【連載】家族会議『親と子の言葉のハンデ』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。その様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
家族会議8日目#2|親と子の言葉のハンデ
――前日の不毛な話し合いを整理して、話しの本質の再確認から始まった8日目の家族会議(昨日の記事)。
結局のところ、父も母も、幼少期に満たされなかったことで大人になりきれず、夫婦関係が上手くいかないのだという結論に至る。毎度のことだけど。
わたし:
小さい頃の話に戻ろうか。
母:
わかりました。親にしてもらいたかったことを聞きたいって泉が言ってたんだよね。
わたし:
あ、うんうん。出してくれた「親にしてもらいたかったこと」に関して、1個1個もっと
母:
詳しくやりたいってことだよね。
わたし:
でもお母さん、新たに「親にしてもらいたかったこと」が出たってことなんだよね?
母:
すごく絞ったの。絞り出したけれども、まだなんか、その頃の子供の気持ちには至ってない感じがするんだけど、とりあえずね。
私を丸ごと認めて欲しかった。あと、押さえつけるだけでなく、私を抱き寄せて私の気持ちを聞いて欲しかった。
わたし:
うん。
母:
これは2、3歳あたりから、私の気持ちを聞いて欲しかった。どんなときも私の話を聞いてほしい。どうしたの?と聞いて欲しかった。私の目線でじっくり。
みたいなことなんだけど。おばあさんは心配してたと思う。そういうことをしてると、わがままになるんじゃないかとか、そういうので押さえつけられたのかなって。
わたし:
うんうん。
母:
だけどそれに対しても、「お母さんが心配するほどひどい子にはならなかったと思うよ」っていうのが私の気持ち。
わたし:
うんうんうん。
母:
「おかあさんの子供だから、結構素敵な子供になったと思うよ」って。「そんなに厳しくしなくても」って。
でも厳しくっていうか、ストレス発散に利用されてたっていうのも結構多いと思う。ちゃんとした子にしようっていうのもあるし。
わたし:
そこにプラスしてストレス発散が乗ってくるってことだよね。
母:
うん。発散してた。いかにも良さそうなこと言ってるけど、実はストレス発散だっていう。結構多かったんじゃないかなと思う。
もちろん、大事にされた感じとか、温かい気持ちになったこともあるけども、イライラをぶつけられただけではないけども…。
わたし:
うん、うん。
母:
「心配しなくても大丈夫だと思うよ」みたいな。まだなんか本当の子供の気持ちは出てきてないのかなと思うけど、一応、絞り出すみたいな感じで出てきたんだけど。
わたし:
とにかく、もっと聞いて欲しかったっていうのが一番なんだね。
母:
そうだね。
わたし:
気持ちを受け止めて欲しかったというか。だからやっぱり、言い足りないことがいっぱいあるのかもね。押さえつけられて言えなかったものが、いろいろ溜まってるってことだよね。いつも「うっ」って止められちゃって。
――子供の頃って、自分の気持ちがうまく言葉にならなかったりする。反論したくても、うまく反論できなかったりする。
大人は、子供との間に言葉の技量差があることを自覚して、ハンデを与えてあげなければ不公平だろう。そうでなければ、大人が言い負かせるのは当たり前のことである。
母と祖母との間には、そうした不公平によるわだかまりがあるのだった。
わたし:
なんかおばあちゃんのさ、温かく感じた部分ってエピソードなにかあるの?
母:
そうだね、学校から帰ってきたときとか、昔はレンジとかないから、ご飯とかおにぎりとか、そういうものを、こたつの中で温めておいてくれた。冬とか。
わたし:
へえ~!うんうん。
母:
なんかそれは、思い出しても温かい気持ちになるっていうか。こたつに入れて待っててくれて、帰ったときにそういうのを出してくれて、食べた。
わたし:
そのエピソードだけでじわってきちゃう。温かいね。
母:
うん。笑
あと、おじいちゃんが入院して、わたしがご飯炊きをするようになったときに、エプロンを作っといてくれたこと。
わたし:
この前も言ってたね。それっておばあちゃん的にどういう気持ちなんだろうね。
母:
手伝ってくれるから、みたいな感じで作ってくれたのかな?
わたし:
汚しちゃいけないしとか??
母:
そういう感じはあんまりしなかった。
わたし:
じゃあ、プレゼント的な感じなんだね?
母:
そうだね。
わたし:
頑張ったご褒美。お母さんはどんな気持ちだったの?
母:
朝起きたらあって
わたし:
へえ!サプライズ的にあったんだ。
母:
その頃、10歳にもなってないけど、おばあちゃんはそのときは、よその家に働きに行ってたから夕御飯のご飯を炊くって感じで。おかずとか味噌汁はおばあちゃんが帰ってきてからたけど、ご飯だけは炊いとくっていうのをやってたから。やってることも、おばあちゃんはすごく褒めてくれてたな。
わたし:
そうなんだね。褒めてくれることもあったんだね。
母:
そうだね。薪だしね。
わたし:
薪!そうか大変な作業なわけね。今みたいな、スイッチぽんじゃないんだ。
母:
うん、そうだね。水加減を教えられて。あれも慣れるとわかる。っていうかやってたんだからできるんだな。
わたし:
なんかエプロンって、特別な感じなの?大人になった気分とか。
母:
大人というよりは一人前に。大人か?
わたし:
認められた感じ?
母:
認められた感じかな。手伝ってるから、ご褒美っていうか。手伝ってるからエプロン。みたいになったのかな?
わたし:
子供のおままごととかでさ、エプロンつけたりするのって、ちょっとウキウキするじゃん?
母:
そうか。お母さん役とかするのは
わたし:
そうそう!
母:
やりたがったりするね。「子供役はやだよね」とか。
わたし:
ちょっと憧れっていうか、お母さんって。そういう存在だから、何かそういう気持ちとかもあったのかな?と思って。そういう嬉しさとか。
母:
嬉しい。そうだね。とにかく、おじいちゃん入院してるし、おばあちゃん働いてるから、何か役に立とうって感じっていうか。
おばあちゃんに教えられたんだと思うんだけど、役に立ってる感じが、自分的にはそうだね、ちょっと大人になった感じ。できるから。
わたし:
やるときはやったんだね。お母さんほら、「誰誰ちゃんはお弁当作ってるって言われてもやらなかった」って。
母:
それは中学校とか、高校とかあたりだな。そう、おじいちゃんが退院してきてからはやらなくなった。
わたし:
そうなんだね。単純に、家のために私もやらなきゃって、子供心に思ったんだね。おばあちゃんを手伝わなきゃみたいな。「うち今大変なんだ」みたいなのを、何か感じてたのかな。
母:
そうかもしれないね。
――祖母は基本的に、愛情を持っている人だと思う。だけど過度に世間体を気にするあまり、子供よりも周囲の目を気にした。
さらに祖母が忙しかったのもあったし、母自身が気持ちを上手く言葉にできなかったのもあって、子供のころの母は、気持ちを聞いてもらえなかった感覚があるのだ。
それでも、祖母の温かみを感じるエピソードもある。それがあるから母は、愛情を持った大人に育ったのだと思う。
- 今日はここまで -
親だって、大人だって、完ぺきではない。子供のことよりも、自分のことを考えてしまうこともある。大事なのは、偏らないことかもしれない。自分も子供も、どちらも尊く、どちらも大切にすべき存在だ。
<次回に続く>
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