中国スタートアップ 資金調達Weekly Report_2021/05/21-2021/05/27_21w
こんにちは!
中国大好きな竹内雄登です。
ソフトバンク投資部門でのベンチャー投資業務を経て、先の4月末までSPEEDAというデータベース向けに中国産業調査をしていました。現在は、無職で人生を楽しみながら、中国への移住方法を模索しています。
今年の2021年から、ITjuziというデータベースの情報をもとに、Weeklyで中国スタートアップの資金調達状況について発信することにしました。
このWeekly Reportでは、主に以下3点についてまとめていきますので、お時間がない方は気になる箇所だけでも、ぜひご覧ください。
では、早速本題に入りたいと思います。
1. 日別 資金調達件数・金額
2021年の第21週目である5月21日〜5月21日における、日別の資金調達状況を見ていきます。
[資金調達件数]
5月21日〜5月27日の週は、合計93件となりました。
また、1月1日からの資金調達件数の累計は2,138件となりました。
[調達金額]
非公開や曖昧な情報を除き、公開されている情報のみを集計したため、あくまで参考としてのデータですが、5月21日〜5月27日の週では、公開金額合計で70.0億元の資金調達が行われました。
また、1月1日からの調達金額の累計は2,858.1億元となりました。なお、今週の93件のうち63件が金額非公開のため、単純計算すると、今週の調達金額は集計できた金額の約3倍の規模になると考えられます。
2. 業界別 資金調達件数・金額
では、業界別に見ると、どうなっているのでしょうか。
[業界別 資金調達件数]
今週の93件の内訳を見ていきます。
業界別に見ると、法人向けサービスの資金調達件数が最も多く、合計17件となりました。次いで、医療・健康、スマートハードウェア、先進製造が上位に入り、上位4業界だけで今週の件数全体のうち55.9%を占める結果になりました。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、上位4業界の医療・健康、法人向けサービス、先進製造、ローカルライフサービスだけで、全体の58.6%を占めています。
[業界別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度のデータですが、今週は医療・健康、先進製造、法人向けサービス、物流の順に多く、上位4業界で全体の79.8%を占めています。
また、1月1日からの調達金額累計を業界別に見ると、医療・健康、Eコマース、物流、自動車・交通の順に多く、上位4業界だけで全体の58.9%を占めています。
3. 都市別 資金調達件数・金額
続いて、都市別の内訳を見ていきましょう。
[都市別 資金調達件数]
今週の93件を都市別に見ると、北京、上海、深圳、杭州の順にランクインし、上位4都市だけで全体の71.0%を占める結果となりました。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、上位4都市の北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)だけで67.4%を占めています。
また、先週に引き続き、上位10都市のみで累計投資件数の約84%を占めていることから、投資は一部の都市に集中していることがわかります。
[都市別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度にご覧いただきたいのですが、今週は蘇州・北京、上海、深圳の順にランクインしました。
また、1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、北京、上海、深圳、長沙に集中していることがわかります。次いで、先週に引き続き5位以降は蘇州、杭州、広州が競り合っています。
4. ラウンド別 資金調達件数・金額
ラウンド別に見るとどうなっているのでしょうか。
[ラウンド別 資金調達件数]
今週の93件では、シリーズAが33件で1位、戦略投資が23件で2位になりました。これら上位2つのラウンドだけで全体の60.2%を占めています。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、先週に引き続き、シリーズA、戦略投資、シリーズBの順に多いです。シード/エンジェルラウンドの件数も日に日に上昇しており、総じてアーリーステージの企業による資金調達が活発であることがわかります。
[ラウンド別 調達金額]
公開情報のみをもとに集計した調達金額をラウンド別に見ると、戦略投資が最も多い19.2億元となり、全体の27.5%を占めています。次いで、シリーズBが17.2億元で2位となり、全体の24.5%を占め、上位2つのラウンドで全体の52.0%を占める結果となりました。
1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、戦略投資、シリーズA、シリーズDの順に多く、上位3ラウンドでの合計は全体の58.6%を占めています。
5. 今週、新たにユニコーンになった企業
今週は1社が新たにユニコーン企業となり、中国のユニコーン企業数は2021年5月27日時点で292社*になりました。
