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【イベントレポート】PLAZMA D2C|「お菓子」を「おやつ体験」へ昇華させるsnaq.meのこれまでとこれから。

「D2Cをビジネスモデルとして理解する!」をテーマとしたオンラインイベント『PLAZMA D2C produced by 株式会社顧客時間』が、2020年12月9日-10日の2日間、開催されました。D2Cブランドや、事業のD2C化を実践する大手メーカー担当者をゲストに招き、各社のD2Cビジネスの真髄に迫る内容となりました。

その中から今回は、美味しい&健康的なおやつのサブスクリプションサービス「snaq.me」のセッションについてご紹介します。

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〈ゲストプロフィール〉
服部 慎太郎 氏|株式会社スナックミー 代表取締役社長
1981年生まれ。慶応義塾大学大学院修了後、日本総合研究所、ボストン・コンサルティング・グループにてコンサルティング業務に従事。その後、スタートアップを経て、ディー・エヌ・エーにてベンチャー投資業務を約2年間行う。2015年9月に株式会社スナックミーを設立。2016年3月よりおやつ体験BOX「snaq.me」を提供開始。
〈モデレータープロフィール〉
風間 公太 |株式会社顧客時間 チーフプランナー / 広報統括
音楽学校や劇団四季での広報・宣伝担当を経て、2007年良品計画入社。コミュニケーション担当として、日本での企業ソーシャルメディア黎明期から無印良品公式Twitter、Facebook、Instagram、LINEアカウントを開設し、500万人を超えるフォロワー/ファンの窓口を一手に担う。他にも、モバイルアプリやグローバルブランディングなど、無印良品のデジタルマーケティング全般に携わる。2019年、顧客時間に参画し、事業会社のDXや新規事業開発を支援。また、ソーシャルメディアスペシャリストとして企業アカウントの運用支援も行なっている。

中身が選べないから、新しい出会いがある。おやつ体験BOX「snaq.me」の不思議な魅力

服部氏:「snaq.meは100種類以上あるおやつを、ひとりひとりにパーソナライズして月に8個ずつお届けするサブスクリプションサービスです。2021年3月でスタートして5年を迎えます。マルシェで売っているようなおやつを身近に買えるようにしたかったので、最初は実際にマルシェで買ってきたおやつを詰め合わせたBOXを送っていました。オリジナルパッケージも無いところからのスタートでした」

風間:「お菓子のような低単価の商材はECには不向きと言われがちです。なぜお菓子だったのでしょう?」

服部氏:「事業視点だと単価が低くかさばるおやつがECに向かないのは理解していました。ただ、どうしても自分自身が欲しいサービスだったので、どうすればECで実現できるのか?の発想で設計しました。ポスト投函であれば送料が抑えられるなど、成り立たせるための方法を探すことにしたのです」

風間:「価格設定についてのこだわりはありますか?決して安くはないですよね」

服部氏:「価格は何度か変わっていますが、現在は8個で1,980円。1個あたり250円で、コンビニスイーツと比べても高いのですが、お客様はお菓子を買っているというより”自分向けに届くBOX”として買ってくれています。お仕事を頑張った帰りにカフェに寄ったり、スイーツを買って帰るような単価感・ポジションであるために、今の価格にしています」

風間:「なるほど。有名店のスイーツなどと近しい存在なのですね。単に美味しいお菓子ではなく、自分のためのBOXが届く体験の楽しさが魅力なのだと感じます」

データが自然に溜まる「自分のため」のフィードバックの仕組みでパーソナライズを実現

風間:「もうひとつ、ユーザーフィードバックから生まれるレコメンドの絶妙さもsnaq.meの魅力です」

服部氏:レコメンドに基づくパーソナライズがサービスの特徴です。常時100種類以上のおやつがあり、最初に答えていただくアンケートや、実際にお届けしたおやつに対する評価、食べたいもののリクエストからパーソナライズが進んでいく仕組みになっています。100人お客様がいたら100通りの組み合わせが存在するわけです」

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風間:「私もユーザーで、自分の好みでないものが含まれることも当然あるのですが、それががっかりする体験にならず、次は何が届くのかと期待感に繋がるんですよね」

服部氏:「一見好みではない”新しいおやつとの出会い”が楽しさに繋がっているとのご意見は確かにあります。おやつクイズやリクエストで得たデータは数百万件ありますので、好みのものを送ることは可能です。でも、システム上でのレコメンドにだけ頼ると評価したものばかり届き、新しい出会いが提供できなくなってしまう。そのため、ある程度外れ値を入れる余地を持たせています。苦手だったおやつをsnaq.meで食べてみたら美味しくて好きになったと聞くと、お客様の食の可能性を広げられたのかなと嬉しくなりますね」

