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万葉の美女 手児奈(てこな)霊神堂

水面に浮かぶこの世ならざる美女。ジョン・エヴァレット・ミレーをはじめ多くの画家が題材としたオフィーリア。ハムレットの恋人であるが悲劇に見舞われ入水してしまう。

美人薄命というけれど、ヴィーナスや人魚姫をはじめ水と乙女のイメージは人々の心をとらえ続けてきた。ここ日本には「真間の手児奈」の物語。万葉集に謳われ、雨月物語や江戸名所図会にも伝えられている。

その昔、真間(現在の千葉県の市川市)にとても美しい乙女がいた。貧しいため青い襟の麻の衣をまとい、髪もとかず素足であった。けれど、月のように輝く優美で繊細な面差し、微笑めば花のように匂い立つ艶やかさ。

「どんな錦をまとった都の女より美しい!」と村人はもとより、都の役人や隣国の人も想いを寄せ、争った。心清らかな少女は、

「たくさんの人に想われても、その想いに応えられない」

と思い悩み真間の入り江に身を投げてしまう。

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名称未設定

(出典)江戸名所図会 20巻 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/994949

時は流れ、真間を訪れた行基は堂を建て、薄幸の美少女は女神として祀られるようになった。この手児奈霊神堂、千葉県の市川駅から徒歩20分、バスを使えば徒歩10分の場所。永井荷風も居を構えた閑静な住宅街にある。

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門をくぐり霊堂へ向かう。参道脇にも民家が軒を連ねている。境内の池は手児奈が海の泡と消えた入り江の名残であるという。今ではのんきなカルガモが午睡を楽しんでいる。

お社の狛犬は丸いフォルム。

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少し足を伸ばし国府台(こうのだい)。江戸を一望できる名所として聞こえた場所。江戸川をパトロール中の野良猫は福々と毛艶が良い。険しい目つきが刑事感。張り込み中か。

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帰りは市川駅のそばにあるヤマザキパン直営レストランでランチとしよう。

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