*ITjuziが公開しているデータのため、その他データベース等がまとめている数値と異なる可能性があります
[企業紹介]
企業名:运去哪
業界:物流
拠点:上海
設立時期:2012年3月
バリュエーション:12.0億米ドル/78.0億元
主要な投資家:源码资本, 红杉资本中国, Coatue Management, DCM中国, 招商局创投, 住友商事亚洲资本, 春晓资本, 星河互联
企業HP:http://www.yunquna.com
运去哪はワンストップの国際物流プラットフォームを提供しており、海運(FCL/LCL貨物)、空運などのマッチング(輸送、保険、税関、倉庫など)を行っています。身近なサービスに置き換えて例えると、航空券を購入する際に、Skyscannerなどのサイトで価格・時間・ルート検討をして購入する方がいると思いますが、运去哪は国際物流ユーザー向けにそのようなサービスを提供しています。
同社は2012年に創業されましたが、すでに100カ国以上をカバーしており、TEU(20フィートで換算したコンテナ個数)は2021年に70万を突破すると見込まれています。また、ユーザーは約2万社におよび、パートナー企業としてアマゾン、ウォルマート、ebay、AliExpressなど、世界トップの小売企業が名を連ねています。
また、同社は2018年11月に住友商事からの出資を受けており、住友商事の豊富なリソースを活用し、国際物流のネットワーク強化に取り組んでいるようです。
個人的には、次のラウンドでソフトバンクビジョンファンドが出資するのでは?と思っています。
6. 今週、資金調達を行った企業リスト
2021年5月21日〜5月27日に資金調達を行った企業は以下の通りです。
今週気になった案件は、薄荷健康による資金調達案件です。
同社は食事・運動・体重管理ができるアプリや栄養食品・食事代替品などを提供しています。元々はインターネット上の食品データベースと体重管理ツールを提供していましたが、ユーザーのニーズにあわせて食品事業にも参入しました。同社のアプリとミニプログラムの登録ユーザーは合計1億2,000万人を突破しており、DAUは200万人、MAUは1,000万人に達しています。同社の食品データベースは63万種類の食材・料理・加工食品のデータ、および150種類以上の栄養素データを網羅しており、1日の平均問い合わせ回数は数千万回に上るとのことです。
栄養食品や食事代替品などの食品事業も成長していますが、最近注力しているのはサプリメントのようです。現在、睡眠前に飲むサプリメントを売り出し中なのですが、これはユーザーの運動状況と体重変化のデータから、「毎日のフィットネス時間が遅くなると、運動後に体が興奮して良質な睡眠がとれず、体重減少と筋肉増強の効果に影響を与える」と発見したことが開発背景のようです。なお、今回調達した資金は主にサプリメント開発に使われるとのことです。
7. 今週末時点での投資件数TOP10の投資家
2021年の投資件数TOP10の投資家は以下の通りとなりました。
※順位の矢印は先週との比較を表しています
テンセントは今週7件の投資を行い、先週に引き続き1位にランクインしました。今週は、メディア、ゲーミングにそれぞれ2件、金融、ローカルライフサービス、法人向けサービスにそれぞれ1件の投資がありました。上記7件のうち、ローカルライフサービスの案件が気になったので、簡単にご紹介します。
今回、テンセントはペットフードを開発・販売する宠幸宠物に出資しました。
元々、中国のペットフード(主食、栄養食品)は外資系メーカーが市場シェアの約4割を占める状態でしたが、徐々に中国メーカーが台頭しており、その中でも同社は栄養食品分野のリーディング企業となっています。
同社はペット(犬、猫)の栄養食品の開発・販売からスタートし、現在では主食事業にも参入しています。2021年の売上は2020年の2倍にあたる、10億元台に達することを目指しています。
中国のペット市場規模は大きく成長しており、2015年から2020年のCAGRは16.1%、2020年の市場規模は2,065億元に達しました。今後も成長が期待されている分野なので、テンセントをはじめ、テックジャイアントのペット市場への関わりについては引き続き注目したいと思います。
以上、今週の中国スタートアップ資金調達レポートでした。
今後も毎週レポートしていきたいと思いますので、よかったらスキとフォローをお願いします。
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竹内 雄登(Yuto Takeuchi)
Twitter:https://twitter.com/yuto_takeuchi01
注:
・本noteは速報の位置付けとしています
・事実を整理し、定期的に投稿することを目的としていますので、特定企業の分析や各社の投資傾向に関する情報が薄くなることはご了承ください
・本noteにおける中国スタートアップは、中国を拠点とする非上場企業を指します
・投資件数・金額およびその他データは本note投稿時点にITjuzi上で集計できたものを反映していますので、後日ITjuziのデータが修正・削除された場合、Weekly Reportの前後で数値のずれが発生する可能性があります。ずれが発生した場合、遡及して過去分を修正しませんので、ご了承ください
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