ファンとV6に共有されていた「思い出」を彩るV6 For the 25th Anniversary〜閉鎖・宇宙・空間・'10年代〜
V6ファンの度肝を抜いたV6 For the 25th Anniversaryが配信されて1ヶ月が経とうとしている今日,ボクもその例に漏れず「V6と出会えた人生で良かった...」と改めて思わされた1人であり,特に今年にかんしては例年以上にV6の曲を聴きまくって元気をもらっていただけに色々と思わせられたり感じるところがあったのでこのnoteを書いている。
ライブが生配信されたのは彼らのデビュー日である11月1日。日曜日のこの日とその前の土曜日は1日中,学会の仕事をやったり修士論文の構想発表の準備などをして色々と忙しかったけれど,この日のこの時間は必ず死守しなければならないということで,数日間はライブの時間帯から逆算しての生活を送っていた。研究者は自分の研究にどれだけ時間をかけてもかけすぎることがないので,ついうっかりプライベートの時間が0になることも多々あるのだ。
ボクが「あーなるほど。」と印象深く思わせられたのはリピート配信のとき。この日の前日,お母さんに「V6のライブめっちゃやばかった!!」とリモートワーク中心であるが故に今まで誰にもぶつけられなかった熱い感想を,にわか以上ファン未満の母にぶつけていたこともあって一緒にリピートを観賞した。ライブを観たファンなら1曲目の『Right Now』,オープニングと登場を挟んでの2曲目『KEEP GOING』で止まぬ興奮と1秒たりとも画面から視線を外す隙間をも許さない時間のなかにいたはずだ。ボクの母も「全然老いを感じさせないねー」「かっこいい」とコメントしていたのだが,コアなファンなら「きたきたきた!!!」と思わせられる9曲目の『Swing!』あたりで,「全然知らん曲ばっかりじゃん」と言い,席を外してしまった。
そう,今回は今までV6にどれだけ熱中していたかどうかでだいぶ抱く気持ちの異なるライブだったのだ。20周年のときの全シングルを披露しファンや世間の人たちに共有されている曲を中心に組んだライブのときとはワケが違う。
ボクのまわりにはV6ファンが全然いないので今までに全くぶつけられなかった感想を,このライブを観る以前のおよそ10年間の思い出と共に残したいと思う。
*参考資料<25周年ライブと20周年ライブのセトリ>
「V6 For the 25th Anniversary」ライブセトリ
1) Right Now
2) KEEP GOING
3) Supernova
4) SILENT GALAXY
5) Wait for You
6) サンダーバード -your voice-
7) 星が降る夜でも
8) ある日願いが叶ったんだ
9) Swing!
10) SPOT LIGHT
MC
11) All For You
12) PINEAPPLE
13) TL (inst dance)
14) GOLD
15) Can't Get Enough
16) Air
17) It's my life
18) SPARK
19) Super Powers
20) WALK
21) 羽根~BIGINNING~
<FC限定>
MC
22) 明日の傘
MC
23) クリア
24) Full Circle
「V6 LIVE TOUR 2015 -SINCE 1995〜FOREVER-」 ライブセトリ
1) Wait for You -SINCE 1995〜FOREVER ver.-
2) MUSIC FOR THE PEOPLE
3) Supernova
4) Air
5) 太陽のあたる場所
6) Can do! Can go!
7) SPOT LIGHT
8) グッデイ!!
9) HONEY BEAT
10) Honey - 20th Century
11) 涙のアトが消える頃
12) GUILTY
13) キミノカケラ - Coming Century
14) will
15) SP "Break The Wall" feat.V6 & ☆Taku Takahashi(m-flo)- REVOLUTIONS
16) 39 Symphony
第1楽章 Orange〜COSMIC RESCUE〜IN THE WIND
第2楽章 Sexy.Honey.Bunny!〜愛なんだ〜kEEP oN.〜WAになっておどろう〜バリバリBUDDY!
