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宗教化するワクチン論争(4)「デマ」はどのようにして作られるのか?

 新型コロナワクチンに対する「デマ」が接種率が上がらない理由であると,勝手に想定して,それを排除すればワクチンへの理解が進み,接種率が向上すると誤解して,政府やマスコミは「ワクチンデマ」の排除を熱心に進めています。とうとう,厚生労働省も,以下のような「新型コロナワクチン(mRNAワクチン)注意が必要な誤情報」をまとめてwebに公開しました。昨日の日経新聞でも報道されています。さすがに「デマ」という言葉を使わずに,「誤情報」と言っていますが,同じ意味です。

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 しかし,ここであげられている10個のご情報はよく見ると,おかしなものがすくなくありません。たとえば,2番目にあげられている「ワクチン接種が原因で多くの方がなくなっている」は果たして誤情報でしょうか?現在,日本では厚労省の分科会で1000件以上の接種後死亡例が報告されており,アメリカやEUを合わせると数万人の接種後死亡が報告されています。日本の場合,そのほとんどが因果関係が不明で処理されています。「因果関係不明」と厚労省が公式に表明している以上,それは因果関係がないという意味ではなく,「原因でなくなっている」可能性は否定できません。したがって,「ワクチン接種が原因で多くの方がなくなっている」は,厚生労働省が検証すべき事実のはずで,これを「誤情報」ということは,自らの調査を否定することにもつながります。そもそもこの問題を放置していることが,ワクチンへの不信感を増大し,政府がいうところの「デマ」が拡散している一番大きな理由なのではないでしょうか。

 また7番目に「通常の臨床試験(治験)のプロセスが省略されている」が,「誤情報(デマ)」としてあげられていますが,このような「デマ」は本当に流れているのでしょうか。ワクチンに対する批判の多くは「まだ治験中である」という事実を言っているだけで,「プロセスが省略されている」とは言っていませんし,治験が終わっていないのですから,その意味で将来の「プロセスが省略されている」とは明らかです。しかし,「プロセスが省略されている」と書けば,「これまでに実施しなければならないプロセスを省略した」と解釈することが可能となって,「誤情報」としても間違いではないと,役人的には言い訳ができるのです。きわめて官僚的で,全く無意味な「誤情報」です。

 同じように,その意味で最後の「動物実験でワクチンを接種した全ての動物が死んでいる」については,「全ての」がついているから,「誤情報」であるということができるだけであって,「全て」をとれば,単なる平凡な事実です。しかも,それに対する「正しい情報」が,「実験動物がワクチンの毒性によって異常な死を遂げたという事実はありません」ということですが,これでは「誤情報」と「正しい情報」が一致していません。いうなら,「全ての動物が死んでいるわけではありません」のはずですが,もしそう書けば,この文書のおかしさが際立ってしまうでしょう。しかも,「異常な死」とはなんでしょうか?「異常でない死」なら許容できるのでしょうか。「異常な」が定義されていないので,本当に意味不明の「正しい情報」です。

 このように,この厚生労働省のまとめは,「原因である」とか,「プロセス」とか,「全て」のような用語をちりばめて,わざと「デマ」を作り出して,それを自分で否定するという自作自演の代物がその本質です。「プロセス」や「全て」という用語の定義は自分でできますし,ワクチンと副作用の因果関係さえも,自分たちが事前に定義したものしか認めないので,それ以外がすべて「誤情報」とすることができるのです。自らの定義(=教義)にのっていないものは,すべて間違いとする姿勢は宗教そのもので,自分で何でも勝手決められるところが,最も非科学的です。

 一方,上記以外の医学的問題についてはどうでしょうか。この点については,科学リテラシーの点から検討する必要があるので,「ワクチンデマ」を批判する専門家や科学者の説明の問題点として,次回以降に検討することにしたいと思います。


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