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短編・雑言

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#香水

どこで誰と泣く

どこで誰と泣く

天使も悪魔も、きっとひとが亡くなったら泣くのだと思う。存在が危ぶまれた大切なものに対して、ひとは泣く。段々と匂いが消えていく過程に涙の味を感じる。香水のラストノートばかりが鼻に残り、新宿の香水やさんの前には鮮やかな香りがこれでもかと倒れている。自分の愛している香りは2つしかない。アンパンマンみたいな甘くて顎が持ち上がるような名前も知らない聞けない香りと、雨の日のお寺のような竜涎香だけ。香りを嗅ぐと

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