17) 39 Symphony
第3楽章 メジルシの記憶〜ジャスミン〜野性の花〜蝶〜GENERATION GAP〜本気がいっぱい〜Believe Your Smile
第4楽章 over〜愛のMelody〜Darling〜スピリット
第5楽章 君が思い出す僕は 君を愛しているだろうか〜Timeless〜Sky's The Limit〜ROCK YOUR SOUL〜TAKE ME HIGHER
第6楽章 出せない手紙〜UTAO-UTAO〜ありがとうのうた〜Wait for You〜 〜此処から〜
ENCORE1
18) TAKE ME HIGHER
19) MADE IN JAPAN
20) CHANGE THE WORLD
ENCORE2
21) BEAT YOUR HEART
22) ミュージック・ライフ
ENCORE3
23) HELLO
6人だけの空間からボク(ら)だけにパフォーマンスをしてくれている感触
これまでに「Johnny's World Happy LIVE with YOU」などといった有料配信をいくつか観てきた中で今回のV6ライブから抱いた感想としては,本来そこにいるはずだった客席にいるファンたちに向けて...というよりも,まるでPVや客席のない音楽番組のように,6人だけの空間が織りなし,画面の向こう側にいるボクらファンに向けて届けてくれている感覚が非常に強かった。
例えば嵐の国立でのライブではアリーナやスタンドの客席に手を振ったり目配せをして本来「今,ここ」にいるはずであったファンたちを意識させる場面が随所にあった一方で,今回のV6のライブでは代々木の空間にメンバー6人以外誰も入れないような特別な世界が広がっており,客席が映し出されるのは『Swing!』と『SPOT LIGHT』のみであった。それ以外はそれまで客席のあったアリーナのところまで広くLED液晶の施されたステージが広がっていたり,スタンドを通って全く別の世界観のある空間へ移動したりしていた。
このような,閉鎖感のあるきっと今年独自の特別な世界観は,代々木に建てられたステージ(特に衣装チェンジする『Swing!』前まで)が全体的にまるで”宇宙”を意識したかのような構造・デザインになっているからなのだと思う。それに,曲もまるで宇宙を感じるような曲が多かった。
1) Right Now
2) KEEP GOING
3) Supernova
4) SILENT GALAXY
5) Wait for You
6) サンダーバード -your voice-
7) 星が降る夜でも
8) ある日願いが叶ったんだ
▶︎厳密にいうと宇宙ではないけど,PVでは流れ星とか非日常感があった。
9) Swing!
宇宙という容易には侵入できない閉鎖的かつ超越的な空間からパフォーマンスを届けファンをそこへ誘うこの世界観は「ファンのための」と銘打ったライブにとってハマりにハマりまくった表現であった。
そして,我々ファンにとって曲選抜・セトリも無視することはできない。前情報を仕入れずにライブを観るボクはその直前まで今回は「あのシングルはちゃんとセトリに入ってるのかな」など,アニバーサリーライブなのであくまで大衆向けに構成された曲が選択されるのかなと思っていた。なので,『Believe Your Smile』とか『Darling』とか『TAKE ME HIGHER』はきっとマストで入っているだろうし,『ありがとうのうた』とか入ってくれるといいなーだなんて期待していたのだけれど,実際はその予想の遥か上を超えていた。
やれ『SILENT GALAXY』だったり『サンダーバード -your voice-』を更新して聴けるとは思わなかったし,締めには『羽根〜BEGINNING〜』で,どの曲にも密かに抱えていた思い出をもう一度引き出してくれるような楽曲ばかり。『SILENT GALAXY』なんて10年前のアルバムの通常盤限定トラックであり,どのライブでも披露されることのなかった”伝説”と位置付けても良いくらいの隠れた名曲だ。
ボク個人でいうと,今回のセトリは基本的に2010年代の曲で構成されていたことが非常に感慨深かった。00年代の曲はそれこそ『サンダーバード -your voice-』('04)や『Swing!』('08),『明日の傘』('09)しかない。ボクのV6にどハマりするきっかけは2010年のアルバム『Ready?』に収録されている『Air』を中2のときに聴いて「これはヤベー」と,彼らの大人な感じに一気に引き込まれたことがきっかけだった。なので,今回のライブでも『Ready?』のアルバムに入っている曲や,そのときのライブで披露された曲が採用されていて,本当に嬉しかった。
きっとこれはV6ファンならきっと強く「分かる!」と思ってくれることだろうが,V6の楽曲などでお互いの感想を共有できる人が周りにいることは,そうそうない。Twitterにはめちゃくちゃファン(最近はあまり聞かないけどVクラといわれる人たち)はいっぱいいるのに,それが幻かと思えるくらいにリアル世界にはいない。それに加え,ボクは世にも珍しい,アルバムやライブにまで目を通すほど(少なからずにわかの域にはいない)V6を愛しているファンであることと,当時まだ中高生であったことから周りにV6が好きでコミットしている友人は誰もいなかったし,皆かすりもしていなかった。ボクの友人はみんなボカロやロックの方面へと走っていた。
そういうこともあって,V6に抱く想いであったり「あの時期にこの曲聴きまくったなー」といった思い出はずっと1人で胸に秘めていた。高校の入学式を終えてのあの時期はずっと博の『桜色桜風』を聴きまくっていた男子高校生は自分しかいないのではないかと今でも思っている。だからこそ,25周年ライブでは胸を熱くさせるような場面がいつも以上に多くあった。セトリのなかでカップリング曲とアルバム曲(アルバムのみに収録されている)は以下の太字である。
*『Swing!』はW-Asideの曲だけど,音楽番組で披露された記憶が全然ないので『All for you』とは別処理でカップリング/アルバム曲扱いにした。
*『クリア』『Full Circle』は新曲でまだリリースされていない。
「V6 For the 25th Anniversary」ライブセトリ
*カップリングとアルバムのみの収録曲は太字
1) Right Now
2) KEEP GOING
3) Supernova
4) SILENT GALAXY
5) Wait for You
6) サンダーバード -your voice-
7) 星が降る夜でも
8) ある日願いが叶ったんだ
9) Swing!
