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食器から肥料!? ぐるっとまわるサーキュラーエコノミーの実現を目指すボナース研究室さんに驚かされた!

國學院大學メディアnote担当が、気になるあの人とお話ししてみた!
今回は、なんと食器から肥料を作ってしまったボナース研究室の滝本幹夫さんにお話を伺いました。
なんとなく、どことなく、國學院大學メディアnoteと共通点があるような……?

——ボナース研究室さんについて、教えてください。
ボナース研究室は、陶磁器メーカーのニッコー株式会社が運営するnoteです。捨てられる食器をリサイクルした肥料「BONEARTH®ボナース」を開発した研究開発本部のメンバー3人で運営しています。
 
——ボナース研究室さんは、私たちのnote記事「民俗学は、暮らしの伝言ゲーム」。岸澤美希さんが語る、いまの暮らしに役立つ民俗学とは」に「いいね」をつけてくださっています。この記事のどこが「いいね」のポイントだったのでしょうか。

理由は2つあって、まずは國學院大學さんが「学び」をテーマに記事をアップされていたこと。当社は石川県立大学と共同研究するなど、学び、学校に縁があり、なにか共通するものを感じたんです。
 
もう1つは、この「民俗学は、暮らしの伝言ゲーム」の記事にお米のことが書かれていたことですね。当社で、陶磁器から作った肥料「BONEARTH®」で作ったお米を販売していたところだったので、そんな縁も感じて「いいね」をさせていただきました。

BONEARTH®ボナース」を開発した滝本幹夫さん。

——「BONEARTH®」を開発したニッコーさんは、レストランやホテルで使用されている食器のメーカーというだけではなく、機能性セラミックや浄化槽、オーダーメイドのバスルームなんかも作っている会社なんですね。なぜ「BONEARTH®」を開発されたんでしょうか?

おっしゃる通り、当社はさまざまな事業を展開しています。もともとは115年前から陶磁器を扱う会社です。しかし、陶磁器の需要が年々減少していることを考えると、陶磁器の新製品を開発し、次の100年につなげていくことはできないのではないか? という思いがあり、何か違う発想で新しいことがしたいと考えていました。

ニッコー社の食器。どれもシンプルで使いやすく、飽きのこないデザイン。

もう一つの観点から言うと、環境型循環社会にどう対応するかという課題があったんです。これまでは食器を作って販売すると、エンドユーザーのところで使用され、やがては廃棄されるという一方通行でした。それを、循環する形に変えたいと思いました。今で言うサーキュラーエコノミーです。それらを踏まえて、私は研究開発本部長という立場なのですが、以前から密かなアイディアを考えていまして……。

——それが、もしかして……!?

そうです。当社の食器から肥料が作れないかと。なぜかというと、当社が作っている陶磁器はボーンチャイナといって骨灰を原料にしており、化学的に見るとリン酸三カルシウムが約50%も含まれているんですね。そして、有害なものは一切含まれていない。「ん? これは肥料になるのでは?」と思いついたわけです。そこで、会議の際に「こんなアイディアがあるんですが……」と申し述べたわけです。

こちらの素朴な疑問にも、笑顔で答えてくださった。

——それを会社としてGOを出すのも、なかなか革新的な社風ですよね。

そうなんです。100年企業ですが、柔軟性があります。そこで早速、独立行政法人農林水産消費安全技術センターに肥料としての認可をもらいに行ったんですね。だって、成分も問題ないし、安全性も確かだし。そうしたら……。

——認可されるまでにどんなやりとりが?

私は農業のことは素人で、いきなり担当者に「あのう、うちの食器から肥料を作りたいんですけど」と話した。すると「あなた、産業廃棄物を不法投棄するんですか?」と言われまして。

「えっ?」と思ったんですが、これは、当時の肥料取締法に基づいた返答だったんです。当時は肥料にしてよい材料が限定されていて、それ以外は認められなかったんです。認められていないものから作った肥料は、産業廃棄物とみなされていたんですね。

しかし、陶磁器の素材は絶対に肥料にできるはず。そもそも日本の肥料の原料、とくにリン酸はほぼ100%海外のものなんですよ。国産で安全なもののほうがよいという信念を持ち、どうすれば認可してもらえるかを考えました。

——くじけなかった……!

次は農林水産省に「ぜひ話を聞いてください」とアタックしまして。そうしたら、話を聞いていただける方が現れました。その方が、「こういうデータがあったほうが良いですよ」「こういう試験をしてみては」など親身にアドバイスをくださって、私たちの試みを応援してくださったんです。

——まさに救世主ですね!

