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2021年8月23日 小松庵総本家 銀座 ≡ 森の時間 ≡ 講師 株式会社ゴープレミア 小松圭子さん

店主挨拶
小松庵のせいろは、蕎麦つゆの他にオリーブオイルを用意しています。つゆにオリーブオイルを混ぜたり、オリーブオイルに塩をかけたりします。今回はそのオリーブオイルを輸入している株式会社ゴープレミアの小松圭子さんにお話をいただきます。もちろんオリーブオイルの専門家でもあるので、いろいろ「ここだけの話」も伺えると思います。まずはじめに美味しいオリーブオイルの見分け方から。

■おいしいオリーブオイルのお話

小松圭子さん(以下、小松さん)
10年前からイタリアとスペインの会社からフレッシュなオリーブオイルを直輸入しています。イタリアは4社、スペインは1社と取引しています。輸入する方法は色々とありますが、なるべく新鮮な状態で日本に輸入したいので空輸便を使っています。

今回は4つの話をします。
歴史、製造工程、品質、そしてテイスティングです。

■オリーブオイルの歴史

小松さん
オリーブオイルの歴史は諸説ありますが、紀元前5000−6000年前から、地中海の小アジアから発祥しました。シリア、パレスチアに広まって、一方向はキプロス島からトルコ、もう一方はクレタ島からエジプトの二方向に広がったと言われています。クレタ島には樹齢5000年の大きな樹木があります。

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また、オリーブの木で作られた雑貨は年輪が出て美しくて人気です。日本のオリーブの木はまだ若いのでここまで年輪が出ません。オリーブの木のプレートは、パンやチーズをそのまま乗せて皿代わりに使います。嗅ぐとオリーブの木のいい香りがします。手入れは洗剤を使わずに、オリーブオイルでサッと拭きます。私は、いつかこのプレートに蕎麦を乗せて食べたいと思っています。

さて、日本にはキリスト教の宣教師が持ってきました。ポルトガル人の宣教師が持ってきたので、当時はポルトガルの油と言われていました。
日本で栽培を始めたのは明治41年、1908年です。目的は魚の油漬けを自給するために、三重、鹿児島、香川の3県でアメリカから輸入したオリーブの苗を育てました。その中で香川県だけは実を結ぶことができました。それが今の小豆島のオリーブオイルです。小豆島のオリーブオイルの歴史は古いのです。現在では、広島、岡山、静岡、福岡等でも栽培しています。

世界中では、オリーブオイルの実の種類だけでも2000種類から3000種類もあります。イタリアは470種、スペインは260種から270種。オリーブオイルを生産している国は世界で67カ国ありますが、栽培と生産している国は少し違っています。
最近のオリーブオイルの生産量のベスト5の国は、1位はスペイン。なだらかな起伏と平坦な土地を持つので広大な畑を持ちやすいのが特徴です。2位はイタリア。丘陵地が多くて、大量生産は向いてないけれど、品質がよく、州によってこだわりのあるオイルを生産しています。生産者はみな自分のオイルが一番と思っています。また、種類が多いのでブレンドにしても美味しいです。北の方では辛かったり、南の方は軽かったりという傾向があります。私も食べていない品種がたくさんあります。3位はトルコです。面積もそうですが、痩せた石灰地がオリーブの栽培に向いていて、夏は暑くて長いのがオリーブ栽培には絶好の風土のようです。4位のシリアも同様です。5位はギリシアです。温暖な気候、なだらかな丘で、古代から栽培されていて、今も盛んです。

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■オリーブオイルはどう作るの?

小松さん
そんなオリーブオイルの作り方です。オリーブは10月から12月の中旬くらいに実が収穫されます。
まず収穫の方法は、大きなクリップみたいなもので幹をつかんで、揺らしてボトボトと落ちてくるのを拾うか、傘の反対の向きのものを幹の下に置いて、幹を揺すって落ちるようにするか、櫛のような器具でしごいて落としたり、長い棒の先に回転する刃先があって、それを当てて収穫することもあります。
収穫の仕方でメリット・デメリットはあります。
いずれにせよ、おいしいオリーブオイルを作るポイントは、収穫した実を工場に早く運ぶことです。実は枝から離れた瞬間から酸化が始まります。収穫したばかりの実はホカホカと熱を持っているので、それ以上暖まらないように、だいたい2時間以内に工場に運ぶのがとても大事だそうです。自社に搾油工場がない所は、近隣の搾油所へ運ぶこともあります。工場まで実の温度を上げない様に運ぶ事もおいしさに影響します。
収穫の緑色から紫がかったものが主流ですが、フランスでは黒く熟したものが搾油されています。国の好みが出ています。

