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どこで誰と泣く

天使も悪魔も、きっとひとが亡くなったら泣くのだと思う。存在が危ぶまれた大切なものに対して、ひとは泣く。段々と匂いが消えていく過程に涙の味を感じる。香水のラストノートばかりが鼻に残り、新宿の香水やさんの前には鮮やかな香りがこれでもかと倒れている。自分の愛している香りは2つしかない。アンパンマンみたいな甘くて顎が持ち上がるような名前も知らない聞けない香りと、雨の日のお寺のような竜涎香だけ。香りを嗅ぐときに目を閉じる君は無防備すぎて強さを感じる。お鼻をなるべく近づけようと鼻筋の高さが一番美しく見える角度を教えてくれる。肝心の匂いを嗅ぐ時の音はすこしだけ情けない。愛おしさはどこに発生するのか、逆位相とはまた違う、相加相乗平均だと思うときもあった。人の好みとは桁違いのあたたかさが愛おしいという気持ちに詰まっていると思う。涙の味と香りまで。

流行り病で熱で参っていた時に書き溜めていたらしい散文だった。

夏はアイス、秋は焼き芋、冬はおでん、春はさくらもちを食べます