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まじめっ子なのに髪を染めた
こんにちは、元国語教員、現ライターの国語の庭です。
私が初めて髪を染めたのは、大学1年生のときでした。
以下コンテストに参加しています。
髪を染める=悪
高校を卒業するまでは、「髪を染める」ことに対して正直いいイメージは持っていませんでした。
学校の校則には「髪を染めてはいけない」という項目が必ずありましたし、定期的な頭髪検査や長期休み前の生活指導でも、口酸っぱく「黒髪のままにしておくように」と指導されていたからです。
それに、いわゆる「不良」と呼ばれていた同級生たちはもれなく金髪・茶髪で、毎日先生たちと衝突を繰り返しながら校内を闊歩していました。
髪を染めることは悪いこと。
髪を染めるのは、不良がすること。
黒髪でいるのが当たり前。
黒髪でいると、平和に過ごせる。
頭髪に限った話ではありませんが、何ひとつ校則を破ったことのないまじめ人間な私には、髪を染めること=悪、という印象が強くありました。
だから、「髪を染めたい」と思ったことも一度もありませんでした。
高校を卒業しても
「高校を卒業したら、何したい?」
高校3年生の終わりごろ、友人たちとそんな話で盛り上がったことがあります。
「バイトしたいなー。」
「ピアスの穴を開けに行くつもり。」
「みんなで集まってお泊り会とかしようよ。」
それぞれ、やりたいことであふれていました。
厳しい校則の縛りがなくなるから、自分の好きなようにしたい。
みんなそう思っていたと思います。
その中の1つに、「髪、染める?」っていう話題ももちろんありました。
「金髪にする!」
「まずは茶髪からかな。」
「左右で半分ずつ派手髪にしてみたい。」
友人たちのキラキラした希望を聞きながら、内心私はこう思っていました。
「髪、染めたくないなぁ」
やっぱり、どうしても髪を染める=「悪」という印象がぬぐい切れませんでした。
それに、卒業したら学校の校則からは解放されるかもしれないけれど、私にはもう1つ、気になることがありました。
母の存在です。
私の母は、どちらかというと厳しめな人。
学校で決められたルールは守るべき。
マナー違反にも厳しい人です。
万が一髪を染めたら、何て言われるか。
確実に怒られます。
だから、高校卒業後も黒髪のままでした。
それでいい、って思っていました。
まじめちゃんが、黒髪を卒業した日
高校卒業後、大学に進学しました。
親元を離れて、初めての1人暮らし。
この生活が、私が「髪を染める」きっかけになりました。
大学生活は、それまでの生活と打って変わって違っていました。
違いを挙げるとキリがないのですが、1番びっくりしたのは「自分の好きな授業を選べる」こと。
時間割を自分で決められる。
気になる授業があったら履修できる。
授業の時は、どの席に座ってもイイ。
空き授業のときはカフェに行ってもいいし、一旦家に帰ってもイイ。
高校生までは、決められた時間割があって、座席の指定もあって、空き時間なんてありませんでした。
でも、大学は全然違いました。
自分に裁量権があります。
「あれもできるの!?」「これもできるの!?」「本当に、いいの!?」という感じで、自分にできることがどんどん増えて、ワクワクしたのを今でも鮮明に覚えています。
それに、「一人暮らし」なことも大きかった。
最初こそ「家にひとり、ポツン」としたさみしさもありましたが、すぐにそれを上回る楽しさ、充実感でいっぱいになりました。
いつ、何をするか。
逆に、何もしないで過ごすか。
朝ごはんでもおかしでも、何を食べてもいいし、いつお風呂に入ってもイイ。
高校生までは校則があるのが当たり前、門限があるのが当たり前。
もちろん、制限があることでいろんなものから守られていたのだとは思うのですが、でも、制限のある生活って自分にとっては窮屈な生活だったのかもしれない、と思うようになりました。
「大学生活、むちゃくちゃ楽しい!」
私が求めていたのはまさにこんな生活だったんだな、と思いました。
「自分の責任で、自由にできる環境」
これが、私に合った暮らし方なんだ。
そして、じわじわと思い始めました。
「この自由をもっと味わいたい」
そこで思い至りました。
髪、染めてみようかな。
一度思い始めると、そのことで頭がいっぱいになりました。
洗面台に立って鏡を見るたびに「髪染めたいな」と思うようになり、気持ちはどんどん高まるばかり。
1日経っても3日経っても、1週間経ってもそんな感じ。
これはもうやるしかない、と思い、美容院に電話しました。
「カットと、カラーをお願いします」
内心、ドキドキです。
そして当日。
担当の美容師さんに「初めて染めるんです」と言うと、大きい絵本のようなカラーチャートを見せてくれて、「どれがいいかな?」と、似合う色を一緒に探してくれました。
恥ずかしながら、「染めたい」の一心で予約を取ったので何色にするかは決めていませんでした。
だから、いざ何色?と聞かれると決めるのにすごく長い時間がかかってしまいました。
(一言に茶色、と言ってもいろんな種類の色があるんですね)
根気強く付き合ってくれた美容師さんに感謝です。
ようやく色を決めて、「じゃあ、塗っていきますね」と。
ブロッキングされた髪にペタペタと塗られていきます。
あぁ、もう後戻りできないんだな。
でも、いいんだ。
どんどん塗られていく私の髪。
浸透させる待ち時間。
1つ1つの工程を凝視し続けて数時間後、見慣れない私が完成しました。
「まじめちゃん」な私が茶髪になった瞬間です。
罪悪感とかはまったくありませんでした。
むしろ、見慣れない新しい自分の姿に感動していました。
帰省。怒られる…
髪を染めてから、ますます大学生活が楽しくなりました。
新しくできた友人に「髪染めたんだねー」「似合ってる」と言ってもらえるのはとても嬉しかったし、鏡を見るのも楽しくなりました。
ただ、唯一心配だったのは「帰省したら母に怒られるだろうな」ということ。
それでも覚悟を決めて帰省するしかありません。
初めての帰省。
いろいろ説得力のない言い訳を考えながら、帰宅しました。
「ただいま」と対面すると、案の定、想定通りの反応が返ってきました。
「髪、染めたの!?」
「…うん」
うわぁ、怒られる…。
でも、ここからは想定外。
意外なことに、それ以上突っ込まれることはありませんでした。
びっくりしすぎてとっさの言葉が出なかったのかもしれません。
いろいろ言い訳を考えていたこちらとしても、拍子抜けです。
てっきり「黒髪に戻しなさい」と言われるかと思っていました。
でも、「怒られなかった」。
その時母がどう思っていたのかはわかりませんし、未だに聞けてもいませんが、「もう大学生なんだし」と思って許してくれたのかもしれません。(そうだといいな)
とにかく、「怒られなかった」というこの事実が、結構自分の中で自信になりました。
自分の好きにしていいんだな、と安心したというか。
本当に自由になった実感が湧いたというか。
「悪」から「自由」へ
思い切って髪を染めたとき、黒髪でいたころよりはるかに自由を手に入れられたような気がしました。
それは「黒髪でないとダメ」な世界から解き放たれた解放感からかもしれませんし、自分の「こうなりたい」(あの時の私だったら、もっと自由を手に入れたいとか実感したい)気持ちを表現できたからかな、と思います。
思い切って染めてよかったな、と思います。
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