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気候変動の罠(2)本当の目的は何か?

 気候変動問題では、温暖化防止の対策の目標達成の期限が、2050年とか、21世紀中とか、気の遠くなるほど先の時点になっていますが,おかしいと思いませんか?気候変動が本当に大変な問題なら、グレタさんが言うように,直ちに対策を打たなければ間に合わないはずです。

 しかし、世界の気候変動政策のリーダーたちは、気候変動の被害の深刻さを煽る一方で、即座に実効性のある対策を取ろうとしません。実効的な方法は、化石燃料の採掘制限でも、一定時間の停電でも、強力な炭素税の導入でも,いくらでもあるはずです。ところが、彼らの提案は、提案者が生きているかいないかも不明な将来や、絶対に生きていないような遠い未来に向けての政策ばかりなのです。

 これはなぜでしょうか?単純に考えると、気候変動の防止には社会システムの転換が必要でそれには時間がかかるからと思っている人も多いと思いますが,そう考えると罠にはまります。

 社会システムの転換に時間がかかるから待つということは,社会システムの転換の方が,気候変動よりも大切だからと考えないと辻褄が合いません。つまり逆なんです。そう考えると,実は気候変動は仮の目的に過ぎず,本当の目的は社会システムの転換にあるという構図が見えてきます。

 現在の一番の目的は社会システムの転換で,気候変動はそれを説得し促進するための手段にすぎないのです。そう考えると,すべての疑問が氷解していきます。

 それでは,目指すべき社会システムの転換とはどういうことでしょうか?それは,化石燃料依存した社会システムからの脱却です。それは,エネルギーの消費をできるだけ減らして,必要な場合でも再生可能エネルギーなどを中心とした代替エネルギー中心の社会システムへの転換を目指すことです。

 これは,産業革命にも匹敵するような極めて大規模な技術革新ですので,短期ではとても達成できません。100年くらいかけて進めるべき重大な計画です。そうするとなぜ超長期の気候変動対策の目標を掲げているかが見えてきます。

 では,なぜ化石燃料中心から脱却しないといけないのでしょうか?それは気候変動を防止するためとなると,問題が元に戻ってしまい、なぜ,気候変動防止のために,すぐに行動を起こさないのかという疑問に答えることができません。したがって,気候変動以外の真の目的があるはずです。

 この問題の解答は,世界のどの地域が最も熱心に気候変動対策を推進しているかを見れば分かります。その地域はずばり欧州です。気候変動政策で世界の最先端は欧州ですし,国連で気候変動政策をリードしているのも欧州です。アメリカはトランプ前大統領の行動を見てもわかるように,世論が二分されていて,腰が据わっていません。

 では,なぜ欧州は化石燃料からの脱却を目指すのでしょうか。それは,欧州が石油をはじめとする地下資源を十分に持っていないからです。欧州もかつては,中東やアフリカ,アジアに多くの植民地を持って,多大な石油の権益を持ち、世界の覇権を握っていました。しかし,第二次世界大戦後の植民地の独立でその権益の多くを失ったのです。

 しかし,欧州のライバルであるアメリカ,ロシアそして中国は,多くの地下資源を持っており,化石燃料も豊富です。そうなると,世界における欧州の地位は必然的に低下せざるを得ず、覇権はなくなりました。産業社会において,エネルギーは食糧と同じで最も基本的な資源です。太平洋戦争では,当時の日本がABCD包囲網によって,石油の調達が困難になったことが、開戦の大きな原因となったことは歴史的な事実です。

 戦後,このままでは欧州の世界的地位が凋落するのは時間の問題でした。しかし、再びアジアやアフリカを再び植民地化することはできません。そこで最初に注目されたのは原子力でした。しかし、欧州では1986年のチェルノブイリの原発事故で、原子力発電に対する潮流が変化します。

 化石燃料でもない、原子力でもない新しいエネルギー源はあるのか、この問題には発想の転換が必要です。新しいエネルギー源がないならば、エネルギーを使わない社会を目指すべきという答えが見えてきます。しかも、その仕組みを最初に確立すれば再び世界の覇権が握れるかもしれません。

 気候変動問題は,問題提起されたときから現在まで,一貫して欧州の戦略的なリーダーシップのもとに動いています。これは欧州が100年かけて世界の覇権を奪い取るための壮大な世界戦略と見ることができます。

 では,なぜ社会システムの転換に,「地球温暖化」という学説が必要だったのでしょうか?それは,社会システムを転換するためには,多くの既得権益を壊さなければならず,大きな国際的かつ社会的抵抗が生じることが予想されるため,全員が納得できる説明とそうせざるを得ない「脅し」が必要であったからです。つまり,強力な正当化の手段が必要だったわけです。

 その最初の「脅し」は,石油枯渇説でした。1980年代頃までは,石油は枯渇性資源と呼ばれ,埋蔵量があと何十年かで無くなると脅されつづけていました。しかし、その後,埋蔵探索技術や精錬技術が発達し、石油が次々見つかるだけでなく、シェールオイルやシェールガスのような新たな資源も活用可能となって,今度は化石燃料がありすぎる状況になってしまったのです。

 そうなると欧州はますます苦しくなります。そこに現れた一縷の光が地球温暖化仮説です。地球温暖化は、単なる脅しではなく、科学的仮説として登場しました。そして,その仮説が真実だった場合の被害をどんどん想像して行って,膨大な「脅し」をあわせて作ることに成功しました。もちろん,この「脅し」の中には,実際に発生するリスクの高い事象もあるかもしれません。

 この欧州の戦略は世界的な成功を収めたことは,日本の新政権も施政方針演説で「脱炭素」を入れなければならないことを見ても明らかでしょう。ではなぜ、このような脅し付きの学説が、世界中で受け入れられるようになったのでしょうか?

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