10) SPOT LIGHT
MC
11) All For You
12) PINEAPPLE
13) TL (inst dance)
14) GOLD
15) Can't Get Enough
16) Air
17) It's my life
18) SPARK
19) Super Powers
20) WALK
21) 羽根~BIGINNING~
<FC限定>
MC
22) 明日の傘
MC
23) クリア
24) Full Circle
半分以上,14/24がファンしか知らないような曲である。シングルにおいても『MUSIC FOR THE PEOPLE』や『WAになって踊ろう』,『HONEY BEAT』などの超有名どころが一切ないので下手すると非ファンはどの曲もかすりとも聴いたことないかもしれない。
どの曲もめちゃめちゃ聴き込んで,友人たちとのカラオケでは皆知らないから曲選ぶのを控えてヒトカラでめっちゃ歌いまくった曲であって,そのなかでも自分の中高時代を支えてくれたのが『星が降る夜でも』や『WALK』,『羽根〜BEGINNING〜』。『星が降る夜でも』はテスト勉強がうまくいかなさすぎてこれを聴いて泣きながら寝たことを今でも覚えている。大学に入ってからは『サンダーバード -your voice-』を改めて聴いてこれは名曲だと聴きまくり,冬のバイト終わりにスタバの熱いビバレッジを飲みながら『Right Now』を聴いて帰ったことも懐かしい。
宇宙を意識した前半よりも以降も,客席の空間を映さずに全てが彼らだけのステージ・空間となっていた。『ある日願いが叶ったんだ』で映像だからこそできるAR演出を魅せ,『SPOT LIGHT』で代々木をセグウェイで駆け巡り,『All For You』ではPVを連想させる積み木のような歪に並べられた空間で魅せて,『Can't Get Enough』や『Air』では通常通りお客さんが入っていたら絶対に実現することのなかった閉鎖的な鏡の空間や光のトンネルを巡り,最後の『羽根〜BEGINNING〜』では6人を包む雨と重ねられた映像と演出で現実と想像を織り交ぜてボクらのそれまでの感覚を撹乱させられる。Johnny's officialのteaserで剛くんが言っていた「配信ならではの...」という構想が見事に実現されていた。
お客さんが入っていたら実現しなかった演出,それも6人だけにセットされた空間のなかでV6とファンの間で密かにけれど熱く思い出として互いに抱いている大切な曲を披露したことに今回のライブの熱さというかエモさというか,興奮と感動を感じさせるものがここにあった。
いま と これから のV6と「思い出」
音楽メディアの記事のなかで「“いま”のV6を伝える、攻めのセットリスト」という見出しがあり,この「攻め」の心としては『KEEP GOING』や『Super Powers』といった疾走感や『All For You』の全編英語をピックアップしている。このような一面もある一方で,ファンとしては”いま”のV6がファンそれぞれが大切に抱いていた思い出を引き出してくれて,アニバーサリーライブという節目の年のなかで,偶然か必然かV6を愛するようになったファンを第一に尊重してファン一人ひとりに向けた構成・演出を組んでくれたという一面も語らずにはいられない。
今年はアニバーサリーイヤーなので例年以上の注目が集まる年になるので,誰しもが知っていて楽しませることのできる最大公約数的な楽曲を選抜していけば,無難にファンをはじめ観る聴衆を満足させられるはずなのに,ファンにとっては唯一無二で思い出深くて,大切にしてきた曲たちを一般的な知名度の有無にもかかわらず,それを中心に選んでくれたという点で「攻め」であるとボクは感じている。
近年のジャニーズは”25周年”というフレーズにドキッと思わされてしまうような事態が何度か起きていた。そんな昨今でいのっちは今回の代々木での公演を「今回を102回目ではなく、新しい1回目にしたい」と言って,これからの未来までをも示唆してくれている。
今後もずっと変わらずV6はV6として多くの人たちを魅了し続けてくれて,ボクらにとっても今後の新たな人生の旅路においてきっとまた新たな思い出を与えてくれることなのだろう。
ーーー
⭐️ この記事に興味を持ってくださった方々へ
「”ジャニ男タ研究者”のジャニーズ史」と「AMto. J」について
この記事が収録されている「“ジャニ男タ研究者”のジャニーズ史」では東京工業大学大学院で男性ジャニーズファンやジャニーズ,男性について研究している私(小埜)が,男性ジャニーズファンの当事者として今まで1人でジャニーズを楽しみ,何を感じてきたのかについて振り返ってみたり,ただただ思いを綴ったりしています。
そして,ジャニーズのある人物や楽曲やグループなどについてボクの研究分野(文化人類学/社会学/ジェンダー)などを絡めて,そこそこマジメに考察してみる記事を以下の「AMto. J」にて更新しております。
ーーー
Twitter:
https://twitter.com/KoKi_OnO_
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?