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冬の銭湯の匂いが好きだ。思い出して居酒屋の帰り、銭湯を嗅ぎに行ったのに鼻が詰まってなんの匂いもしない。生きるって全然うまくいかない。

側から見たらこんなに人生楽しそうな人いないんだろうな。出会う人みんなに「楽しそう」と言われて「楽しいよ!」と返してその通りだけどやっぱりそればかりじゃないよな。日々が楽しくないから楽しくいるのに必死なのか、楽しいばかりだから時折さみしくなるのか。

リボンのかかったプレゼントを抱えて歩くおじいちゃんとすれ違う。誰かの顔を想像しながら選ばれるプレゼントは幸せだと思う。プレゼントする人もされる人も、一生幸せならいいなあ。人にプレゼントを配る仕事に就きたい、サンタさんになりたい。あーそういえば、今のわたしは既にそんな仕事をしているのでした!時折嫌になりつつ、この仕事は別に悪くないかもしれない。

冬の銭湯の匂いの次に好きなのは小学校のプールの匂い。鼻につく塩素の匂いがずっと好きだ、そういや鼻からプールの水を吸うとすげえ痛くて、そういうタイミングで我に帰るみたいなことがよくあった気がする。その連続の人生であるような気さえする。背泳ぎでぷかぷか水の上に漂って、時折鼻に水が入ってどうしようもなく痛くて、はっと夢から覚めて、涙目のわたしを現実がぶん殴ってくる。ずっと目を閉じたまま漂って流されていたかった。
 
ああきみに依存していられるほど簡単なわたしならよかったね。もうそんなことできないくらいには大人になってしまった。つまんないけど楽なこと、時折どうしようもなく苦しいけどおもしろいこと。後者の方がどうにも魅力的でよくないね。平均台の上でふらふらしているような毎日だ。いつ一歩踏み外してもおかしくない中で必死に前へ前へ歩みを進める。そういう他に生きてゆく術を知らない。知らなくて良いと思っている。結局だれといても一人になりたいし、どこにいたってここじゃないどこかを求めている。もっともっと自分にも他者にも苛々せずに生きていたいのに!いつだってわたしはわたしが大嫌いで大好きです。

おもろいことへのアンテナは人一倍張っているつもりです、そのせいか周りにはおもろい人がたくさんいてくれます。幸せでしかたがないな!わたしが死んだらどうする、と聞くと「もう立ち直れないよ」と言われた。どうせ3日後にはニコニコ笑っているくせにさあ!そんなきみが好きよ。もっと想像もつかない世の中で、ちっとも思い通りにならないきみでいてねえ。そんな世界で綱渡りみたいに生きてゆきたいだけよ。

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