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短文学集

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筋も思想も体系も、全部気にせず楽しむことを短文学と称して日々の感傷を綴る。
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#エッセイ

滴を拭く

滴を拭く

「あの人はラガーでないといけんかった」

 普段はあまり馴染みのないそのラベルを手に取った時、頭をよぎったのは祖母のそんなセリフだった。きっとこの盆の間にも何度か聞くことになるだろう。六缶入りのセットを持ち、レジへと向かう。祖父母の家に着いたらまずは一本を祖父に供え、残りはすぐに冷やさないといけない。

 もうずっと、お盆といえば繁忙期だった。もう何年も盆、暮れ、正月には小売り業の末端として店頭に

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