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お肉と観光と、アフターコロナ。


牛1頭分のお肉が、8分で完売する。


 信じられますか?量にして430kgのお肉が、焼肉用やステーキなど1,000個ほどの商品となり、たったの8分で完売する。これは、どこぞの有名焼き肉店のはなしでは、ありません。
 兵庫県の但馬地域で但馬牛(たじまうし)という和牛を育て、販売されている田中畜産さんの専用通販サイトであった、本当のおはなし。

 私も以前、田中畜産さんからお肉を購入させていただいたことがあります。さすがに8分完売ではありませんでしたが、その時も、もう争奪戦!お肉の奪い合い!通販サイトで、こんな手に汗握る経験は初めて。笑 

 カートに入れてた商品が、いつの間にか居なくなり、決済しようとしたら、今度は別のお肉がカートから消えていく…。そんな苦労の末、手元に届いたお肉の味。思い出すだけで、いまでも耳の下がぎゅぅっとなります。
 今回、購入できたみなさん、本当におめでとうございます…!こんな時だからこそ、家庭の食卓が、華やぎますね。


美味しいお肉をみんなが求めてる。 

 先日、日本政府観光局(JNTO)が発表した2020年3月の訪日外国人旅行者数は、前年同月比93%減、インバウンドのみならず、国内旅行需要も、ほぼ止まってしまっているので、ホテル・旅館、旅行会社をはじめとする観光業界は、言わずもがな大打撃を受けています。
 観光産業は、よく裾野の広い産業だと言われていますが、田中さんのブログによると、インバウンド減と飲食店の自粛営業により、高級部位が売れず、枝肉価格が暴落するなど、じつは和牛業界にも、大きな影を落としているとのこと。お肉が売れていない、動かない。インバウンド政策が、和牛業界にも浸透している嬉しさの反面、負の影響もまた、大きいことを実感しました。

 でも、そんな状況下でも、たったの8分で牛1頭分のお肉が完売する。
 あっという間に、売れていくお肉を、目の当たりにして、田中畜産さんは「美味しいお肉をみんなが求めてる」と、感じたそうです。そう、こんな状況下でも、ニーズは確実にある、と。
 私は、これってどの業界も同じだなって、思ったんです。


お肉も、観光もニーズはある。 


 そしたら、観光はどうだろう?今回のことを観光産業に置き換えて、私なりに考えてみました。
 お肉と観光が違うのは、ニーズがあっても、いま観光はアクションに移せない、ということ。買いたくても、買えない。行きたくても、旅行に行けない。

 観光の場合、旅したい気持ち(ニーズ)が潜在的にあっても、今は動けないから、顕在化していないだけ。でも、ニーズはそこにある、確実に。アクションに移せないから見えないだけ。でも、旅したいというニーズは存在する。
 むしろ、その時がきたら、その気持ちは爆発するかも知れない。
下記の記事によると、Pacific Asia Travel Association(PATA)などが、中国の消費者1,200人以上を対象に実施した旅行意識調査によると、パンデミックが終息した場合、2020年中に旅行すると回答した割合は60%だったそう。
 また、現に中国では、国内旅行がすでに解禁され、一部の観光地にマスクをした観光客が押し寄せごった返しの状況とも。逆に、感染再発を恐れて、人がいるところを避け、むしろ旅行需要は回復しないのでは?という見解もあるけれど、中国のこのような動向を見る限り、恐らく、旅行需要は、持ち直していくのでは?と想像できます。


「いまは誰も来ないから」、「あの人は、特別だから」、「うちはインバウンドの取り扱いがもともとないから」「会社が倒れるかも知れないのに、そんな先のこと考えられない」
 見えないが、確実に存在するニーズを、観光産業は、どう受けとめるのか。旅人の気持ちは、置いてけぼりになってしまうのか…。



いままで通りでは、いられないかも知れない。
 

 また、別の角度で、もうひとつ感じたこと。
アフターコロナに、果たして今までと同じビジネスモデルで通用するのか?ということ。
 
 コロナは、ビジネスだけでなく、私たちの生き方、暮らし方、働き方、それらに付随する諸々の価値観、…いろんなものを、この短期間で一変させました。そこからは、すでに新しいサービスやビジネスも生まれているけれど、それらによって、今後、旅の形態だって、スタイルだって、旅に求める価値観ですら、変わっているかもしれない。
 分かりやすい価値観の変化としては、「衛生面での配慮」。宿泊施設の客室などの除菌・消毒対応の有無、またそれらの情報発信など、これまでなかった対応が、当たり前になってくるかも知れない。



 コロナが過ぎ去れば、お客様がまた戻ってきてくれると期待して、ただ待っているのは、違うのではないだろうか。
 もしかしたら、あなたのところに戻ってきてくれたお客様は、これまでと全く異なる価値観を持つ、「あなたの知らないお客様」に、なっている可能性だってある、ということ。

 そんななか、観光産業でポストコロナを見据えて、未来に向かって動いている経営者さんが、こうしていること。それはわたしの希望でもある。
 いつか、思いっきりみんなが旅できる日が、来ますように。