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「変化」が生まれ続ける学校でありたい


去年の春にスタッフ3人が出会ったとき、
「どんな学校を創りたいのか」
とことん話し合った。

その中で出てきたのは

「子どもたちの”好きなこと・やりたい”ことをしながら思いっきり学べる環境を作りたい」

という共通の想いだった。

参考にしたい学校のカタチは
「きのくに子どもの村学園」と
「サドベリースクール」だった。

きのくには私立の学校で、独自のカリキュラムがあり「プロジェクト型学習」が魅力的な学校。基礎学習の時間も設定してある。

一方、サドベリースクールは、カリキュラムもテストもない、完全にゼロから子どもたちと話し合いながら作り上げていく民主的な学校だった。

元教師ということもあってか、私はなかなかサドベリースクールのようにカリキュラムがない学校に踏み込む勇気がなかった。

どうしてだろう。。。

自分の心と向き合ったとき、子どもたちが「自ら学びに向かう力を持っている」ということを心の底から信じ切れていない自分に気がついた。

やっぱりどこか「何も与えない」という環境に「不安」があったのだ。

そんな自分の思考に気づいたとき、「だったらとことん子どもたちを信じて待つ姿勢でいよう」と自ら決意した。

それから、今年の6月に週2でスタートした「ここのね自由な学校」は、カリキュラムもテストも時間割も宿題も何もない、あるのは「朝のねっこ」(朝の会)と「帰りのねっこ」(帰りの会)だけで
本当にゼロから子どもたちと共に作る学校としてスタートした。

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9月になり、週に3回の活動に増え、子どもたちも少しずつ増えてきた。

色んな大人が関わってくれるようになり、運動講座や食の講座も開かれ、遠足や外遊びなど活動の幅も増えてきた。子どもたちの笑顔も増え、仲もどんどん良くなり、何もかも順風満帆のような気がしていた。

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でも、どこかで3人が引っかかっていたことがあった。

それは、子どもたちが活動中にタブレットやテレビを使った「ゲーム」を使う時間が思っていた以上に長いこと。

「今日はこういうことをするよー!参加したい人は来てねー!」

スタッフがそう呼びかけても、ゲームに夢中で見向きもしない子もいた。

でも、ここのねは、「自由」な学校。だから、子どもたちの「好きなこと」「やりたいこと」を尊重しなければならない。スタッフの考えを押し付けてはいけない

そう言い聞かせていた私たちがいた。

子どもたちの「自由」を尊重しようとするあまり、自分たちの「自由」をいつの間にか制限していたのだ。


そんな状況が続いたとき、スタッフの中で「ゲームの付き合い方について子どもたちとミーティングをしたい」という声が出た。みんな同感だった。


ここのねにせっかく通ってきてくれている以上、ここでしかできない体験、学びにもっと触れてほしい。

そして、ここに通うためにおうちの人が毎日遠くから送迎してくれていること、働いて毎日の学費を払っていることを一度考えた上で、ここでの自分の過ごし方を考えて欲しい。

私はそう思っていた。


では、どうやって子どもたちに伝えるのか?

「突然、『ゲームを三日間禁止にしたい!』と投げかけてみるのはどうだろう?」

「いや、まずは子どもたちに向けて改めて『ここのねはこういう学校です』っていう説明をしなきゃじゃない?ちゃんと伝わってないんだと思うよ。」

「うーーーん。そもそも、ゲームより魅力的なことを提案できていない自分たちの問題なんじゃないかな…」

色んな意見が出て、何日もまたいで話し合っても、どう子どもたちにアプローチをすればいいのか、結論が見えなかった。

そんな中でも活動は日々続いていく。

モヤモヤした気持ちもどこかにありながら、とにかくその日その日の子どもたちと向き合う日々だった。


そんなある日の帰りの会。

その日は、フリーマーケットの日で、お客さんが何人かここのねにきて商品を買ってくれた。

その中でお客さんが「ここのねの子どもたちに寄付をしたい」と言って

ここのねに通う子どもたちの未来の学費になる『ここのね未来チケット』(一口1000円)をその日のうちに3枚も購入してくれた。


それを帰りの会の「お知らせコーナー」で子どもたちに紹介していたとき、
堰を切ったように自分の想いが溢れた。

ここのねで過ごす時間、学ぶ時間をみんな本当に大切にできているのかな?

