも留学生採用をしていませんでした。もしこれらの業種の日本企業で将来働きたい、という人は留学を考え直したほうが良いかもしれません(多分留学してそんなところで働こう、という考えが残っている人はかなり稀だとは思いますが。。。)

留学生の採用枠を設けている会社は、留学生向けのキャリアイベントに参加していることが多いです。今でもおそらく大規模なのは、ボストンキャリアフォーラムです。同じイベント会社が、小規模ではありますが一時帰国中の留学生向けに東京でも行っていることがあります。参加企業数から見て最大規模なのはボストンです。イギリスにいる場合、学期中にアメリカに行く必要があります。

事前に履歴書をアップしておき、興味のある企業に登録しておくと、面接を事前予約できたりします。うまく行けばイベント期間中の夜に食事会に呼ばれたり、その場で内定が出たりすることもあるようです。また、2次面接に進み、今度は12月など冬休みに東京などで面接があって、内定が決まるという場合もあります。いまならZoomなどでオンライン面接もできるのではないかと思います。

そのままイギリスで働く場合

イギリスでも就職活動というのがあります。こちらは会社が大学にやってきてイベントを開催したり、直接会社に応募して面接に進むという場合があります。
よくあるのは、就職する前年の夏休みなどにインターンシップとして企業に入り、1、2ヶ月働くというものです。そこでうまく自分をアピールすることができれば、就職の採用面接に翌年進める、という仕組みになっています。

日本のインターンシップも変わりつつあるところだと思いますが、イギリスでのインターンシップは実際にある部署の一員として働きます。もちろんサポート的な業務が多いのですが、ソフトウェア開発などの分野だと、本当に会社で使われるプロジェクトをアサインされて、開発するということもあります。もちろん給料ももらえます。単に会社が提供したプログラムに数日間無給で参加するだけとか、日本企業によくありがちなインターンシップはないです。

1つ日本と大きく異なるのは、新卒と言えども仕事をやるだけの何らかの能力が求められる、という点です。最近ジョブ型雇用という言葉がメディアに載っていますが、イギリスも当然ジョブ型雇用です。会社が求めている業務要件があり、その業務をこなせる人材が求められます。

例えば経済学をやっている学生だと、金融機関の仕事に就くことが多いですし、コンピューターサイエンス専攻の学生だとソフトウェア開発の仕事に就くことが多いです。人文系の科目を専攻している場合、仕事の選択の幅が限られてしまうかもしれません。

また、同じ会社でも業務内容によって待遇が変わります。わかりやすいのがアクチュアリーです。アクチュアリーは保険会社などで保険商品の開発やリスク管理を行う専門職で、イギリスでは人気が高いです。ただし高度な数学、統計の知識が求められるため、なりても少なく、引く手数多です。保険会社の通常業務を行うポジションとして入社する場合と、アクチュアリー候補生として入社する場合、アクチュアリー候補生の方が給料が高いです。

労働ビザについて

イギリスに残って働く場合、それまでの学生ビザではなく労働ビザを取得する必要があります。私はイギリスで就職しなかったので、労働ビザについて詳しくは書けません。ただし周りの留学生でイギリスに残って就職した人を見ていると、通常は就職する会社がその辺りの手続きを行なってくれていたようで、そこまで心配しなくてもよさそうでした。

帰国すべきかイギリスに残るべきか:個人的雑感

私はボストンキャリアフォーラムに参加し、12月に一時帰国した際に東京で面接を行い、内定をもらって翌年の9月から日本で働き始めました。イギリスに残って就職することも考えましたが、最終的には日本に帰国しました。

振り返ってみると、イギリス、もしくはアメリカで何年か働いておけばよかったな、と思います。

1つの理由は、一度帰国してしまうとなかなか海外で働くのが難しいからです。外資系企業などで海外支社に転勤、というのは新入社員では難しいですし、そもそも機会が限られています。一度海外で働いてみて、あまり向いていないなと思えばいつでも帰国はできるし、帰国した場合でも海外で働いた経験はアピールポイントにもなるし、自分のキャリアを考える上では利点の方が大きかったと思います。

2つ目は、業種にもよりますが海外の仕事の方が面白いからです。これは現在GAFAで働いている経験から言ってもそうです。日本に本社がある大企業に勤めれば別だとは思うのですが、外資系企業の場合東京は海外の一支店でしかありません。重要なプロジェクトは海外の本社で行われることがほとんどです。人材もそうで、優秀な人は本社のある国に多いです。刺激的な仕事を求めるなら海外にいるべきだったな、と今では思います。

3つ目は、個人的に日本企業での働き方が合わなかったからです。就職活動中に日本企業からの内定ももらいましたが、いわゆる総合職として採用というもので、入社後何をやるのかもわからない状態でした。日本のメンバーシップ型雇用というものです。専門的な知識を身につけるためにイギリス留学したのに、その知識が活かせる業務につけるかどうかわからない、というので結局その会社には行きませんでした。その後日本の会社に転職したこともありましたが、働く時間は長いし、上下関係は厳しいし、なんでもみんな一緒にやろうとするし、窮屈で仕方ありませんでした。

これは個人的見解なので、全員が海外に残るべきだ、とは思いません。ただ留学して思ったのは、誰にでも向いている場所、そうでない場所というのがあって、向いている場所にいた方が人生は楽だし面白い、ということです。

田舎の生活も楽しかったですし、今でも地元の友達と会えば面白いです。ですが就職後もずっと田舎に残っていては仕事も限られていますし、いずれ外に飛び出していたと思います。
地元の公立中学校はいわゆる管理教育の権化のような場所で、あれはダメ、これはダメ、という具合で自分には合いませんでした。日本の大学にも行きましたが、授業も面白くないし、真剣に勉強している人も周りにそんないなかったし、成績もパッとせず評価もされませんでした。イギリスに行ってからは水を得た魚のように、質も高かったのか授業にのめり込んで、大学の先生にも評価されて、ケンブリッジの大学院に入ることもできました。

このように、向いている場所、評価される場所というのは、日本人でも案外日本にないのかもしれません。

まとめ

今回は留学生の就職事情について紹介しました。帰国して就職するか、そのまま海外に残るのかという決断をしないといけないのと、帰国する場合留学生向けの採用をしている企業なら就職もしやすいことを紹介しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?