毎朝15分の書籍勉強会でアウトプットを習慣づける - ハピネスチームビルディング[7]
この記事の初出は、Software Design 2022年10月号です。
はじめに
前回、「ハピネスチームビルディング」の活動方針として、新しい技術・ツール・プラクティスを積極的に施行して、得た知見を社内や社外にアウトプット(技術記事で情報発信)し、いいねをもらってモチベーションアップ経験を繰り返す事が「楽しいチーム開発」に繋がる事を紹介しました(詳細はこちらの記事を参照)。
この活動において重要なのは、チームのメンバー全員が学んだ事をアウトプットする習慣を身につける事です。
そのため、何回かに分けて、学んだ事をアウトプットを習慣化するための施策を紹介します。
今回は、学んだことをアウトプットする習慣を作るファーストステップとしてお勧めの「毎朝15分のアウトプット勉強会(書籍編)」を紹介します。
私は今まで新人10人以上の育成に携わりましたが、この勉強会を実施する前と比べると、実施した後の方が若手が驚くほど成長するようになりました。
書籍のアウトプットの必要性
過去に、チームの若手メンバーにいくつか書籍を読む事を勧めて読んでもらった事があります。
書籍の種類は「報・連・相」「ロジカルシンキング」「オブジェクト指向設計」などです。
当時を振り返ると色々反省点があります。
私は書籍を読んだメンバーに対して、その書籍でどんな事を学んだのか聞く事もなく、その書籍の内容を元に行動を改善してくれても何のフィードバックもせず、学びを促進するための活動を全くしていませんでした。
そんなやり方だったため、当然、メンバーの行動も、それらの書籍に書いてある内容にもとづいて大きく改善される事はありませんでした。
一般的に、書籍は一人で黙読してインプットするだけよりも、何かしらのアウトプットを伴った方が学習の質・効率が高いと言われています。
学習するというのは、丸暗記する事でなく、自分なりに考えた解釈を能に記憶させる事です。
それを効率的に行う事ができるのがアウトプットです。
私の経験上も、一人で書籍を読んだだけでは内容をすぐに忘れてしまいますが、学んだ事の自分なりの解釈を人に説明(アウトプット)した方が記憶に残りやすいです。
だから、書籍を読む時はアウトプットもセットで行った方が、理にかなっています。
過去の私はその点が全くできていませんでしたが、今回紹介する勉強会は、その反省点からアウトプットもセットで行う施策になります。
毎朝15分でアウトプットする
書籍でインプットした情報をアウトプットする方法はいくつかあります。
例えば、「書籍で学んだ内容を資料(記事または発表資料)にまとめる」というのも良いと思います。
ただ、この勉強会の目的は、書籍での学びを促進する事に加えて「アウトプットする習慣を作る事」でもあるため、資料を作るとなると時間がかかり、毎日継続するには不向きです。
そのため、無理なく毎日継続できる方法として「読んだ書籍の重要ポイントを自分の言葉で人に説明する」というお手軽なアウトプット方法を選択しました。
事前準備として、毎日の勉強会の前までに参加者全員が同じ書籍を20~30ページ程度を読んでおきます。
毎日無理なく継続できる量として、ページ数は少なめにしています。
勉強会当日は、その日のアウトプット担当者が、書籍の対象範囲について、自分が重要だと思った点を自分の言葉で説明します。
他メンバーも自分が重要だと思った点を都度、コメントします。
この「自分が学んだ事を自分の言葉でアウトプットする」ということが重要です。
例えば「報・連・相」の書籍の勉強会で、なぜ悪いことほど早く報告する方が良いのかを自分の言葉で説明したメンバーは、明らかにその点に対する意識が変わりました。
時間は15分間で実施します。私のチームは朝会の後にこの勉強会を実施しています。
勉強会のアウトプット担当者は、参加するメンバーで毎日順番に交代します。
勉強会の参加人数は、2人~4人がお勧めです。
人数が多くなるほど、一人当たりの発言割合が減って、発言頻度が各自の主体性に依存しやすくなってしまうので、少人数の方がやりやすいです。
実際、私の開発チームは7人いるので、メンバーを2つに分けて勉強会を実施しています。
効果の高かった書籍
参考までに、この勉強会で対象とした書籍の中で、特に効果の高かったものをいくつか紹介します。
良いコードを書くためのテクニックが書かれている『リーダブルコード』は、チーム内でその価値観を共有できるという点でとても効果がありました。
また、報・連・相やロジカルシンキングなど、仕事全般で活用するビジネススキルに関する書籍は、その書籍に書いてある内容を、メンバーが読んだその日から実践しようと取り組んでくれる事が多くありました。
また、難しい技術を扱っている書籍を、皆で議論しながら読み進めるというのも良かったです。
例えば、『エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計』という書籍について、過去に私は一人で読んだ事がありましたが難しい書籍だったため、当時は書いてある内容があまり理解できませんでした。
そもそも難しい書籍を一人で読み進めるというのもつらくて、苦行だと思いながら読んでいました。
それが、この勉強会の中で、毎日少しずつ読み進めながら、チームの皆で「この部分は、こういう解釈なんじゃないか」「いや、こういう事なんじゃないか」と議論する事で、当時理解できなかった内容を楽しく学べました。
実際、その書籍を読んだ入社2年目のメンバーも、「一人ではこの書籍に書いてある内容は理解できそうになかったけど、勉強会で議論しながら読む事で、かなり理解できた」と言っていました。
学びを促進するフィードバック
この勉強会を実施してからは、過去に書籍をただ読んでもらった時と比べて、書籍の内容を仕事で活用するように行動してくれる事が多くなりました。
過去の私は、そういう時に何もフィードバックしなかったため、メンバーの改善された行動が継続されずに元に戻ってしまう事がありました。
その反省から、メンバーの行動や発言になんらかの変化があったら、フィードバックする事を心掛けています。
例えば、書籍の内容の考え方でソースコードのコメントが適切に書かれていたら、その点について「先日読んだ書籍の内容を取り入れて、いい感じに書いてますね!」のようなポジティブフィードバックをしています。
他にも、報・連・相やロジカルシンキングの書籍の内容をふまえて、日々の報告時に工夫が見えた時にも、同じようにポジティブフィードバックをしています。
メンバーが成長を実感
この勉強会は、今まで6名の若手に対して実施してきました。その効果の一例を以下に挙げます。
「報・連・相」の書籍を読んだ結果、報告・相談される相手の立場を考えて、必要なタイミングおよび詳細度で報告・相談をしてくれるようになった
「リーダブルコード」の書籍を読んで、他人が読んで分かりやすいコードを自分が考える最善を尽くして書く姿勢がとても強くなった
入社1年目のメンバーは「得た知識を他人に説明することで、その知識がより定着することも身をもって体験できた」と言っていた
このように、学んだ事を説明(アウトプット)して成長を実感する事は、アウトプットする習慣を身につけるのに役立ちます。
次回以降で紹介する様々なアウトプットの施策にも取り組みやすくなります。
お手軽で効果がある方法ですので、試しにやってみてはいかかでしょうか。
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