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ファシリテーターを皆に任せて楽しい振り返りに - ハピネスチームビルディング[3]

この記事の初出は、Software Design 2022年6月号です。

はじめに

今回は、チームで定期的に行う振り返りについてのお話です。
私のチームでは、数週間に1度のタイミングで、チームの皆で過去の出来事を振り返って、良かった点や改善点を挙げてチームを少しずつ改善していく活動をしています。

振り返りは、チームの皆が積極的に自分の考えを発言し、チームをよりよくするための次のアクションを決める事が重要だと思います。
しかし、チームの皆がなかなか積極的に自分の考えを発言しない振り返りになってしまう事はないでしょうか?
過去の私のチームは、まさにそんな状態で、どんよりした雰囲気が漂った振り返りになっていました。

その状態から脱却し、チームの皆が積極的に発言する楽しい振り返りになった事例を紹介します。

ファシリテーターを任せる

私は、参加している一人ひとりが主体性をもって振り返りに参加してくれると、充実した楽しい振り返りになりやすいと考えました。

そこで、毎回の振り返りのファシリテーター(会議を円滑に進めるための進行役)を順番に交代で任せる事を検討しました。
当時は私以外のメンバーが入社1~3年目くらいの若手でファシリテーター経験がほとんどありませんでしたが、メンバーに聞いてみたところ「やってみたい」ということだったので、やってもらいました。

ファシリテーターになった人は、振り返りを自分がやってみたいやり方で自由に決められる事にしました。
例えば、私のチームで実際にやった振り返りのやり方は、KPT、YWT、Fun/Done/Learn、Lean Coffee、Starfish、4Ls、熱気球などです(振り返りのやり方は検索すると色々見つかります)。
やり方を自由にやれるようにする事で、連載1回目の時に説明した「主体的な行動で成果が出ると嬉しい」になりやすいと考えました。
ある程度の裁量がある状況で、自分で選択したやり方で成果が出ると、嬉しく感じ、主体性が高まります
そのため、私のチームは様々な活動の中でこのような工夫を取り入れるようにしています。

私が振り返り中に気を付けたのはマネージャーである私がしゃべり過ぎないようにすることでした。
なるべくチームメンバーに意見を言ってもらうように心がけました。
あとは、振り返りで「悪かった事」などのネガティブなものを挙げる際は「一番改善すべきポイントを1人1つだけ」挙げてもらうようにしています。
悪かったことをたくさん挙げても、全部に改善策を実行することはできませんし、些末な問題点の対策に議論の時間を使うのは改善効率が悪いです。
なにより悪かったことがたくさんあると場の雰囲気がどんよりしやすいからです。

メンバーが楽しく成長できた

ファシリテーターになって会議を進行する役になったメンバーは、「どうすれば皆が意見を出してくれるだろう」「この議論の結論はどうすればいいんだろう」などの事を真剣に考えるようになります。
今までただの参加者だった時とは異なり、チーム全体の事を「リーダーからの視点」で考える経験になり、成長に繋がります

初めてメンバーがファシリテーターをやった時は、進行がつたなくもどかしく感じました。
それでもファシリテーターの一生懸命さが伝わったのか、皆が協力的になって、私がファシリテーターをしていた時よりも皆が積極的に発言してくれました。

良い振り返りができた時は、ファシリテーターをやったメンバーに嬉しそうな表情が見られました
振り返りでの達成感は、ファシリテーターが最も大きいと思います。
ファシリテーターとしての成功体験を積むと、振り返りの楽しさを実感し、その後は参加者としても、主体的に発言するようになりました。
チームの皆がファシリテーターを経験し、振り返りで皆が主体的に発言するようになってくると、誰がファシリテーターでもどんなやり方でも盛り上がる振り返りになるため、チームに配属されて半年くらいの新人でもファシリテーターが可能になります。

なお、チームを改善するための活動という視点で見た場合にも、同じやり方をずっと続けるよりも、ファシリテーターを交代しながら様々なやり方で振り返った方が、チームを様々な視点から多角的に改善することになるため、改善効率が良いと感じています。

Lean Coffee の紹介

最後に、私のチームメンバーが気に入っている振り返りのやり方として、Lean Coffee を紹介します。
私のチームでの具体的なやり方を説明します(本家の Lean Coffee と若干違います)。

トピックをTrelloで書いた例
  1. 振り返りの前に、議論したいトピックを各自で1件ずつ書いておきます(本家は会議の最初にトピックを書きます)。

  2. 振り返りの最初に、各トピックを書いた人がなぜそのトピックを議論したいか理由を話します。

  3. どのトピックを議論したいのか皆で投票して、議論するトピックの優先順を決めます。現在は全員リモートワークなので、Trello(タスク管理ツール) か Miro(オンラインホワイトボードツール) を使って、トピックの列挙と投票を行っています(使うツールは何でも良いです)。上図は Trello の例です。

  4. 票数の多いものから順にタイマーを8分にセットして議論します。議論内容は、Visual Studio Code の Live Share 機能を使って、皆で書きながら議論を進めます(議事録を皆で書ければツールは何でも良いです)。

  5. 8分ごとにタイマーを鳴らして、そのトピックの議論を続けるか終了するか多数決で判断します。

  6. 継続する場合は追加で8分議論します(本家は継続を選択した人数により追加の議論時間が変わります)。

  7. 結論としてアクションが決定したら、次のトピックに進みます。

  8. 次のトピックを議論する時間がなくなったら、そこまでで議論を終了し、最後にアクションをいつ誰がやるか決めて終了します。

私のチームの場合は上記のやり方で、4~7人で60分の時間を使って3つくらいのトピックを議論します。

チームメンバーが Lean Coffee を気に入っている理由は、チームの皆がどういう事に関心を持っているかが分かり、関心の高いトピックから優先して議論するため、自分たちにとって大事な事を改善するために時間が使えていると感じるからです。
また、時間制限しながら議論の継続判断を行うため、議論がスピーディーに進行しやすいのもメリットです。

まとめ

ファシリテーターをメンバーに任せるのは一見難しいと感じますが、メンバーがファシリテーターを「やってみたい」と前向きに望んだ場合は、任せてみてはいかがでしょうか。
その結果、メンバーの主体性が高まったり、チームを多角的に改善できたりするかもしれないので、ぜひチャレンジしてみてください。


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