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2023年6月2日 小松庵銀座 森の時間|画家・梅﨑弘さんトークショーPart II

6月2日(金)銀座ギャラリータイム「森の時間」は、画家の梅﨑弘さんをお招きしトークショーPart IIを開催しました。梅﨑弘展「光と風」は6月4日(日)までとなり、締めのお祝いを兼ねて2回目のトークを行いました。梅﨑弘さんの作品に度々登場する石碑モチーフと深く鮮やかなブルー。その独特で印象的な画風のきっかけとなったヨーロッパ、北ポルトガルの思い出を語っていただきました。

野宿や居候をしながら過ごした
ヨーロッパの6年間

1989年春、画家の道を探すため一大決心をしました。仕事を辞め家財道具を全て処分し、3歳の息子と妻を連れて3人でヨーロッパへ向かいました。
最初に訪れたのはモロッコ。現地の子供たちは観光客を見つけると寄ってきて、ガイドをすると言ってついてきました。旅慣れないことで余裕がなく、断り続けましたが、せっかくだからガイドしてもらえばよかったかな。
道を聞けば「教える代わりにそのカメラを差し出せ」と言われたり、もちろん正直な善意の人もいましたが、その時はすっかり人間不信になってしまいました。
モロッコを離れ、パリ、南スペインと旅をし、北ポルトガルの国境近く山間の秘境と言われたサン・ジョアン・デ・カンポを訪れました。そこで牧童と知り合い、3歳の子供を肩車しながら共に山羊を追いかけ、山を登ったりして過ごすうちに、村人たちから、面白いやつだと思われるようになりすっかり打ち解けていました。
小さな村に噂は広がり、ここが気に入ったのならとテントを貸してくれる人まで現れましたが、なぜかうちに泊まれとは言ってくれないんですよね。
湖のほとりには様々な国の人がテント生活をしていました。とても芸達者な人達で、焚き火をするとみんな集まり、ギターや笛、ハープを持ってきて演奏会を始めます。日中は湖で泳ぎ、夜は焚き火を囲んで朝まで過ごす、そんな日々がとても気に入り、テントを借りて数週間滞在することにしました。

北ポルトガル サン・ジョアン・デ・カンポ

忽然と姿を現した村
ビラリーニョと山の民

その湖は実はダムで、訪れた時は数年に一度の渇水期。水量が日に30センチほど減っていき、ダムの底に沈んでいた村が少しずつ現れたのです。
「まさか村が沈んでいたなんて…」徐々に青く澄み切った湖に姿を沈め、水面下へと続いている村。その村跡を見て、これはなんだと心を鷲掴みにされました。
その村はビラリーニョ、村人は山の民と呼ばれていました。200メートルの深さのダムに沈められた村ビラリーニョは、独裁者サラザール政権に唯一異論を唱えていたといいます。多くの人々の利益となる水力発電のために、山の民の村はダムの底に消えることに。今となっては真相は誰にもわかりませんが…。

湖の底から忽然と姿を現したビラリーニョの村跡

貧しくも助け合って生きてきた、山の民の魂を伝えたいという熱い想いが込み上げ、ただ夢中でスケッチをしました。このような偶然と奇跡が重なって、私は作品のテーマを見つけたのです。以来、画家としての有るべき姿と使命を感じ夢中で絵を描いてきました。
各国のポルトガル大使にこの話をすると、大いに共感を得ることができ、ポルトガル大使館の協力で、カナダやベルギーをはじめ各国で個展を開催できました。
多くの人々の支えで海外展ができ、これまで絵を描き続けてこられたのは、北ポルトガル、ビラリーニョとの出会いに他なりません。

夢中でスケッチをした当時の梅﨑さん
石碑のモチーフや深いブルーが印象的な梅﨑さんの作品

PROFILE
梅﨑弘(うめざきひろし)
1955年 福岡県大牟田市に生まれる。
1981~1982年 第一回目渡欧。   
1989~1995年 第二回目渡欧。
1990年 ルクセンブルク王室百年展、壁画 舞台美術などのアートプロジェクト参加
■EXHIBITION■
2023・個展 ギャラリーエスプリ(大牟田/福岡)
2022・個展 ギャラリー風(福岡/福岡) 2019開催
2018・個展 ギャラリー・オカベ(銀座/東京)
2004 ,2006, 2008, 2010, 2012, 2013, 2014, 2016, 2018, 2020企画展開催
2017・個展 宮部の森美術館 (大牟田/福岡)2014, 2015, 2016開催
・Gois国際交流作家展に招待出品(ゴイシュ/ポルトガル)1999年より毎年
・フランス・ベルギー国際交流芸術祭(ブルージュ/ベルギー
2013・アートinレジデンス・エストニア EUジャパン財団協賛(5~9月)
・個展 エストニア国立図書館ギャラリー(タリン) エストニア国立近代美術館招聘
・GalleryBIJ Krepel Salon Europeen Aux Pays-Bas A Klarenbeek(オランダ)
・LE MÉRITE ET DÉVOUEMENT FRANÇAIS銀賞受賞
2012・第一回 炭都国際交流芸術祭in大牟田 実行委員長(以降毎年)
後援:朝日・読売・毎日・西日本・NHK福岡
・九州青年美術展審査員(以降毎年)
2010・個展 ギャラリー・キクオカ(名古屋/愛知)
2009・個展 読売新聞西部本社・エントランスホール(福岡市) 
後援 在日ポルトガル大使館 
2007・個展 福岡市美術館 特別展示室B (福岡市/福岡県)  
後援:在日ポルトガル大使館/福岡県/毎日/読売/西日本
2004・個展 あすなろホール(下諏訪町/長野県)
後援:ポルトガル大使館/下諏訪町/信濃毎日新聞社/長野日報社                                                       
2002・個展 ポルトガル大使館ギャラリー(東京) 主催:ポルトガル大使
2001・国際交流作家選抜展に招待出品(ビゴー/スペイン)
1999・リスボン市現代アート50人国際交流作家展に招待出品(ポルトガル)
■COLLECTION■
○Portugal:ORIENT財団/青少年財団/AGUA美術館/ビラリーニョ博物館/他
○France:クルクリ市 ○Luxembourg:在ルクセンブルク 日本大使館  
○Belgium:(株)丸紅ベルギー 〇Estonia:在エストニア日本大使館 ○Venezuela
〇日本:ホテル・ウエルビューかごしま/R&RCorporation/東急建設/他多数収蔵

あいにくの悪天候でしたが、たくさんの方が集まりました

人生をかけて情熱を持って取り組んでいくこと、それは職人の仕事も同じです。こだわりと誇りを持ち挑戦し続ければ、きっと何か新しいことができるでしょう。
銀座ギャラリーを始めてから、そこに集まってくる人、画家、音楽家、落語家など様々なジャンルの方々との繋がりができました。
「森の時間」は様々な分野の職人、アーティストが集まりひとつになれる場所として、これからも発信していきたいと思います。

小松庵総本家 銀座 森の時間(平日16:00〜17:00)は展示してある作品をじっくりご鑑賞いただける、ギャラリー・タイムです。(この時間はお食事の提供はしておりません。)
今後も不定期でワークショップやトークショーなど様々なイベントを企画していきます。お気軽にご参加ください。
小松庵総本家 銀座(Tel. 03-6264-5109)

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