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【新装版『愛』『ロマン』重版記念大公開!】ウラジーミル・ソローキン関連文献リスト

国書刊行会創業50周年記念として復刊した、ウラジーミル・ソローキン『愛』(亀山郁夫訳)、『ロマン』(望月哲男訳)が、お陰さまでたいへん好評です。

ソローキンは、《現代ロシア文学のモンスター》の異名を持つ通り、「狂気」「異常」といった言葉が似合う、過激で実験的な現代ロシア文学を代表するポストモダン作家。
その初期の代表的な2冊が『愛』と『ロマン』です。

刊行直後から、想定以上の異常な速度で初版在庫が消えてゆき、『愛』はたった3日で、分厚くて重い『ロマン』も1か月弱で完売。

狂気の作品が、狂気の勢いで売れていく。
まさに、恐るべき異常事態です。

記念すべき邦訳第10作目の長編『吹雪』(松下隆志訳、河出書房新社)も刊行され、にわかにソローキン・ブームの機運が高まっております。

そしてこのたびは、「新装版 訳者あとがき」公開に続き、『ロマン』新装版所収の「ソローキンの主要作品と邦語での関連文献」リストを大公開します。
旧版『ロマン』掲載のものから、その後20年の旺盛な執筆活動や日本での邦訳紹介を追い、4倍の分量に増補改訂。
制作には、望月哲男さんおよび松下隆志さんに大いにご協力いただきました。

貴重な未邦訳作品の情報も多数掲載しておりますので、ぜひご覧下さい。

* * *

ソローキンの主要作品と邦語での関連文献

長編
『行列』Ochered' (1985)未訳
『ダッハウの一月《ひとつき》』Mesiats v Dakhau (1992)未訳、散文詩的中編
『ノルマ』Norma (1994)未訳
『四人の心臓』Serdtsa chetyrekh (文集『世紀末』第5号所収、1994)未訳
『ロマン』Roman (1994)望月哲男訳、国書刊行会、1998、新装版、2023
『マリーナの三十番目の恋』Tridtsataia liubov' Mariny (1995)松下隆志訳、河出書房新社、2020
『青い脂』Goluboe salo (1999)望月哲男、松下隆志訳、河出書房新社、2012、河出文庫、2016
『氷 氷三部作2』Lyod (2002)松下隆志訳、河出書房新社、2015
『ブロの道 氷三部作1』Bro (2004)松下隆志訳、河出書房新社、2015
『23000 氷三部作3』23000 (『氷三部作』Trilogiq に『ブロの道』『氷』とともに所収、2005)松下隆志訳、河出書房新社、2016
『親衛隊士の日』Den' oprichnika (2006)松下隆志訳、河出文庫、2022
『砂糖のクレムリン』Saharniy Kreml (2008)未訳、連作短編
『吹雪』Metel' (2010)松下隆志訳、河出書房新社、2023
『テルリア』Telluriia (2013)松下隆志訳、河出書房新社、2017
『マナラガ』Manaraga (2017)未訳
『ドクトル・ガーリン』Doktor Garin (2021)未訳

短編集
『短編集』Sbornik rasskazov (1992)[邦題『愛』]亀山郁夫訳、国書刊行会、1999、新装版、2023
『はじめての土曜労働』Pervyi subbotnik (1998)未訳
『饗宴』Pir (2000)未訳
『スナイパーの朝』Utro snaipera (2002)未訳
『4』Chetyre (2005)未訳、短編・映画脚本・リブレットを収録
『水上人文字』Zaplyv (2008)未訳、表題作は『青い脂』に小説内小説として登場
『モノクロン』Monoklon (2010)未訳
『白い四角形』Belyi kvadrat (2018)未訳
『ノーマルな話』Normal'naia istoriia (2019)未訳、エッセイ集
『時間と無感覚の勝利』Triumf Vremeni i Beschuvstviia (2020)未訳、オペラのリブレット集
『ロシア俚諺集』Russkie narodnye poslovitsy i pogovorki (2020)未訳、オリジナルの俚諺集
『女性たち』De feminis (2022)未訳

戯曲
「ペリメニ」Pel'meni (1984~87)未訳
「土小屋」Zemlianka (1985)未訳
「信頼」Doverie (1989)未訳
「醜形愛好症」Dismorfomaniia (Dismorphomania )(1990)未訳
「記念祭」Iubilei (1993)未訳
「シチー」Shchi (1995~96)未訳
「ロシアのお婆さん」Russkaia babushka (『メスト・ペチャーチ』誌第7号、1995)未訳
「新婚旅行」Hochzeitstreise (『メスト・ペチャーチ』誌第8号、1996)未訳
「ドストエフスキー・トリップ」Dostoevsky-Trip (1997)未訳
「謹賀新年」S Novym Godom (1998)未訳
「資本」Kapital (2006)未訳
「吹き溜まり」Zanos (2009)未訳