風間:「かなりのデータを蓄積されていますが、お客様は積極的にフィードバックをくれるものですか?」

服部氏:「マイページで登録するフィードバックはご自分の翌月のお届け内容に反映するためのものです。ブランドのためでなく、お客様が自分自身のために行うものなので、かなり回答率も高くデータが溜まりやすい仕組みにできています」

風間:「自分のためのフィードバックなら協力してもらえるというのは納得です。定量的なデータではない”ユーザーの声”についてはどうですか」

服部氏:「オフラインで100人規模のイベントを過去2回ほど開催し、おやつを体験していただきながら参加者にお話を聞かせいただきました。また月に4〜5件の電話インタビューを行っていて、こうした定性的にお客様の声を聞く取り組みもずっと続けています

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▲2018年のオフラインイベント「snaq.me studio」の様子(出典:snaq.me 公式note

服部氏:「インタビューは退会した人にもお願いして、どんなタイミングでなぜ辞めようと思ったのかをお聞きしています。snaq.meの商品は保存料を使っていないため一般的なお菓子よりも賞味期限が短いです。期限切れでやむを得ず捨てたときに食べ物を捨てる罪悪感を感じ、退会に繋がっている人が多いとわかりました。今は、苦手なものを寄付できる返送用の封筒を同封しています」

風間:「苦手なものを返送する取り組みはお客様の声で生まれたものだったのですね」

服部氏:「実際に送り返してもらえるだけでなく、この封筒が入っていることで賞味期限が短いと知っていただくきっかけにもなり、お客様がおやつを捨てる瞬間を減らせるようになりました。このように、お客様の声は商品開発だけでなくサービス改善にも反映しています」

気持ちは常にβ版。柔軟に、実験を重ねて進化していく

風間:「SNSでも “#スナックミー” の投稿はとても多いです。BOXを開けた時におやつが8種並んでいる絵面が思わず写真を撮りたくなるのですが、”開封の儀”へのこだわりなど、最初からかなり設計を練られていたのですか?」

服部氏:「最初から設計したというより、お客様の行動を見て変化させています。以前はパッケージの全面におやつの名前を書いたシールを貼っており、開けた瞬間は中身が見えない状態でした。お客様が全部ひっくり返して撮影しているのを見て、開けたときに中身が見えるように改善したんです。」

風間:「お客様の行動を観察して、細部は常にバージョンアップしているのですね」

服部氏:「ブランドとしてはカチッとサービス内容を固めてローンチするのが鉄則だとは思いますが、弊社はsnaq.meを”WEBサービス”と捉えています。WEBサービスはβ版でローンチして日々変わっていきますよね。良い意味でこだわりが無く、お客様の反応によって柔軟に変化する。新商品を投入する際も、最初は少量導入してお客様の評判を見て量産するかを決めるなど、実験をしながら良くする思想が浸透しています」

風間:「継続する中で、より体験の満足度を高める取り組みができるのはサブスクならではですね。ちなみに顧客層は想定通りだったのでしょうか」

服部氏:「当初は男女の割合が半々くらいを想定していたのですが、今の購買者はほぼ女性です。ママさんも多いですが、意外と子どものためではなく自分用にご利用いただいているのが発見でした。お話を聞く中で、お菓子を買うというより毎月届くワクワク感が大事だと思い、その方向にサービスを寄せていきました。2020年は別ブランドとして晩酌サブスク『otuma.me(オツマミー)』をローンチしまして、そちらは男性が多く、snaq.meとは違った層に違ったベネフィットを提供できると考えています」

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服部氏:「コロナ禍に宅飲みが流行り、おやつではなくお酒と一緒に楽しめるおつまみが欲しいとの声があったのがサービス開始のきっかけです。snaq.meで人気のおつまみ系おやつをかきあつめ、企画から3日でローンチしたのですが、すごく反響があったんです。いいおつまみの日である11月23日に単発の商品からサブスク化し、”いいおつまみが家にある状況”を提供できるブランドにしていきたいです」

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服部氏:「僕の定義では、お菓子はモノ、おやつは時間であり体験です。snaq.meが提供するのは体験なんですよね。今後別ブランドを展開する際も、モノとしての価値だけでなく、どんな体験がもたらせるのかを大切にしたい。そのためにお客様の声を聞く姿勢は今後も変わらないと思います」(TEXT:松下沙彩)



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