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リスク社会とワクチンの暴走(5)システムに取り込まれないように抵抗する

 システムに対抗するためには、システムに取り込まれないように闘うことが必要です。そのとき味方となるのは,人間によってシステム化されていないものです。それは自然です。そもそも近代社会のシステムは、人間の最大の脅威であった自然を徐々にコントロールしようとしてきた結果です。ですので、常に外部である自然がシステムにとっての最大の脅威になります。

 このことは福島原発の事故を思い起こせばよく分かるでしょう。コントロールされていたのは、システムによって想定されていたリスクだけで、それは自然から見れば吹けば飛ぶような小さなもので、実際に吹き飛ばされてしまったのです。人間のシステムは、所詮、自然の摂理には勝てません。その意味でワクチンをめぐる争いの勝敗は見えているのですが、闘いの長期化はそれだけ人類に傷を負わせ,消耗させてしまいます。

 システムに抵抗するためには,自分自身の中でシステムに侵されていない部分,つまり一番自然に近い部分を基準として行動するしかなく、それが一番効果的です。自分にとってよくないと思ったら,誰が何と言おうと,社会の中で生きにくくなっても,頑なに拒否を貫くだけで、それが自然の摂理にあっていれば、いつか必ず世界は変わります。

 しかし,自分が拒否するだけでは,すまない場合もあります。問題が自分が拒否するだけでは済まない場合は,やはり立ち上がる必要があるでしょう。そして問題が大きくなればなるほど,多くの人と連携して,場合によっては世界的に協力して,抵抗しないといけない場合もあります。

 この抵抗は簡単ではありませんが,方法が重要です。まず長期戦か,短期戦かで方法が変わります。短期戦の場合は,できるだけシステムに巻き込まれないように,無秩序に幅広く行うべきです。現在世界的に進行している問題では,できるだけ短期に決着をつけないといけないと思いますので,こちらの戦略を考えていきましょう。

 まず,やるなら出来るだけ好き勝手に、無秩序にやるべきです。まず,家族や知人と機会を見て話すことは基本中の基本です。さらに,志を同じく人たちと意見交換する。SNSで発信する。署名活動をする。新聞広告を出す。デモに参加する。行政に意見を伝える。などなど、何でもできることからやってみることです。

 それぞれの人がめいめいに行動すれば,当然無秩序で統率が取れませんが,このような非組織化された動きに対処することが、システムは一番苦手です。そのときに大切なことは,いきなり大きな問題を示すよりも,小さな不安を打ち明けるほうが効果的ということです。

 たとえば,○○人死にましたとか,○○人が副作用で再起不能ですという情報はインパクトはありますが,情報はインパクトがあればあるほど,拒否する圧力も強まります。抵抗の目的は,まずは浸透することですから,自分が心の底で持っている小さな不安(実際は小さくないのですが)を少しずつ周りに共有してもらうことが有効です。

 短期戦で一番良くないのが,反対者が明確なグループを組んで,全体から孤立することです。そうなると,社会はその集団にすぐにレッテルを張って,システムから排除しようとします。これは,排除されたグループとしてシステムに取り込まれることを意味するので,こうなるとシステムと闘うことそのものがシステム化されて,ほとんど勝ち目はありません。

 そうではなくて,システムを無批判に支持している人たちの心の中に入って,彼らが押し殺している不安に気づかせることです。仮に説得できなくても構いません。少しでも,不安に気づいてもらえればそれで成功です。みんな不安を持っているということに気づくだけで,その不安が閾値を超えたときに,社会が変わります。

 ところが,政党などを作って対抗しようとすると、システムの思うツボで、少数派のレッテルを貼られて、簡単に排除されるか、無力化されてしまいます。ただし,活動を目立たせるための戦法として使うなら,効果の出る場合もあるでしょう。

 政治を使うなら、既存の政党や政治家の内部から変えていくことを目指すべきです。私たちは政権を取ることが目的ではありませんから,彼らと敵対するのではなく、懐に入り込んで味方につけるべきです。政治家は,常に支持者を求めていますから,接点を持つ政治家は必ず現れるはずです。

 ただし,政治家や団体の方から,何らかの働きかけがあった場合は,注意が必要です。もちろん,純粋に協力を求めてくる場合もありますが,反対運動を利用しようとする人たちも多くいるので,システムに抵抗するつもりが,別のシステムに取り込まれては元も子もありません。

 自分が持っている不安を世界に訴える。不安は,無秩序で,組織化されていませんから,それだけで堅牢なシステムにひびを入れることができるのです。

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