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「防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案」について(政治家女子48党浜田聡議員のお手伝い)


昨年2022年2月24日、ロシアが武力による現状変更を試みウクライナを侵略しようと攻撃しました。自由主義陣営は自由を護るために武器弾薬をこぞってウクライナに提供した訳ですが、一方日本は様々な問題を抱えながらもなんとか人命を守る装備品のヘルメットと防弾チョッキ、その他衛生用品などを贈りました。

日本には「防衛装備移転三原則」があるので、本来であれば同盟国では無いウクライナに装備品を贈る事は出来ません。しかし軍隊を持たない日本が世界から孤立する事だけは避けなければならないと考えたのか記事の中には「日本だけが取り残されるのではないか」という切実な表現となっているのは、それは湾岸戦争時の金だけ出して何もしなかったと自由主義陣営から非難された経緯があったからだと思います。

令和5年2月10日防衛省主管の「防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律」が閣議決定後国会提出され現在審議されています。
その法案内容と、「武器移転禁止三原則」と「防衛装備移転三原則」と岸田総理が良く言われる抜本的な防衛力、そして釈然としないこの予算の使い方に何が問題なのかを考えます。



1.法案の内容


下の絵は防衛省のサイトにあるこの法案の概要です。
「装備品等」は、法案の第二条に書かれてますが自衛隊が使用する装備品、船舶、航空機及び食糧その他、燃料等自衛隊で使うものです。

防衛省が装備品等を適切に調達するためには、製造業者が装備品を安定的に生産出来る体制を整えることが大切で、その為には必要な技術や設備を海外から導入しやすい様に防衛省が支援を行います。
さらに、装備品等の契約では、秘密保持義務を定め備品等の製造施設を防衛省が取得し、企業に管理委託し運営をして貰うそうです。
基盤強化の措置としては、原材料の備蓄やサイバーセキュリティ等の対応も行い、①サプライチェーンの強靱化②製造工程効率化(3Dプリンタ導入等)③サイバーセキュリティ強化④事業承継等を行う場合は基金を設け、そこから直接支払らったり貸し付けたりも行います。


内閣府の「サプライチェーン強靱化パートの運⽤に向けた検討」の資料に、特定重要物資の指定に向けたプロセスとしてサプライチェーンの供給途絶リスクについて書かれた資料がありました。
高度化した兵器などは半導体や鉱物資源などが無くなると途端に供給がストップしてしまい、戦争どころではなく戦う前に負けてしまいます。そう言った装備品等を確認し各省庁で精査し対応しなければなりません。
参考事例として米国とEUそして中国の取り組みが紹介されてます。
武漢発新型コロナウィルスが猛威を振るい始まった2020年に大統領令として行った「サプライチェーン強靱化に関する⽶国の取組」は、重要な技術をリスト化し、報告し、1年間の取組を総括し防衛産業、公衆衛⽣・⽣物テロ、ICT、エネルギー、運輸、農作物・⾷料に関するサプライチェーンを分析しています。
EUでも、「欧州・2020産業政策アップデート」として電池や半導体といった戦略的な重要物資のチョークポイントを分析し、特定国への依存を低減させ、⾃⽴化を図るための産業政策を発表しています。


「中国が取り組むサプライチェーン関連の施策・戦略」では、「⾃主的・コントロール可能なサプライチェーンの能⼒強化」として、サプライチェーンの主要部分は国内に留めておくなどコア技術の国産化を推進とあります。
この話は2018年に記事として掲載され、中国が保有して無い技術や中国の発展の為に誘致すべき技術がリスト化されていた事が分かりました。
これにより米国は2020年10月、2020年EUが強靭化取り組み始めた経緯が資料から見て取れます。

資料:サプライチェーン強靱化パートの 運⽤に向けた検討


令和5年2月に閣議決定され国会に提出された「防衛省設置法の一部を改正する法律」には自衛官の数が変更されておりますが、令和3年2月にも「自衛官の定数の変更」はされており、改正前も改正後も今回も総数は247,154人で変わりありません。しかし、陸上自衛隊の人数が255人減で海上自衛隊122人増え「共同の部隊」人数が144人増えてます。明らかに台湾有事と島嶼防衛を意識した編成だと思われます。
「共同の部隊」とは令和3年版の防衛白書によると、特別の機関で陸海空合同の「自衛隊式通信システム隊」と「自衛隊情報保全隊」で、いわゆる自衛隊サイバー防衛隊と呼ばれる部署になります。任務としては、主にサイバー攻撃などへの対処を行うとともに、防衛省・自衛隊の共通ネットワークである防衛情報通信基盤(DII)の管理・運用などを担っています。ネットワーク関連技術は日進月歩であり、サイバー攻撃なども日増しに高度化、巧妙化していることから、同盟国などとの戦略対話や共同訓練、民間部門との協力などを通じ、サイバー攻撃対処能力向上をさせる為です。