次が<選別>。葉や枝などの不純物を落とします。そして実を洗浄粉砕→練りこみペースト状に(コールドプレス)します。工程をおおよそ
30分から40分で終わらせるのが望ましいと言われています。
そして<搾油・分離>ですが、ペースト状のものを遠心分離機にかけて水分と油分に分け→<濾過>→<貯蔵保管>清潔なステンレスのタンクに入て、温度管理して、数ヶ月寝かせます。タンクが清潔である事も大切です。
寝かせると澱が沈んで、上の方がきれいな上澄みのものがオリーブオイルとして瓶詰されます。それがエクストラバージンオイルです。

10月くらいにノヴェッロという、摘みたて、搾りたてのエキストラバージンオイルが出回ります。これは収穫したてのものを、濾過せずにすぐに瓶詰めしたものです。色は緑色で、濾過していないので濁っていて、沈澱もあります。搾りたてのフレッシュさを楽しむもので、賞味期限は1カ月ととても短いです。手に入れたらすぐに使います。濾過してないので、どんどんすぐに味や香りが変わってしまいます。1年に1度のお楽しみのオイルです

■オリーブオイルの品質はどこで見るの?

小松さん
エクストラバージンオリーブオイルには、国際オリーブ理事会というIOC協会で決められた品質規格があります。酸度と言って、発酵の度合いを決める数値基準があります。
エクストラバージンオイルは酸度が0.8%以下。
バージンオリーブオイルは、0.8%から2%。
工業用のランパテバージンオイルは3.3%超えで食用にはできません。
よく耳にする名称は、エクストラバージンオイルとピュアオリーブオイルだと思います。

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ピュアオリーブオイルとはどういうものか、作り方をお話します。
エクストラバージンオイル以外の食用油を溶剤を使って脱色脱臭します。精製してしまうので、栄養価や風味は失われてしまいます。その精製されたオイルにエクストラバージンオイルをほんの僅か加えたのが、ピュアバージンオイルです。精製されたオイルはいろいろなものがブレンドされているので、品種の確定も難しいのです。

いいオイルの話をすると、エクストラバージンオイルの栄養は、オレイン酸、ポリフェノールも豊富で、体にいいとされています。
善玉コレステロールには影響せず、悪玉コレステロールだけを減少させる効果を期待できると言われていて、便通や子供の骨の育成にも影響があると言われています。微量ですが、ビタミンA、D、E、Kが含まれていると言われています。

とても高価なオリーブオイルが透明ケースの中で飾られていることもあります。ただ、オリーブオイルはスポットライトや陽の光に弱いのです。どんなに遮光性の瓶の中に入れられていても、日光でケースが高温になるのでオイルには良くないことです。ですから購入するときは、ライトが当たってないであろう場所に置いてあるものを手に入れた方が良いです。
食品店でありがちなのは、オリーブオイルの輝く黄色を見せるために窓側に置いてある事もありますが、これでは、元の質は良くても劣化が進みます。それくらい、陽の光に弱いのです。

最近はペットボトルに入っているオイルもあります。遮光性の瓶のように似せているものもありますが、ペットボトルは目には見えないけれど、微量の空気を通す為、劣化の問題が気になります。
何をその商品を求めるかですが、一般的にはオリーブオイルは体にいいから求められると思います。だから、工程から考えると精製されたものはそういう目的では期待できないかなと思います。
調味料は嗜好品なので、これでなければならないことは一切ありません。私たちのような輸入社は、どのような生産者から買い付けているのをホームページなどで情報を提示しています。その情報を、ぜひ見ていただけたらと思います。いろいろと吟味してからご購入いただけるといいのかな、と思います。

■テイスティングのやり方

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小松さん
お話は、ここまでで、テイスティングに移りたいと思います。
まずはテイスティングの仕方をお話しします。

最初に、オイルを入れた容器を手のひらに置いて人肌くらいに温めて、もう一つの手で蓋をします。

それを鼻のところに持ってきて、まず匂いを嗅ぎます。

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それから、少量のオイルを舌の上に置いて、「ズズっ」と空気と一緒に吸い込みます。
次のオイルに行く前に、水を飲んでリセットしましょう。
次のオイルも同じようにテイスティングをします。

小松庵でお使いいただいているのはスペインのエストレマドゥーラ州で生産されています。
エクストラバージンオイルの使い方として、私は鶏肉の調理前にオリーブオイルを揉み込んでいます。こうするとお肉が柔らかくなります。

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参加者
このオリーブオイルは喉がピリピリするのはどうして?