いやほんと、ありがたいです。今も時々お世話になっています。
 
ちょうどそのころ、石川県立大学と協同で研究をしようとしていたタイミングでした。大学で試験し、必要なデータを出していただき、農林水産省へ提出しました。交渉、話し合いを繰り返していた2021年12月、「肥料の品質の確保などに関する法律」が施行され、2022年2月10日に農林水産省から肥料としてようやく認められました。
 
食器を肥料にするというアイディアが出てから、肥料として認めてもらえるまで3年以上の月日が経過していました。

——おめでとうございます! 『プロジェクト○○』(自主規制)のテーマソングが聞こえるようなお話ですね。農家さんはもちろんですが、家庭菜園をやっている方に「BONEARTH®」を使っていただくのもいいですよね。ちなみに「BONEARTH®」はどんな野菜におすすめでしょうか?

野菜はみんなリン酸を必要としているので、どんな野菜でもいいと思いますよ! 「BONEARTH®」はリン酸とカルシウムを多く供給するので、トマト、ピーマン、カボチャなんかはとくにいいですね。
当社が把握している限りで、現在、試験栽培も含めると10都道府県11軒の農家さんに使っていただいています。

——そしてついに販売へ。このパッケージが、なんともオシャレ……。センスがいいですね!

2022年4月に、販売開始しました。パッケージは、紙の筒状の容器とビニール袋の2種類。色合いとイラストに特徴があります。

肥料とは思えないおしゃれなパッケージ。
300g・800gサイズは紙製の筒に(左)、1kgサイズはビニール袋に(右)。
ニッコー社が運営する東京・渋谷のショップ「LOST AND FOUND®️」でも購入できる。

——ところで、ボナース研究室のnoteを拝見していると「サーキュラーエコノミー」という言葉がよく出てきますね。

サーキュラーエコノミーとは、日本語に訳すと循環経済です。今までの3R(リデュース、リユース、リサイクル)を超えて、消費量や資源の投入量を抑え、ストックを有効活用して廃棄物の発生を最低限に抑えること。世界的な潮流として広がりつつある考え方であり実践です。
 
私たちが生み出したお皿が、ホテルやレストランなどで使用され、ゆくゆくは廃棄されるときに私どものところに戻るような仕組みを作り、「BONEARTH®」に生まれ変わらせる。
 
1枚のお皿から持続可能な“食の未来”を考え、循環型社会をつくる。壮大ですが、最終的な目標はそこにあるのです。

——素晴らしい! さらに、その動きに多くの人を巻き込もうというチャレンジもされているとか?

はい。「BONEARTH CIRCULAR COMMUNITYボナースサーキュラーコミュニティ」の設立です。
「BONEARTH®」を使った農家さんの野菜が、ニッコーの食器を使っているレストランで使われて、それをサーキュラーエコノミーに興味のある方が食べて、そして食器が廃棄されるときはまた「BONEARTH®」になる……という流れを「BONEARTH CIRCULAR COMMUNITY」という形にできないかと。興味のある方は全員メンバーで、持続可能な食の未来のためにアイディアを出し合ったり、なにか活動をしたり、話し合ったり。そのときに「BONEARTH®」がなにかお役に立てないだろうかと。
 
「どうせ買うなら環境にやさしい製品を買おう」と考え、製品を選ぶ方も増えています。その方たちも仲間になって欲しい。まあ欲を言えば、そこで ニッコーの製品を選んでいただけたらもっとうれしいですが……。

石川県白山市にある「NIKKO BONEARTH FARM」。

——「BONEARTH®」で作られた野菜を使って調理するとか、「BONEARTH®」を使っている農家の方の話を聞くとか、農家さんに手伝いに行くとか、いろいろおもしろそうなことができそうですね!

そう思っていただける方はみんなメンバーです!

——なるほど!
ちなみに、noteを書かれている「みきおくん」「ぶっちゃ」「こまつな」さんたちって……。

みきおくんは私です(笑)。ぶっちゃとこまつなは、「BONEARTH®」開発チームの面々です!

——やっぱり(笑)!

今後、ボナース研究室さんとは國學院大學メディアnoteの共創クリエイターとして、さまざまなコラボ企画でご一緒する予定です。どうぞお楽しみに!

滝本幹夫(たきもと・みきお)
ニッコー株式会社研究開発本部長。陶磁器事業部長を経て現職に。
「BONEARTH®」開発のキーマンで、note「ボナース研究室」の「みきおくん」。
趣味はゴルフ。
好きな作家は横溝正史と西村寿行。最近は小説よりも専門雑誌を購読。

陶磁器メーカー・ニッコー株式会社が開発した
「BONEARTH®」にまつわるnote
 ボナース研究室

サーキュラーコミュニティについてのサイト
BONEARTH CIRCULAR COMMUNITY

取材・文:有川美紀子 編集:篠宮奈々子(DECO) 企画制作:國學院大學