【連載】家族会議『欲があることを責めたいんじゃない』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。2020年1月6日から約4ヶ月に渡って行った会議の様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
家族会議17回目#5|欲があることを責めたいんじゃない
――ここまでの話で、わたしは父に「世間知らず?」と言った。
上から目線の意味がまったくわからないという父の思考回路では、上から「目線」なのではなく「上」。事実として上なのだから、目上の者らしく、偉そうにするのは自然なことなのだ。だから「上から目線」と言われても意味がわからない。
なぜそんなにも自分が偉いと、特別だと思えるのか‥‥それを考えたとき、わたしの中からでてきたのが「世間知らず?」だった。
当然ながら、父からは反論が返ってきた。
父:
それほど俺が世間知らずでダメだったら、現役の時に成功するはずもないし、お客さんと揉め事がかなり多いはずなんだ。
わたし:
うんうん。程度はあると思うんだけどね、世間知らずの。
父:
だから少なくても、それはなかったと。
わたし:
うんうん。
父:
ほとんど、ないと言っていいわ。ところが一旦この家庭を振り向いたときに、合ってる。それは。
だから、あの長男もそうだし、多分そういうのが多いんだろうと思うんだけど。スイッチというのかな。これをなんで応用できないのか。現役時代の。いろんな所作を。
できないんであれば、このスイッチを切り替えて新たな目で見るという。
わたし:
うん。
父:
その勉強ができてないよね。
わたし:
あのね、現役時代、外でやっていたことを家庭でやってもうまくはいかないとは思うんだわ。全く同じことをやってもね。
父:
全くは同じことはダメだろうね。だからなんつうんだろうな。定年っていうか現役終わるまでに本当、スイッチを切り替える期間が必要なんだろな。
現役の時は、まあ現役だからしゃあないねっていうところはあったのかもしらんけれども、現役終わると、ただの人なんで。
わたし:
現役中もただの人なんだけどね。
父:
その通りなんだけども、やっぱりなんか違うんだ現役と。
わたし:
うんうん。
父:
家庭とのあれっていうのは。
母:
現役っていうのは会社の話だよね?家庭だよね?その間に社会っていうのもあるよね。社会と会社は違うよね。似たような感じするかもしれないけど、やっぱちょっと違うと思うんだよね。会社は会社。会社の付き合いはもちろんある。でも会社と全く関係ない、人間としての付き合いっていうのは社会であるわけじゃん。
父:
人間のコミュニティを言うんだったらば、お父さんそれすらもなかったよ。ないって言ったら語弊があるけど。
母:
ほとんど会社。
父:
うん、ほとんど会社。
わたし:
うん、そうそう。そういう意味での世間知らずっていう感じだな。わたしが言ったのは。
会社って結構、それで成り立つ。目的がコミュニケーションをとることとかではあんまりないから。本当はそれも含まれるっちゃ含まれるんだけど、結構お互いに嫌だなと思っても我慢できる部分もある。
父:
だけど現役から今度、現役終わって社会があって、家庭があってって言ったらさ、社会の方はなんか、即馴染めるような気がするわ。社会でなんか悩むようなことあるかな?っていう感じする。
わたし:
ふ~ん。
父:
そんな違うもんなのかな?
わたし:
まあなんか、社会が会社の延長になってるからだと思う。お父さんの感覚的に。
父:
じゃあ会社と社会って何が違う?
わたし:
うん、まあ、家庭から言えば、会社も本当は社会と一緒なんだけど。
まあちょっと、特殊な成り立ち方をしてきてたのかな。お父さんの話を聞くと。お父さんがなのか時代がなのかわからないけど。
父:
何が違うんだろ?
母:
社会と会社?会社は上下関係とか、お金だけじゃないけど、お金が大きく絡んでるけど、社会は全く上下関係はないよね。みんな平等。人間同士の付き合いみたいな。
父:
いや、だからそこは全然抵抗ないんだって。あの会社終わって、上下関係かざす人いるよ?俺の上司みたいに。それ嫌だ。だから、全然対等だ。まさしく。なんの抵抗もない。そこは。
わたし:
あー。いや、前も言ったと思うけどさ、お店に行ったときに初心者マークつけた学生の店員さんにでかい態度とったじゃん。
俺は客だぞ。年上だぞ。社会の経験者だぞみたいな。そういうのめっちゃ振りかざしてる感じだなと思って。うわって思って。
だから会社の延長になってると思うっていったのは、そういうところの態度を見ててって感じ。お父さんが社会の人たちと、お付き合いを対等にしているように見えてなかったというか、ランク付けしてるなって。人を。
だから会社の延長だなって思ったって感じなんだよね。
あれってなんでなんだろう?ランク付けじゃなかったら、ただモタモタする人が嫌い?まあ、それもあるかもしれないけど。
お父さんて、新人じゃなくてもさ、店員さんとかに大きい態度とるみたいなところあるよね。お父さんはなんか、常に上下関係で人を見ている人なんだなって見てたっていう感じ。
父:
‥‥自分を壊すしかないねこれ。
わたし:
まあ、こう言うとそうなっちゃうんだよねっては思うけど‥‥
父:
なんか、そういうことがあったこと自体も忘れてるな。泉が鮮明に覚えてるっていうのが。
わたし:
わたしはだって、もう衝撃っていうか、すごい嫌だなって。かわいそうだなって思って見てたっていうか。わたしもフォローすればよかったけど。
父:
そうですか‥‥わかりました。
- 今日はここまで -
自分を壊して欲しいのではなくて、自分を知ってほしいだけ。自分がどんな人間であるかを。
上下関係かざしてくる人が嫌な一方で、自分もそれをする人間だと。人にされて嫌なことを、自分も人にしているということを。
父の中ではいつも、そこがつながらない。
まるで自分が見えていない。
欲は誰にでもある。
父に権力欲があることを責めたいんじゃない。
自分にもそんな欲があることを知ってほしいだけ。
そしてそれを無意識にふりかざしていることに、気づいて欲しいだけ。
それをされた相手が、嫌な思いをしていることに気づいて欲しいだけ。
(あわよくば、そこを治して欲しいけど)
自分は謙虚な人間であるとすら思っている父の中の矛盾だけでも、なんとかしてほしい。
そうでないと、いつまで経っても話が噛み合わない。
<次回に続く>
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