読売新聞記事によると、近隣国の中国のサイバー部隊は約1万7500人、北朝鮮は約6800人、ロシアは約1000人で、防衛省の話として『同省では、23年度に陸上自衛隊の通信学校(神奈川県横須賀市)を「陸自システム通信・サイバー学校」に改編し、指導役を担うサイバー教育部を新設する。陸海空の各自衛隊から人材を受け入れ、専門知識を教育する。同校では、サイバー防衛隊のような専門要員以外にも、陸海空の各自衛隊のネットワークシステムなどを使用する隊員らを対象に、サイバー対処の基礎知識の講習を行う約1万6000人のサイバー攻撃対処要員を育成する予定だ。』とあり、台湾有事で強力に起こると考えられているサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的なサイバー防御」(アクティブ・サイバー・ディフェンス)を可能にする能力の保有を意味します。


防衛省設置法の一部を改正する法律2023年 4月 14日可決



2・「武器移転禁止三原則」と「防衛装備移転三原則」と日本の装備品の現状


防衛装備移転三原則(平成26年4月1日国家安全保障会議決定・閣議決定)


世界中どこにもない日本だけにある三原則が2つもあります。「武器移転禁止三原則」と「防衛装備移転三原則」です。
「武器輸出三原則」はかつて日本国政府が採っていた武器輸出規制でしたが、法律になる事はありませんでした。
2014年第二次安倍政権時代に「防衛装備移転三原則」として閣議決定され、武器の輸出入を基本的に認め、その上で禁止する場合の内容や、厳格な審査を規定する内容にして積極的に輸出をする方向に転換しました。
その背景として、外務省のサイト書かれている理由は中国による海洋進出など安全保障環境の変化に対応するほか、国際社会からの積極的な役割を果たすことを期待され、高度な技術力や高品質である理由から日本の防衛産業の海外進出を後押しする事になりました。
2020年8月にフィリピン向け防空レーダーに係る契約は、国産完成装備品の海外移転として初めて成立しました。

日本は、2021年令和3年9月10日までにアメリカ、イギリス、オーストラリア、フランス、イタリア、ドイツ、インド、フィリピン、マレーシア、インドネシアと防衛装備品・技術移転協定の締結しており、2021年9月11日、11か国目のベトナムとも発効しました。

NATOカタログ制度というのがありますが、装備品等の補給・管理を効率的に行うため、NATO諸国等との間で装備品等の情報を共有する制度です。参加する国の国内又は国際的な補給業務を効率化するため、NATOの規格に基づき装備品や部品等について、分類区分(航空機用、車両構成品等)や品目識別(寸法、材質及び主な特性)を整理した上で、NATO物品番号を付与し、NATO諸国等の間で装備品等の情報を共有しています。
日本は加盟していましたが、2020年10月1日以降我が国の装備品等の情報を海外に発信していくため登録が許されました。同盟国や同士国が万が一の時に装備品を必要としてる場合にその書かれている情報を見て融通が可能かどうかが解かる訳です。


安倍政権下の2014年頃は、国内の防衛産業には撤退する大手の企業も出ており一方で輸出を増やして欲しいという要望もありました。その様な中、全面禁輸を見直して「防衛装備移転三原則」として国際平和への貢献や日本の安全保障に資する場合、紛争当事国などを除き積極的に輸出する方向で解禁しました。それでも運用指針では、共同開発国を除き、戦車や戦闘機などの武器の輸出は認めてきませんでした。
ですから当然同盟国では無いウクライナへの装備品の提供はできませんでした。そう言った事情の中、我が国の安全保障の観点から 積極的な意義がある場合に限るとして、国際法違反の侵略を受けているウクライナに対して自衛隊法第116条の3の規定に基づき 防衛大臣が譲渡する装備品等に含まれる防衛装備の海外移転が可能となりました。
令和4年4月には、新たにウクライナ政府からの要請があったことを踏まえ、化学兵器等対応用の防護マスク及び防護衣並びにドローンを提供したようです。

ウクライナへの装備品等の提供について
令和5年3月 経済産業省
防衛装備の海外移転の許可の状況 に関する年次報告書



3・防衛力の抜本的強化


岸田総理が度々使われる「防衛力の抜本的強化」という表現は、内閣官房の国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議からの報告書に書かれています。
ウクライナは何故ロシアに侵攻されたのか?
電力・通信・インフラが攻撃される事態にどう対処するのかという計画を持っていなければ、抑止力は減殺されかねない。防衛力の抜本的な強化と総合的な体制の強化が必要とされ、5年間で講じなければならないと結論付けています。

