「売られた喧嘩を買う大人(2)」
”買ったんだから”
そう言われたとき、男の瞳孔が大きく開き興奮しているように見えた。
尋常じゃない雰囲気に、もう生きては帰れないんだと悟った。
同時に、これでいいんだと妙に冷静になっていた。
お袋は17の時に俺を産んだらしい。
親父に会ったことはない。妊娠が分かって逃げたらしい。
3歳になるまで、ばあちゃんと暮らしたらしい。
5歳になるころにお袋と二人で小さなアパートに引っ越した、らしい。
ガキの頃の記憶はほとんどないが、ずっとイライラしていたことは確かだ。
生きてい