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【面白数学】12 -朝の階段ベクトル
コロナ前。
満員電車で通勤が当たり前だったころの小田急新百合ヶ丘駅、朝。
いつも頭の隅で気になっていたことがあった。
乗り換えのためには、階段を上り下りしてホームを変えなければいけない。そのときに、階段のところで渋滞して進まなくなるのだ。気持ちの急いている感じと反比例するかのような“進まなさ”にイライラしてしまっていた。
いつにも増して進まないある日の朝、いい機会なので、これなんで渋滞する
【面白数学】11 -フジロックの帰り
とある年のフジロックの帰り。
越後湯沢駅までの帰りのバスに乗るための列が、長く長く続いていた。
時刻はお昼過ぎ。7月下旬の猛暑だ。
フジロック恒例の雨に見舞われた三日間が嘘のように晴れ渡っている。
いったいいつになったら乗れるのだろうか?
牛歩でしか進まない列の中、タオルを頭にのっけて気休め程度の日除けをしながら考えていた。
バスは巡回しており定期的にやってくる。何やらほぼ等間隔くらい
【面白数学】10-関数はfunction
「基本は大人になってから」
これは佐藤雅彦先生の『毎月新聞』におさめられている、あるコラムのタイトルです。
このコラムでは、円周率とは何かを先生の事務所の方つまり大人に教える、という場面が描かれています。
缶にテープを巻きつけ、ちょうどぐるっと一周したテープの長さと缶の直径をそれぞれ測ります。そしてテープの長さを缶の直径でわると、そう、3.14が出てきます。
「円周率って、円周の長さと円の
【面白数学】09-日本の間 ロンドンの層
大学4年の2月末。僕はロンドンにいた。
坂研のみんなが1年かけて準備してきた、フィンランドの建築家アアルトの展示を見るためだ。
自分は春学期で坂研をやめていた。佐藤研で「日常にひそむ数理曲線」のプロトタイプを仕上げるためだった。銀閣寺に憧れ、建築を志した自分としては、自ら下した決断とはいえ少なからぬ後悔の念を持っていた。ヒースローからロンドン中心部へと向かう途中、思いがこみ上げた。
展示の場
【面白数学】08-紀尾井町の雨宿り
ある夏の夕暮れ。
霞が関駅をおりて紀尾井町のブックカフェでのイベントに向かって歩いていたとき。
雨の前兆ともいえる独特な湿った匂いがしてきた。
空を見上げる。
自分の真上は晴れているけれど、ちょうどこれから向かう先の空には、濃灰の不穏な雲たちが厚く群がっていた。ゆらゆらとこちらに流れてくる様が如実にわかる。
近年の東京の夏にありがちなゲリラ豪雨の予感だ。
イベント会場まではまだ少しある
【面白数学】07-バラバラになったコピー
ベネッセに入って1年目。
教材の企画を説明する大人数の会議に向けて、会議ギリギリまで粘ったパワーポイントの資料を複合機でコピーしているときだった。
やばい、ギリギリ。
気持ちが焦る。会議まであと5分のときだ。
早くコピー終わってくれ!と通じぬ思いを複合機に送りながら、できたものからホチキスで留めようと取り出した。
そのとき!
バラバラバラバラ...
うわああああ、最悪。
慌てる気持ち
【面白数学】06-忘れ物の文章題
高2の秋の朝。
いつものようにギリギリの時間に家を出て、駅に向かっているときだった。
電車通学。遅刻ギリギリの電車までは、あと1本余裕があるが、できれば1本前の電車に乗りたい。
家から駅まではおよそ徒歩10分の距離。だいたい半分くらいまで歩いたところで気づいた。朝に起こる最悪の出来事の1つが起きてしまったのだ。
「あ、定期忘れた。財布も。」
まじかよ、どうにかならないかな、どうにもならな
【面白数学】05-日差しの強い日に
7月の終わりだっただろうか。
とても日差しの強い日。
横浜の野毛に用事があり、桜木町駅から野毛に向かい、信号を待っていたときだった。
午後1時すぎ。
向こう側に渡る横断歩道が貫く車道は4車線。車がびゅんびゅんと通る。通り過ぎていくエンジン音たちが耳に残り、うだるような暑さに拍車をかけていた。
あちい。
信号待ちをしている自分の顔は、南西方向を向いていて、陽の光が直接当たって、顔面がぴり
【面白数学】04-受験票のその先に
受験シーズン。
この季節になるといつも思い出す、ある数学的な出来事がある。
自分はいつも中学生向けの教材を編集している。その教材で学んでくれている中学生たちの大きなゴールが、受験、そして合格だ。
合格発表のときには、部署をあげて「合格取材」を行う。
合格発表の日。全国にあるいくつかの高校の門の前で待ち、合格したての会員の中学生たちに、今の気持ちや、お届けしてきた教材への感想、後輩たちへのメ
【面白数学】03-新百合ヶ丘の実験少年
小田急線の新百合ヶ丘駅でのこと。
先日の15時ころ。
会社を出て、打ち合わせのため、電車を乗り換えるときだった。
階段を上がり、ホームを変えようとコンコースを歩いていたとき、人の流れのない改札機の前に、不自然にごそごそしている小4くらいの男の子がいた。
ピン!と面白そうなだなというアンテナがたち、乗り換えの電車までは、あと3、4分あったため、遠くから見守ることにした。
男の子は、ランドセ
【面白数学】02-ATMの行列
会社の昼休み。
定食屋に向かおうと思ったが、財布に現金がない。ATMでお金をおろすため、会社近くのみずほ銀行に向かった。
いつもの銀行の入り口。慣れた感覚で、あまり前方に注意を払わず自動ドアを入る。すると、すぐそこに人がいる。
ん?
銀行の中をきちんと眺めると、ATMの前に長蛇の列ができている。入り口付近まで人が溢れていた。
そうか、今日は、25日か。これは時間かかりそうだな。
昼休み
【面白数学】 01-通勤路ダイヤグラム
ある朝。
会社に向かう通勤路での出来事。
9時半の始業にあわせて、いつものように9時ジャストに着く電車をおりて、会社までの通勤路を歩いていた。
時間にして、5分ほどの距離だ。
その通勤路を半分ほど歩いたころ、駅近のコンビニで出そうと思っていた郵便物を出し忘れていることに気がついた。
始業までは少し余裕があるため、引き返すことにした。
すると、不思議なことが起きた。
通勤路を逆向きに進