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街を好きでいること

街に関する作品や情報がすごく好きだ。それは実際にある街でも架空の街であっても。

思い返せば、大学でも地域活性化に興味があります!みたいな理由で学科を選んで入ったが、「地元を?」「どこに活性化?」と聞かれると、「それは・・・」という感じで、はっきりしていなかった。

大学で、農家の人たちとお米を育てたことも、フィールドワークで他の地域に行くことも、災害復興のボランティアでその地域の人と交流することも、大好きな広島県尾道市で短期滞在をしてそこで暮らしているようなことをすることも、どれもその街に愛着が湧いて好きになった。とりあえず好きな街がたくさんあるみたいだ。



大学1年生のとき、尾道で1ヶ月宿の住み込みヘルパーをしたことがある。地理学を専攻していたり、もともと地図を見ることも好きだったりしたこともあり、坂や埋立地や商店街など地形がまず面白かった。あとは古民家を再生して暮らしたりお店をしたりする人もたくさんいて、温かい人も多く本当に大好きな街だ。(長くなりそうだからいつかしっかり書きたい)

そんな好きな街の、好きな本屋で『どこにでもあるどこかになる前に。〜富山見聞逡巡記〜』という本を見つけた。父が富山に単身赴任をしていたり、再開発の話題についても興味があったりして、この街のこと知りたいという気持ちが湧いた。


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筆者の藤井聡子さんは富山にUターンすると、個性が消えていく再開発や地方都市ならではの閉鎖感に直面する。その状況に私は地元鹿児島にいたときの、駅前商店街が衰退していく悲しさを思い出した。藤井さんはライターとして地元富山市のことを書くため、たくさんの人と出会っていくのだが、そこには色んな人の暮らしがあり、色んな場所の歴史があり、その分の人の想いがある。まだまだ街の面白さはあるのだ。その街のどこかに自分の心の居場所があって、みんな変化に向き合いながら、踏ん張りながら生活している。

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私が日本映画の中で多分一番好きな、『わたしは光をにぎっている』(中川龍太郎監督・2019)もその現実に通ずるものを感じた。松本穂香さん(本当に大好きな俳優)演じる主人公は、東京で新しい暮らしをすることになり、商店街の人と関わったり、銭湯の仕事をはじめたりと、自分にとっての楽しさを見つけていく。でもその街も区画整備がはじまって、その場所がなくなっていくことが知らされる。それでも変わっていくものにどう向きあっていくか考え、ちゃんと終わらせることを決意する主人公。居場所がなくなることは悲しいけど、「けれど自分はにぎっているいよいよしっかり握るのだ」(映画のテーマとなる山村暮鳥さんの詩『自分は光をにぎっている』)と、どんなに小さくても自分で見つけた光をにぎっていたい。

映画の主題歌『光のほうへ/カネコアヤノ』が本当にエンドロールにピッタリで、曲が終わるまで大好きな街の景色や場所と、特になにかすごいことができるわけではないけど自分にとっての光を抱きしめていたいという気持ちがずっと頭の中にあって、全てにおいて私にとってなくてはならない作品だ。



自分の好きな街に想いを馳せるだけではなく、小説に出てくる架空の街を想像しては勝手にワクワクすることもある。

吉田篤弘さんの本は私の本棚のほとんどを占めていて、熊本に住んでいたときや尾道に行ったときの好きな本屋で、吉田さんの本を買った帰り道は本当にニヤニヤしていると思う。吉田さんが作り出す小さな街の物語は、「暮らす」こと、「小さな日常」の楽しさを教えてくれる。かなり独特で空想的な街でも、実はどこかにあるんじゃないか?とまで思ってしまうほど惹き込まれている。

その中でも『それからはスープのことばかり考えて暮らした』は、一番読み返した小説だ。この物語の舞台になる街にあるのは、路面電車・サンドウィッチ店・小さな映画館・食堂…と、どことなく私が熊本にいるときに住んでいた街を連想させた。路面電車が走っていて、家の近くには個人経営のサンドウィッチ屋があり、その店には小説と同様温かいスープがある。そしてアルバイトをしていたミニシアター、友達がバイトしていた美味しいラーメン屋。直ぐ側にあるあたたかさが湧き上がってきた。今こうやってその時の暮らしを思い出すだけで、本当に恋しくなる。

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私がこうやって街と暮らしに愛着を持つようになったのは、

というか愛着を持っていたけど、それを素直に言葉にしたいと思うようになったのは、こうやっていろんな作品に触れてきたこともあるが、その中でも4人組バンドHomecomingsの影響がある。

Homecomings(以下ホムカミ)の音楽が好きになった理由と自分の街への愛着がつながっているのかなとも思う。


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小さな街、遠くに住む誰かの街、天気が良い日の公園、夕方の温度感、引っ越し、いろんな景色を想像させる作品がたくさんある。メンバー4人が暮らしや、行ったことのある街や好きなものを大切にし、それらを音楽で表現していて、日常を優しく包み込んでくれる。そういうことも影響しているのか、遠くの街に住む友人と手紙を送り合うようになった。自分が今住んでいる街はどういうところなのかとか、小さな出来事のことを書くことが楽しい。

ホムカミは、2018年度京都新聞のイメージキャラクターにも抜擢されていて、バンドが結成された街である京都への想いも、色々な場で感じられる。

改装される前の京都みなみ会館で撮影された『Songbirds』のMV

忘れないように記録しておくことも教えてくれた4人の音楽と共に、遠くにあっても大好きな街のことをずっと思い続けたい。

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私が今住んでいる東京の高円寺は、本当に面白い街だ。大好きな銭湯も呑み屋もたくさんあり、一人暮らしや家族など幅広い人が生活している。この街でやりたいことをやろうという人も多く、高円寺のフリーペーパーも作られている。心落ち着く行きつけの喫茶店もあるし、好きな銭湯の番台のおばあちゃんと話すことも楽しい。東京に来て友達はまだまだできないけど、街が楽しいからとりあえず大丈夫な気がする。

でもやっぱりいつかは熊本か尾道に住みたいし、地元の鹿児島も好きだし、これからもっと好きな街に出会うかもしれない。どうなるか分からないけど、とりあえず街に関する作品に囲まれながら、実際に暮らすことも、ただ妄想することも、地図を眺めたりすることも楽しみたい。

まだまだ触れたい本や音楽、外国の映画などあるけど、語りきれないからいつか第2段まとめたい。


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