シナリオ
「いかれたフリッツ」Bezumnyi Frits (Fritz )(1994)未訳
「モスクワ」Moskva (『映画シナリオ』誌第1号、1997)未訳
「コペイカ」Kopeika (2002)未訳
「事物」Veshch' (2002)未刊行、未訳
「キャッシュファイア」Cashfire (2008)未訳
「標的」Mishen' (2011)未訳
邦訳短編
「夜の客」沼野充義訳、『文藝』1997年春季号(のち「真夜中の客」の題で『愛』に所収)
「しごとの話」亀山郁夫訳、『文藝』1997年春季号(のち『愛』に所収)
「わが聖餐」亀山郁夫訳、『早稲田文学』2001年9月号
「シーズンのはじまり」亀山郁夫訳、文春文庫『厭な物語』2013(『愛』からの再録)
「サハリン- 1」望月哲男訳、『文學界』2014年2月号

邦訳エッセイ・インタビュー
「現代世界と小説の可能性 国際シンポジウム〈新しい千年紀の文学に向けて〉」『スラヴ文化研究2』2002
「文学という劇薬」楯岡求美訳『21世紀 ドストエフスキーがやってくる』集英社、2009
「ロシア人作家にとってのチェーホフ」『すばる』2010年12月号
「恐れるか、それとも書き続けるか」『早稲田文学7』2014
「ウクライナを孕んだロシア」上田洋子訳・解説、『早稲田文学』2014年冬号
「インタビュー 「プーチンのロシア」とユートピアの死のあとの文学」東浩紀聞き手、上田洋子通訳・翻訳、『ゲンロン通信』13号、2014
「プーチン 過去からのモンスター」松下隆志訳、『文藝』2022年夏季号
「プーチンはいかにして怪物となったのか」クーリエ・ジャポン編、講談社+α新書『世界の賢人12人が見たウクライナの未来プーチンの運命』2022

関連文献
沼野充義「倫理からテキストへ──ポストモダンの前衛作家ソローキン」(沼野充義著『スラヴの真空』自由国民社、1993)
亀山郁夫「ウラジーミル・ソローキン」(越川芳明他編『世界× 現在× 文学 作家ファイル』国書刊行会、1996)
亀山郁夫「デコールとリアリズムの間 ソローキンと切断の詩学」(『現代ロシア文化』国書刊行会、2000)
望月哲男「形と意味──ソローキンの小説について」(『蟋蟀蟋蟀』8、2000)
望月哲男「ソローキンのこころ」(『ユリイカ』2002年10月号)
望月哲男「ソローキン(現代人名)」(『新版 ロシアを知る辞典』平凡社、2004)
望月哲男「ドストエフスキーのいる現代ロシア文学」(『現代文芸研究のフロンティア2』北海道大学スラブ研究センター、2001)
望月哲男『ドストエフスキー・カフェ現代ロシアの文学風景』(ユーラシア・ブックレット81、東洋書店、2005)
福間加容、望月哲男「ソローキンと絵画小説『ロマン』と19世紀ロシア美術」(『現代文芸研究のフロンティア7』北海道大学スラブ研究センター、2005年9月)
松下隆志「脱構築から再(脱)構築へ:『青脂』以後のソローキン」(『早稲田文学』4、2011)
ボリス・ラーニン、貝澤哉『ソローキンとペレーヴィン 対話する二つの個性』(ユーラシア・ブックレット199、東洋書店、2014)
松下隆志『ナショナルな欲望のゆくえ: ソ連後のロシア文学を読み解く』(共和国、2020)
松下隆志「『青い脂』」(中村唯史・坂庭淳史・小椋彩編著『ロシア文学からの旅 交錯する人と言葉』ミネルヴァ書房、2022)
松下隆志「プーチンとソローキン──対立する二人の「怪物」」『文藝』2022年夏季号

Web
北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター「現代ロシア文学データベース」に、『ロマン』(亀山郁夫)、『ドストエフスキー・トリップ』(望月哲男)、『四人の心臓』(武田昭文)、『青い脂』(望月哲男)の解説あり。

『愛』
ウラジーミル・ソローキン 著/亀山郁夫 訳
四六変型判・304頁
ISBN978-4-336-07460-7
定価:本体2,600円+税

『ロマン』
ウラジーミル・ソローキン 著/望月哲男 訳
四六変型判・808頁
ISBN978-4-336-07461-4
定価:本体5,400円+税

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