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21/4/26 散歩日記

久々の散歩日記です。緊急事態宣言とともにある。


15:57 近所の喫茶店にて。

ピンクの爪先が気まずくて今すぐにでも剥がしてしまいたい。似ているからこその差異の際立つ感じ、いつまで経っても気持ち悪い。なんでもかんでも噛み付いてかじりついて、わたしのものって思いたいよ。そういえばまだ小さかった頃も、リビングの椅子をかじって塗装剥がしまくって怒られたな。おかげで鋭い犬歯が誇りです。さっき鏡に這う蜘蛛を一匹ころした。「朱を知る虫」と書くのか。交差点でのびてた鳥のこと、事あるごとに思い出しちゃって忘れられないのに、みんな平然としていたな。あいつのことを今もこうして思い出せるのはわたししかいないのかもしれなくて、なんとなく嫌だと思う。


言葉のあふれないわたしに何の価値だってないような気がしている。


この前アスファルトから雑草を引っこ抜くおじさんを見た。雑草には雑草なりの生き方があって、おじさんにはおじさんなりの生き方がある。まだビニール袋に入ったままのドライフラワー、わざわざ名前を聞いたのに思い出せない。帰り道、自転車を漕ぎながら繰り返し唱えていたはずなのに。どこの段差でぽろっと落っことしてしまったんだろう。これだから人間の脳ってあやふやで、完全じゃないから、かわいい。


よく行く喫茶店で席についてメニューをもらってから、財布を家に置いてきたことに気づく。「すみません取りに帰ります」とマスターに伝えて、走って取りに戻る。会釈してから席につくと、コップに注がれた水も灰皿もそのまんまで、わたしの居場所が変わらずそこにあって、すこし泣きそうになってしまった。信じられてる。


やらないといけないこと、たくさんあるはずなのに どれも他人事みたいに霞んでいて、一歩たりとも動けなくなる。あーーーやっぱりピンクの指先が全然“わたし”じゃない。はやく落としてあげないと消えてしまいそう。長々と眠っていたかった。ずっとあの冬のまま、どこにだって行けるわたしのまま、あの雪の中に眠っていたかったな。わたしがわたしでなくなってほしいのに、一刻も早く消えたいのに?ずっと存在の証拠をたしかめている。アイデンティティを求め続けて、探し続けている。わたしがわたしである理由を、意味を、たしかめたくなってしまう。もっと、もっときれいな人間だったらよかった。


句点で区切ってしまうなんてもったいないよ 余白を愛していこうぜ


50センチくらい上で溶けてゆくんだ煙は、ゆらっとほわっと滲んでゆくのだ。忙しないのは嫌いなくせに、手持ち無沙汰なのが怖い。己と向き合う余裕を、いつだって持っていたいよ。見渡す限りツツジしかないあの丘に帰りたい。帰りたかったな。わたし、もうだいじょうぶだって思われてんだ死にたい。だれにだって愛されて、簡単に忘れられてしまいたい。たぶん、好きが同じ温度で返ってくるのって奇跡だ。



16:43 郵便局へ

レターパックって郵便局で買うのでしょうか。おぼつかない足取り。ツツジを見ると懐かしさでなきたくなりますなくなりたくなります。ブラウスを揺らす風、まだ一枚だと肌寒い。春にほんのすこしの冬が混ざった日。ペンとノートを持っての散歩。忘れたくないからねすべて、花の名だってメモしておけばよかったんです。


グレーのシュナウザーに緑の服、驚くほど似合わないね。一本裏の路地をゆくと知らない街だ。五歩歩いては立ち止まっている。(それなりに)(そこはかとなく)不要不急のレターパック散歩。遠回りして帰る、葉っぱが揺れてる、さわり。さわり。さわさわ


だっていらないと思ったから忘れた


都会の切り取られた空もいいね。近くの海の店、貿易センターに生まれ変わってた。生まれ変わってもそばにいたいな。昨日捨てた布団はなくなってた。忘れた頃にマイナンバーの申請書が届く。忘れないでいてくれたのね。




わたしのこと、好きな人のことより嫌いな人のことの方が、ずっと鮮やか。

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