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脚本術とコツのコツ

どの脚本術の本にも最初に書いてある事だと思いますが、

脚本の基本は「人物の心をセリフで説明しない」、つまり「説明台詞を書かない」。基本ですが体得するのは非常に難しい。

書いている最中は、主人公とヒロインがこうなってああなってこうなると「面白い!」 と夢中になってしまい、ついその基本を忘れます。というか説明台詞を書いても気が付かない。「面白い!」の感情が、ささいな台詞のひとつひとつより勝ってしまうから。

もう一つ、「ストーリーの都合に合わせて人物を動かさない」、つまり「ご都合主義にさせない」。これも基本ですが体得するのが難しい。

書いているときは、ストーリーの素晴らしさで熱くなり「素晴らしいストーリーだ!」という感情が、人物ひとりひとりの描写より勝ってしまうから。

その脚本を人に見せると、評判が悪い。こんなに面白くて素晴らしいストーリーなのに! という感情になり、説明台詞が多いとかご都合主義だと言われても腑に落ちない。で、半年間放置して久々に読み返してみると、「これは……ダメだ」と気がつく。冷静に客観的に見たからですね。ここで、ほんの少しだけ成長します。

では、効率的に飛躍的に成長するには? と考えるのが、コツです。

すると出てくるのは、書いて失敗したと知り客観的に見る、というサイクルを短く早くすることです。

短いサイクルで失敗する


僕は大学生の頃、石森史郎先生(大林宣彦監督作品などの脚本家)の私塾に通っていました。課題があり、テーマを提示され、ペラ20枚の短い脚本を書いていくのですが、締め切りはなく、出すも出さないも自由。僕は必ずすぐ出しました。だって周りの塾生に勝ちたいから。

で、提出した脚本をみんなで読んで、最後に先生が、「私ならこう書きます」とその場でホワイトボードに解説しながら即興で書き直していくのです。これは単純にすごい! と思いました。で、結果、自分の脚本をその場で書き直して完成させちゃうんです。

そうなるともう、負けがはっきりして、反省して、「これは、ダメだった」とすぐに客観的に自分の脚本を見ることができます。これを短いスパンで繰り返した二年間。

効率的に成長するためにそこへ通った訳ではなく、今思い返せば何となくコツを掴んでいてその環境がたまたまあったという偶然があったのですが。

映画制作も同じ

ちょい戻りますが、脚本の基本を体得している状態とは、書きながらも客観視できている状態で、結構つまらないです。物理とか数学の勉強みたいなものです。でも、完成した時の達成感はあります。マラソンですね。

映画もそうです。低予算短期間で三年間で10本。作っている時や作った直後は熱くなってるのですが、グランプリを獲れなかったりして反省してのちに客観視する。

大学卒業から諸事情で10年間映画をお休みしたからこそ、すごく冷静な客観状態になっていたから、復帰作『食卓』が成功したんだと思います(PFFアワード2016グランプリ、それのおかげでスカラシップ作品、映画『猫と塩、または砂糖』で劇場映画デビュー)。

映画の基本は脚本で、脚本の基本は先に挙げた2つ、その2つさえ体得できればほぼプロレベルだと言っても過言ではないぐらい重要な基本。基本を重要だと本当に思う事もコツですね。

体得したら、映画の場合は、自分が監督じゃないと成り立たない映画こそ価値がある、という点は大切かなと思います。だから、あえて、無駄なシーンを入れてみるとか、崩してみる。そのシーンは趣味嗜好でいいんです。あくまで、映画の脚本がちゃんとした上で、崩したり、無駄を入れる。

コツのコツ

もっというと、コツは、何事にもコツがあるはずだ、と確信する事ですね。

僕は幼い頃からずっとゲームが好きで、どんなに難しいゲームでも、コツさえ掴めばクリアできた。ゲームをクリアする事はつまりコツをつかむ事だと確信していました。

某格闘ゲームの全国大会で準決勝まで行ったり、某レースゲームで全国トップテンに入ったり。かなりゲーマーでした。

試験勉強も同じ

試験前の勉強にもコツがあります。

人は、覚えた事を一度忘れて、覚え直す事で、短期記憶から長期記憶になるそうです。と、僕は中高生の時に知っていたので、定期試験前に勉強のコツとして実践していました。

8科目あれば、1科目に一度に多くの時間を割いて一気に覚えようとせず、8科目を短いサイクルで一通り目を通して覚えて、次のターンの時に何を忘れているかをチェックし覚え直し、また次のターンで忘れているものをチェックして覚え直し。最終的に全部が長期記憶に移行するという訳です。

ざっと一通り浅く覚えて、一度忘れる。というのを意図的にやる事で効率的に長期記憶へ移す、つまり覚える事が完了する訳です。


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