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小説|ため息はシャボン玉に
バスで家へ帰っているとき、あなたはため息をつきました。窓の外を流れる街は夕焼けでオレンジ色に染まっています。きれいに見えてもよいはずの景色を、眺めるともなく眺めながら、もう一度ため息をつきました。
「次は、ずっと前。ずっと前です」と運転手さんのアナウンスが車内に響きます。聞き間違いかと思い、あなたは電光掲示板に目をやりました。たしかに「ずっと前」と表示されています。思わず、降車ボタンを押しました。
バスから降りると、バス停のベンチに子どもが座っています。顔に見覚えがありました。幼い頃のあなたです。グリーンの吹き具をくわえており、そっと息を吹き込むと、小さなシャボン玉が二つ、三つと浮かびました。
「やる?」とあなたは誘われます。うなずいて、となりに座りました。シャボン液に先を浸して、あなたはため息を吐くように、吹き具を吹きます。昔は難しくてつくれなかった、大きなシャボン玉が夕色にきらめきました。
ショートショート No.35
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