「今日の夜、明日ここのねでこんなことしてみようかなと、一つでもいいから、思いつかなくてもいいから少し考えてきて欲しい。私たちスタッフも考えてくるからね。」

そう子どもたちに呼びかけた。


次の日の朝のスタッフミーティング。

前夜に考えてきた「一日の活動のプラン」を出して、「今日は子どもたちにこんな提案をしたい」という私。

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それに対して
「でも、まだ子どもたちに学校の説明もちゃんとできていないのにこちらがどんどん提案することが果たして本当に良いのかなって思うんだ」
と、こうちゃん。


「いや、それもわかるけど、そう言っててずるずる時が過ぎてるんじゃない。理論がわかるのは体験してからでもいいと思うよ。」

と、私。

どんどん白熱する私たち。

すると、横で聞いていたももちゃんが

どっちもすごく大事だと思う。体験だけでも足りないし、理論だけでも足りない。どっちが先とかじゃなくて、どっちも同時でいいんじゃないかな。私たちって3人とも完璧を求めすぎちゃうところがあるよね。だけどもう、人間臭く、自分に嘘つかないで、今から子どもたちにそのまま伝えようよ。」

そう言いながら「涙出てきたわ。いいチームやなと思って。」と涙するももちゃんにつられて、私も涙。朝9時から教育のことでこんなに熱くなれるっていいなと思った。

そのあとの朝の会。先にこうちゃんが話し始めた。

「みんなに質問。この中で今自分は自由だー!って思う人は手を挙げてー!」

首を傾げながらも数人が手をあげた。

「そっかそっかー。ここのねはね、『自由を使いこなせるようになる』ための学校なんだ。みんな、なんで勉強しなきゃいけないの?って思ったことない?
 学ぶっていうことは、自分の中で何か知っていること、わかることが増えるっていること。
 今、目の前に水筒があるよね。これが水筒だって知っている人は、喉が乾いたときに水筒の中にある水を飲むことができるけど、これが水筒だって知らなかったら喉が乾いていても水は飲めない。知ることは、自分の選択肢を広げることであり、自分の世界を広げることでもあるんだよ。そのために学ぶんだ。自分の選択肢を増やし、『自分が生きたいように生きる』ために学ぶんだよ。

こうちゃんが子どもたちに時に面白おかしく、とてもわかりやすく、熱く語ってくれた。

そして、次は私。

「今日、みんなとこんなことしてみたいなーと思って考えてきたよ。」

数日前からスタッフで話し合ってきた三つの枠に合わせての提案。

「カラダとココロの時間」には、新聞紙を使って楽しく身体を動かそう!
「出会う時間」には、自分の興味があること、自分の世界が広がることを学ぼう!
「つくる時間」には、「落ち葉アート」や「本棚作り」をしよう!

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その日を皮切りに、子どもたちがいつもよりも積極的に活動に参加するようになり、「これをしたい」という気持ちも大きくなったように感じている。

ゲームとの向き合い方についてのミーティングはまだできていないけれど、
自然とその時間は減ってきている。

こうやって、自分の意思で時間をコントロールできるということが生きる上でとても大事な力になってくると思う。


そんな姿を見ながら、やっぱり私たち自身がもっともっと自由に、自分に正直に子どもたちに想いを伝えていくことが大事だなとつくづく感じた。


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目に見える「学力」保障にいつのまにか縛られ、カリキュラムがないことに不安を覚えていた私が「子どもたちの学びに向かう力を信じよう」と心に決め、カリキュラムへのこだわりを捨てた、去年の冬。

でも、今年の春から子どもたちと関わっていく中でスタッフから出たのは、子どもたちの内側から出てくる「やりたい!」を大事にするのなら、スタッフの「やりたい!」も大事にしたいという想いだった。

そして、スタッフが子どもたちにこんなこと学んでほしいな、こんなことを子どもたちに伝えたいなと思ったことをカタチにした。

「カラダとココロ」
「出会う時間」
「つくる時間」

この3つのカリキュラム。

こうやってどんどんここのねは「変化」していく。それが魅力であり、おもしろいところだと思う。そこにいる子どもたちとスタッフと関わる人みんなの色が混ざり合っていつも新しい「変化」が生まれ続ける学校でありたい。


2021年4月の本格的な開校に向けて、また一歩、大きく近づいた気がした。


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