見出し画像

【ハンドボール】【松やに】【投動作】サルが木から落ちない能力の弊害。

サルの特性から投動作を考える。

解剖学の授業でとある教授が言っていました。
「サルはね、肩周りの構造上、握力を使わなくても気にぶら下がれるんだよ。」

サルはこの能力を使って、枝から枝へと飛び移ります。

画像1

この話から”肩周りの可動域を確保するためには握力は使わない方がいい”
と思いました。

もし捕まっている木の表面がツルツルしている場合、落ちないように力が入ると関節がロックされます。

生き残るためにめちゃくちゃ大切なこの機能、ハンドボールを投げる時には少々厄介に働きます。

その効果を和らげるために「松やに」が必要になるよ。
というのが今回のお話。

今日はこの話をもとに話を展開していきます。
この話をしてくださった足立先生、ありがとうございます!!

”どうして”松やにを使うのか?

ハンドボールでは野球やアメフトボール(片手で投げる球技で思いついたもの)と比べるとサイズが大きく、そのまま投げるには手に付かず投げづらいですよね。


その状態で、DFやキーパーと駆け引きするためにボールを持った手を振り回す必要があります。そこで必要になるのが「松やに」です。

留学で実際にプレーする中で、日本とデンマークでは「松やに」を使う感覚がだいぶ異なっているように感じました。

日本では、特にジュニアカテゴリーの選手で「ボールが滑らないようにするため」や「ボールを掴みやすくするため」に使用されています。

なぜなら日本でハンドボールをプレーする際、小中高生のほとんどは屋外だからです。砂まみれになったボールを素手で扱うより、松やにを使って「しっとり、ねちょねちょ」させる方が何倍も扱いやすいですよね。

ボールをグリップしやすくなり、握る時に力が入りやすくなる。

しかし!サルの特性を思い出してください。
何かを掴むときに力を入れると、関節はロックされます。

ロックされた関節がある中で無理矢理投げようとすれば、他の関節にそのしわ寄せが来ることになります。これが「代償動作」です。

過度に働かされた関節や腱にはダメージが蓄積され、故障の原因になります。

次に、デンマークでプレーをする中で感じた感覚。
日本で投げてきた感覚とは全く異なるものでした。

僕も始め、松やにをいつも通り「ボールが滑らないように」使っていました。
しかし、とても投げずらい感じ。

そこで段々と、松やにを「ボールを掴むときに、握力を使わずに済むために使う」に変わっていきました。

似ているようで、この二つの概念の違いはとても大きいです。

というのも松やにを、砂グラウンドで「松やにをボールが掴みやすくなるため」に使う投げ方と、「ボールを掴む時に握力が必要にならないため」に使う投げ方ではとても大きな違いがあるからです。

ボールを「おいでおいで」の形で、引っ掻くように投げるとボールに綺麗な縦回転がかかり、コントロールが付きやすい。

しかし、これを向こうで実践しようとすると強い粘着でボールが手から離れず、床に叩きつけてしまったり、棒球になります。↓

画像2

強い粘着の松やにを使うときは、大袈裟に表現すると「ドリル」の形で、腕の振りと共に、ボールを手から振り落とすイメージ。全身からの運動連鎖の末端で、遠心力に耐えるためには強い粘着力が必要になる。そう感じました。↓

画像3

実際にハンセンが投げている良い写真を見つけました。
ほどんどはシュートフォームが綺麗なこのコマの1つ、2つ前を撮っているのでボールが外を向いていることが多いですがが、リリースの瞬間はこんな感じ。

小指と掌の側面がギリギリ見えるか見えない感じです。
これが「おいでおいで型」だと、全く見えないです。

画像4

今度はロシア代表のシシカレフ選手。
投げた後に、掌が反転しているのが分かります。

この理由は、回内運動(掌が下に向く運動)を利用してボールに力を伝えているからですが、詳しいことはYouTubeにたくさん動画が上がっているので参考に。

画像5

とは言っても強い粘着は投げにくい。

では、”いつから”松やにを使い始めるのが良いのか。

日本では中学生(U-13)くらいからですね。
デンマークではU-15からでした。

技術的に足りていない段階で松やにを使うと、ベトベトで扱いづらく、ハンドボールの楽しさを感じられなくなってしまう。

だから、初めから松やにを使うことはしないんですね。

まとめ

デンマークでのハンドボール生活の中で、松やには”高い粘度”のものを使わないともったいないと感じました。

ただ”滑らないようにする”だけでは、投動作の「運動連鎖」のときに、末端の「ボールと掌の接合部」が遠心力に耐えられず、ボールが抜けることになります。

そこで握力を使うと、冒頭でも述べたように各関節が固まります。
その状態で投げ続けると故障の原因に。

実際に僕も、それが原因で大学時代肩を負傷しています。
デンマークでプレーした10ヵ月は何の問題もありませんでした。

もちろん、投げ方を意識するだけでは改善されないと思います。
環境と、身体の条件が整って初めてきちんとした投げ方にたどり着く。
これは簡単なことではないです。悲しいことに。

最後に、確認です。松やにを使う目的は...

ボールが滑らないようにするため(小学生のときはよく唾つけてた)ではなく、松やにをつけることでボールをつかめる状態にするため。

松やにと掌の接合部がもうひとつの関節になるイメージです。

最後にこの記事を書くにあたってメモ書きをしたので、イメージを掴めなかった人は参考にしてみてください。

画像6


少し掴みづらいことが多かったかも知れませんが、できるだけ分かりやすく書くように頑張りました。

今日はこの辺で終わりにします。
この記事にご意見、ご感想があれば是非コメントにてお願いします。
引用リツイートも大歓迎です。

本日も、お疲れ様でした。

森永浩壽









この記事が参加している募集

2022年の今、フルタイムで働きながら日本リーグ参入を目指すハンドボールチーム"富山ドリームス"の選手として活動しています。ここでのサポートは自身の競技力の向上(主に食費です...)と、富山県内の地域との交流に使わせていただきます。