2回国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議防衛省資料



令和5年度防衛省 予算防衛力抜本的強化「元年」予算


政府の言う所のウクライナで得た教訓から日本の取るべき道は「抜本的防衛力」の装備であるという「領域横断作戦のイメージ」の様です。
さらに、政府の5年間の抜本的な防衛力の為の予算は43兆円ですが、スタンドオフミサイルやトマホークが妥当なのかという議論が国民からも野党の国会議員からも盛んにされていました。

領域横断作戦のイメージ



3・そして何が問題なのか


今まで日本は憲法9条のもと専守防衛で、予算も殆ど増えることなく、高額な沢山の戦闘機の購入で自衛隊員はトイレットペーパーも自分持ちであったり、救助に行く時の手袋も替えが無く自費で購入したり、官舎も老朽化が激しくキッチンを自費で修繕した話などを聞きます。
令和5年度の防衛予算はGNP2%を目標に令和5年度は歳出4.4兆円、契約ベースで9兆円となっています。

防衛白書ダイジェスト2022 P


果たしてこれらの武器の購入やその他の予算の使い方は、目標や目的に敵い、効果的効率的な使い方と言えるのでしょうか?正直、その判断はプロでも難しい事なのかも知れません。問題は過去の大型予算や補助金の税金の使い方を見てみるとこの防衛費増額予算にも懐疑的にならざる負えません。

新型コロナウィルスの時に政府はコロナ臨時交付金という補助金を長期間設けましたが、それをNHKがAIで検証した結果2020年度の「検証 コロナ予算 77兆円」として出ています。
「前代未聞の巨額予算」でしたが、感染対策や経済対策として全国全ての自治体に配られた「地方創生臨時交付金」の
予算額は4兆5千億円です。
この臨時交付金を巡り地方では何が起きていたのでしょうか?
石川県能登町では、観光の為の「イカキング」というモニュメントが作られたり、九州の方ではアジフライのモニュメント等々、本来の使い方からは逸脱した使い方です。やるのなら自治体の予算でやるべき事です。
東日本大震災の時の復興増税はどうでしょうか!
経済産業省の官民一体として行われた半導体産業でジャパンディスプレイや、リージョナルジェット機産業における公的支援はいくらだったのでしょう?


私は、防衛費の増額に反対はしません。近隣諸国の脅威は確かにあります。
昨年話題になりましたが、台湾有事をシュミレーションしたCSISの「ウォー・ゲーム」を見れば、中国が台湾に侵攻するにはまず在日米軍基地や自衛隊の基地を叩き戦闘に参加させない事が重要になってきます。
そうさせない為の抑止としては、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の国々やNATOとも連携する事が確実で早道でです。但し、ウクライナへのそれ相応の援助もウクライナからだけでなくNATOや欧米の国から求められるでしょう。

その防衛力増強によって抑止力があがったとしても、私達国民は先の大戦や過去の政府の税金の使い方から、黙ってお金を出すのではなく常にその考え方や使い方に目を光らせ疑問視しながら見ていく必要があります。そして、必ず毎回税金の使い方として検証をすべきだし、規制をなくす事で更に効果的効率的に行うよう改善すべきです。


最後に政府に聞いてみたい事は、
①抜本的な防衛力強化によって、安心し気のゆるみからモアルハザードが企業にも政府にも起こる事は考えられないか?それはどのような事を想定していますか?
また、その対処方法は?
先日北朝鮮からのミサイル発射でJーアラートが発出されましたが、防衛省は途中軌道を見失い、結局国内に落ちてきませんでした。その連絡・報告の仕方ついての疑問を立憲民主党藤岡隆雄議員が質疑されていました。
つまり実際にシュミレーションして行動する事で法律の穴や瑕疵が発見されるわけで、そういった手順を実際的にシュミレーションしましたか?
シン・ゴジラの映画の様な事態になりはしませんか?

②戦争は確実な1発のミサイルより乱発でも複数のミサイル攻撃の方がはるかに効果があり、現実的です。つまり、現代でも数が多ければ有利であり、勝利の確立が大きいようです。初動で沢山のミサイル攻撃が日本の基地にされた場合、国民保護としてシェルターの設置はどうなっていますか?
地方自治体の国民保護計画には、ミサイル攻撃があった場合、堅固な建物に隠れるという指導が書かれていますが、住宅地にはコンクリートの建物など近くにはありません。
地方の自治体予算では必要なシェルターの数を設置する事は出来ないのでは?
また、日本国内にいる敵国人が襲って来た時に、自衛隊も来ないし警察も手があかず直ぐには来れないでしょう。
一般の国民は敵が襲ってきたらどの様に自衛すれば良いでしょうか?
また、通信が嘘情報であふれていたら、どの様にして情報を取れば良いですか?

③最後に長谷川さんのブログに書かれている「神エクセル」や業務量削減の為の改善、そして規制を減らせの指摘を、防衛省とデジタル庁に確認して欲しいです。


(以下は参考資料)




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