小松さん
それがポリフェノールです。
栄養価が高いのです。若返りの要素もあると言われています。値段が高ければいいというものでもありませんが、品質の目安になります。2000円前後のものは原材料がしっかりしていると思います。

揚げ物の油にピュアオリーブオイルを使ったとしても、最後にエキストラバージンオイルをかけるだけで違います。50代過ぎると健康診断などで栄養指導の先生から、バターをやめてオリーブオイルに変えるようにと言われる人もいるかもしれません。
そんな人は、今日お話ししたことを心に留めておいて選んでいただけるといいと思います。

本日は、オリーブオイルのお話のごく一部分をお話ししました。まだまだ深い話はたくさんあります。

今回テイスティングしたオイルは、オリーブの品種で言えば、スペインのエストレマドゥーラ州で採れたものです。
同じ畑で採れても色々なランクのものがあります。原産地呼称保護の制度がありまして、DOPと省略されます。栽培、生産、瓶詰めまでの全てが生産地でされているもので、このマークが付いていると確かな品質のものです。いろんな食品にDOPマークはあります。例えばチーズ等。

あとは、緑のマークで「ビオ」いうEUのオーガニック認証のマークがあります。

一定以上のランクになれば、あとは自分の好みで選びます。
オーガニックが好きだからビオタイプを選んだり、喉にピリっとするのが苦手ならフルーティな味わいのタイプを選ぶといいでしょう。

今から飲むのは、フルーティなタイプです。
イタリアのトスカーナ地方のオイルにはテイスティングをするだけでむせるくらい辛いものがあります。ピリ辛に感じる理由は、フレッシュなことと、ポリフェノールが多いからです。
そういうオイルは、ヨーグルトに混ぜて食べてもいいですね。産地の人に何にかけると美味しいのか聞いたら「うさぎの肉」と言われました。臭みのあるような肉にかけても負けないほどオリーブオイル自体に深い味わいがあります。

小松庵銀座、小池(以下、小池)
社長からオリーブオイルと蕎麦を合わせられないかと提案されましたが、オリーブオイルのことを知らなかったので、どうしようかと思って小松さんに相談しました。その中で、つゆとオリーブオイルの相性やバランスを考えたときに、つゆの邪魔をしないし蕎麦との相性も良いオイルを選びました。

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小松さん
どういう食材にどのオリーブオイルを合わせるかは味を追求されている方に選んでいただくのがありがたいです。

小池
ミントとチリのオイルも使っています。クルミごまだれにピリ辛のチリオイルを使って、アイスにはミントオイルです。
このミントオイルはオリーブオイルなのですが、ほぼミントです。

小松さん
いろんなオリーブオイルの作り方があって、練り込みの工程で皮を一緒に入れることもあります。このメーカーは、タンクの中にドライのものを入れて、自然に香りが付くのを待ってボトルに詰めています。だから人工的な香料を一切使っていません。ミントオイルは、蕎麦のアイスのもったりした味にちょうどいいです。

参加者
質問があります。
いいエキストラバージンオイルをいただいたときに加熱しないでね、と言われるのですが、どんな使い方をすればいいのでしょうか?

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小松さん
炒め油として使っていけないわけではなく、もったいないという意味でそう言われたんだと思います。いいオイルはもったいないからチビチビ使うかもしれませんが、どんなにいいオイルでも開封すると酸化は進みますので、じゃんじゃん使ってください。目安としては3ヵ月以内。
茄子やエリンギはとてもたくさんの油を吸うので、調理するときは食材を切ったら、オイルを揉み込んでから加熱するといいと思います。素材も柔らかくなりますし、必要以上に油を吸いません。
私の経験上、イタリアのトスカーナ州で作られているようなスパイシーなオイルは加熱するとえぐみが出てきます。最後にさっとかけるのが風味もよく仕上げられるかなと思います。

小池
ピュアオリーブオイルを加熱して調理して、最後にいいオイルをかけます。熱をかけるとオイルのいい香りがなくなってしまいますので、最後に加熱せずにかけます。

小松さん
あと、1つ、現地で今起きていることをお話しします。
エキストラバージンオイルには、いい品質で人気のものがあります。だからレストランでは、外側の瓶はそれを使い、中身を入れ替えることが起きていました。だから現地では厳しく取り締まられていて、入れ替えられないように、注ぎ口が入れ替えられないようなタイプを使われています。いろいろな工夫がされていますが、下にビー玉が入って入れ替えられないようになっているものもあります。

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次回以降で、品種の違いによる味の違いなどをご紹介したいと思います。
テイスティングでは、ウチで取り扱っているイタリア産のオリーブオイルを持ってきます。実の種類の違いで、まるで味が変わりますのでそれを楽しんでいただけるかと思います。
今回はありがとうございました。

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